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がん検査は「線虫」にお任せ

臭いを突破口にがんを早期発見、早期治療へ

2017年8月9日(水)

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線虫や犬など動物の力を活用し、がんを早期発見する試みが始まった。手掛かりは動物にしか分からない、がん患者に特有のかすかな「臭い」だ。パーキンソン病の早期発見にも、臭いが重要な役割を果たすことが分かってきた。

(日経ビジネス2017年6月12日号より転載)

(写真=GUSTOIMAGES/SCIENCE PHOTO LIBRARY /amanaimages )

 虫に犬、そして人間。多くの生物が持つ「臭い」を感じる仕組みが、がん検査に革命を起こそうとしている。

 日立製作所は今年4月、新しい仕組みのがん検査装置を試作したと発表した。人間の尿をシャーレに載せると、その人ががんに罹患しているか、高い確率で判断できるようになる。

 この装置で尿を分析しているのはセンサーなどの機械類ではない。「シー・エレガンス」と呼ばれる体長1mm程度の「線虫」だ。取り扱いが容易で大量培養できることから、科学実験などに幅広く使われてきた。この線虫の特徴は、人間の100万倍ともいわれる犬と同等か、それ以上に優れた「嗅覚」を持つこと。目がない代わり、鋭敏な嗅覚で餌を判別して近づいていく習性がある。

 線虫を使ってがん検査する仕組みを考案したのは、九州大学助教でHIROTSUバイオサイエンス(東京・港)社長の広津崇亮氏。がん患者に特有の臭いがあることは関係者の間では知られており、その臭いを犬にかがせて、がんの有無を探る試みもあった。「ならば線虫にだって分かるはずだ」と、大学で嗅覚のメカニズムを研究していた広津社長は考えた。

 実験結果は予想通りだった。シャーレの左側に人間の尿を垂らし、真ん中に50~100匹の線虫を配置する。垂らした尿ががん患者のものだった場合、30分程度で線虫は左側に寄っていった。一方で健常者の尿からは、線虫が遠ざかっていったのだ。

 がん細胞が出す何らかの物質が尿に溶け込み「線虫がこれを餌と勘違いして近づいてくるのだろう」と広津社長は考えている。だが、その成分が何なのかはまだ解明できていない。「線虫がかぎ分けている臭い物質はごくわずかで、世界最高水準の分析機器でも捉えきれない」からだ。

 広津社長は線虫によるがん検査を「N-NOSE(エヌ・ノーズ)」と名付け、感度(がん患者をがんであると判断できる確率)を高める工夫を重ねてきた。現在では、胃がんや大腸がんなど10種類のがんについてその有無を判別でき、検査の精度を9割以上に高めることに成功したという。

線虫の反応で がんの有無が分かる
●線虫によるがん検査の基本的な仕組み
体長1mm程度の線虫「シー・エレガンス」(右)をシャーレの中心に配置し、人間の尿を垂らして検査開始
●がん患者の場合
がん患者の尿の場合、これに含まれる何らかの成分にひかれて線虫が近づいていく
●健常者の場合
健常者の尿からは離れていく。がん患者の尿を餌、健常者の尿を外敵と判断している可能性がある

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「がん検査は「線虫」にお任せ」の著者

飯山 辰之介

飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)

日経ビジネス記者

2008年に日経BP社に入社。日経ビジネス編集部で製造業や流通業などを担当。2013年、日本経済新聞社に出向。証券部でネット、ノンバンク関連企業を担当。2015年4月に日経ビジネスに復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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