野菜をおいしくする光のレシピ

植物工場向けにLED照明を最適化するアグリライト研究所

LED(発光ダイオード)照明が放つ光の要素を調整することで生育する野菜の甘みやうま味を引き出す。山口大学発の照明開発ベンチャーは、各地で建設が進む植物工場の強力なパートナーになろうとしている。

(日経ビジネス6月26日号より転載)

 「もっと甘みの強いリーフレタスを作れませんか」

 「それならば赤系の光を強く調合してみましょう」

 山口宇部空港からクルマで約50分。山口大学農学部内に本社を構える大学発ベンチャーのアグリライト研究所には、植物工場の関係者が頻繁に訪れ、冒頭のような会話が交わされる。

照明で野菜に甘み
赤系、青系、緑系のLED照明を組み合わせ、野菜の糖度や塩味、アミノ酸量を調整する

 同研究所が手掛けるのは、オーダーメードのLED(発光ダイオード)照明。光の強さや色の波長などを細かく調整し、生育する野菜の味や形、歯ごたえなど細かい要素まで制御できる。

 園山芳充社長は「これまで植物工場の照明といえば、安く多くの野菜を生産するための道具と見られていた。当社の技術では野菜の品質に個性が出せる。ファンができる野菜作りをサポートしていきたい」と話す。

赤・青・緑をブレンド

 山口大学農学部の研究などにより、光のどの色要素が、野菜の生育に影響を与えるのかが分かってきた。例えば赤系の光は甘み成分、青系は香味を引き出す役割を持つとされる。

 光の要素を調合し、野菜作りに最適な照明を実現できるのがアグリライト研究所の強みだ。大学内の本社から車で30分ほど。工業団地にある建物の一角に「光のブレンド室」はあった。

 周囲が透明なアクリル板で囲まれた部屋の内部には、栽培棚が所狭しと並べられている。スタッフが栽培棚の横に取り付けた調光ツマミをクルリと回すと、棚を照らしていた白色の照明に赤みが加わった。このように赤・青・緑の3色を巧みにブレンド。一度に最大12種類の条件の光で栽培実験し、調合レシピを作り出している。

 植物工場が新規で照明を導入する際は、このブレンド室で野菜を生育しながら様々な光のバランスを試し、約1カ月かけて最適なLED照明を設計する。その設計図を基に、ブレンド室が入居する建物内に生産施設を構えるブルーウェーブテクノロジーズ(東京都大田区)で照明機器を製造する。

 同社は舞台やイルミネーション向けLED照明を手掛けており、様々な色を組み合わせる作業はお手のもの。顧客の植物工場に最適とされる繊細な光のバランスを実現する。照明の制御も得意で、舞台演出などで、どの場面で、どのような光で照らすかというプログラムを組む。これを植物工場に応用。顧客企業が自ら光の調節を行わなくても、野菜の生育段階に合わせた適切な光量を自動的に調整できる。

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著者プロフィール

武田 健太郎

武田 健太郎

日経ビジネス記者

2008年東京大学教育学部卒業、日本経済新聞社に入社。「NIKKEIプラス1」を担当後、証券部で金融マーケットや企業財務を取材。CFA協会認定証券アナリスト、AFP(日本FP協会認定)。

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