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「韓国発のドミノ」にクサビ打つ米国

木村幹教授に朴槿恵外交の行方を聞く(1)

2016年4月28日(木)

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2015年12月28日、日韓の外相が従軍慰安婦問題で合意したが、先行きには暗雲が(写真:AP/アフロ)

  「米国は『韓国発のドミノ』にクサビを打つ」――。木村幹・神戸大学大学院教授は言う(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

宙に浮く「慰安婦合意」

木村:韓国政府は外交的に動きが取れなくなりました。日本との「慰安婦合意」も、進めるうちにどこかで宙に浮く可能性が高くなりました。

4月13日の総選挙で、与党が過半数割れしたからですか?

木村幹(きむら・かん)
神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。1966年大阪府生まれ、京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いて見せる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)と『韓国における「権威主義的」体制の成立』(同、第25回サントリー学芸賞受賞)。一般向け書籍に『朝鮮半島をどう見るか』(集英社新書)、『韓国現代史』(中公新書)がある。最新作の『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房)で第16回 読売・吉野作造賞を受賞した。ホームページはこちら

木村:最後の一撃がそれでした。合意では元慰安婦の人々を支援する財団をまず韓国政府が作り、日本政府も10億円出資することになっています。

 しかし野党が優位に立った政局で、不人気な合意案に基づく財団を設立するのは難しい。第1野党の共に民主党も、第2野党の国民党も「慰安婦問題は日本と再交渉すべきだ」と要求してきました。

 財団の理事を引き受ける人を見つけることも容易ではありません。進水するやいなや沈没しそうな船の船長や航海長をやろうという人はまず、いないからです。

 仮に財団が設立されるにしても、慰安婦問題に影響力を持つ人々は、次の大統領が決まって組織が確かなものになったのを見てから理事などに就任した方がいい、と考えるでしょう。

安倍の土下座が見たい

総選挙での与党敗北がなければ、韓国政府は「慰安婦合意」を履行できたのでしょうか。

鈴置:そこがポイントです。韓国のほとんどの世論調査で「合意反対」が「賛成」を上回っています。総選挙以前から、履行は難しかった。朴槿恵(パク・クンヘ)政権がこの合意をのんだこと自体が不思議です。

 元慰安婦の前で安倍晋三首相が土下座する光景を見たい、というのが韓国の空気でした。これも念頭に置いてでしょう、朴槿恵大統領も「国民と当事者が納得する方法」を日本に要求していました。

 だから、2015年12月28日に「首相の謝罪の言葉」を岸田文雄外相が代読した後「たった、これだけ?」と不満の声が国民から上がったのです。

 さらに日韓は合意で「問題の最終的かつ不可逆的解決」も約束しました。長い間、外交的武器として愛用してきた「慰安婦カード」を韓国は放棄させられたのです。指導層の多くは、これを致命的な外交失策と見なしました。

 そもそも、韓国はこんなに焦って日本と「慰安婦合意」を取り交わす必要があったのか? 朴槿恵政権には「日本側に誠意がないので解決できない」と国内外で言い続ける手があったはずだ――との疑問がわきます。

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「「韓国発のドミノ」にクサビ打つ米国」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

日本経済新聞社編集委員

1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~2003年と06~08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト