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トランプと会うのが怖くなった金正恩

「所領」を安堵されても保証人がいない

2018年5月22日(火)

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米朝首脳会談開催に暗雲が漂い始めてきた(写真/AP/アフロ)

前回から読む)

 6月12日に予定される米朝首脳会談。本当に実施されるのか、疑問視する向きが増える。

核放棄を強要するな

5月16日、北朝鮮が米朝首脳会談を開かない、と言い出しました。

鈴置:北朝鮮は「米国が一方的に核放棄を強要するなら、首脳会談は再検討するしかない」との金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官名義の談話を発表しました。

 北朝鮮の対外宣伝サイト「わが民族同士」の「朝鮮外務省第1次官が談話を発表
」(5月17日、日本語版)で全文を読めます。

 なお同じ5月16日未明に、北朝鮮は同日に予定されていた南北閣僚級会談もキャンセルしました。5月11日から始まっていた米韓合同の空軍演習「マックス・サンダー(Max Thunder)」が自分に圧迫を加えているとの理由をあげました。

 これを通告したのが朝鮮中央通信の「朝鮮中央通信社が朝鮮に反対する大規模の連合空中訓練を行った米国と南朝鮮当局を糾弾」(5月17日、日本語版)という記事です。

 記事の最後には「米国も、南朝鮮当局と共に繰り広げている挑発的な軍事的騒動の局面について考えて、日程に上っている朝米首脳の対面の運命について熟考すべきである」とのくだりがあります。

 「こっちは本気だ。南北閣僚級会談もドタキャンした。米朝首脳会談だってやめたっていいのだ」と、この記事を通じても米国に肩をそびやかして見せたのです。

電光石火で非核化

「一方的に核放棄を強要」とは?

鈴置先ほど引用した記事からその部分を拾います。

・ボルトン(John Bolton)をはじめホワイトハウスと国務省の高官らは「先核放棄、後補償」方式を流しながら、いわゆるリビア核放棄方式だの、「完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化」だの、「核、ミサイル、生物・化学兵器の完全廃棄」だのという主張をはばかることなくしている。

 2003年12月、サダム・フセインの逮捕を見てショックを受けたカダフィ大佐は米英の情報機関に核放棄を通告しました。すると両国は直ちにリビアに査察チームを送りこみ、電光石火の早業で核施設を国外に持ち出しました。ミサイルや化学兵器に関しても同様です(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。

 ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はこうしたやり方――リビア方式を北朝鮮でも実施させると宣言しています(「『米韓同盟破棄カード』を切ったトランプ」参照)。

 一方、北朝鮮は「段階的な解決」を主張しています。譲歩するかに見せて見返りをかちとり、最後はうやむやにしてしまう、これまでの成功を再現したいのです。

●非核化の約束を5度も破った北朝鮮
▼1度目=韓国との約束▼
・1991年12月31日南北非核化共同宣言に合意。南北朝鮮は核兵器の製造・保有・使用の禁止、核燃料再処理施設・ウラン濃縮施設の非保有、非核化を検証するための相互査察を約束
→・1993年3月12日北朝鮮、核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言
▼2度目=米国との約束▼
・1994年10月21日米朝枠組み合意。北朝鮮は原子炉の稼働と新設を中断し、NPTに残留すると約束。見返りは年間50万トンの重油供給と、軽水炉型原子炉2基の供与
→・2002年10月4日ウラニウム濃縮疑惑を追及した米国に対し、北朝鮮は「我々には核開発の資格がある」と発言
→・2003年1月10日NPTからの脱退を再度宣言
▼3度目=6カ国協議での約束▼
・2005年9月19日6カ国協議が初の共同声明。北朝鮮は非核化、NPTと国際原子力機関(IAEA)の保証措置への早期復帰を約束。見返りは米国が朝鮮半島に核を持たず、北朝鮮を攻撃しないとの確認
→・2006年10月9日北朝鮮、1回目の核実験実施
▼4度目=6カ国協議での約束▼
・2007年2月13日6カ国協議、共同声明採択。北朝鮮は60日以内に核施設の停止・封印を実施しIAEAの査察を受け入れたうえ、施設を無力化すると約束。見返りは重油の供給や、米国や日本の国交正常化協議開始
・2008年6月26日米国、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除を決定
・2008年6月27日北朝鮮、寧辺の原子炉の冷却塔を爆破
→・2009年4月14日北朝鮮、核兵器開発の再開と6カ国協議からの離脱を宣言
→・2009年5月25日北朝鮮、2回目の核実験
▼5度目=米国との約束▼
・2012年2月29日米朝が核凍結で合意。北朝鮮は核とICBMの実験、ウラン濃縮の一時停止、IAEAの査察受け入れを約束。見返りは米国による食糧援助
→・2012年4月13日北朝鮮、人工衛星打ち上げと称し長距離弾道弾を試射
→・2013年2月12日北朝鮮、3回目の核実験

コメント67件コメント/レビュー

日本の官僚は、シンクタンクであると同時に「敵」でもあるのが、モヤモヤするところです。
モリカケなんて、官僚の仕返しというか、クーデター未遂みたいなものですし。


安倍さんは官僚とは別に、米国式の(個人につく)シンクタンクを持っていそうなイメージ。(2018/05/29 17:40)

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「トランプと会うのが怖くなった金正恩」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

韓国観察者

元日本経済新聞記者。1995~96年ハーバード大学日米関係プログラム研究員、2006年イースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。02年度ボーン・上田記念国際記者賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

日本の官僚は、シンクタンクであると同時に「敵」でもあるのが、モヤモヤするところです。
モリカケなんて、官僚の仕返しというか、クーデター未遂みたいなものですし。


安倍さんは官僚とは別に、米国式の(個人につく)シンクタンクを持っていそうなイメージ。(2018/05/29 17:40)

>安倍総理もまとめ役やお飾りと評してしまえば、
>キャリアを棒に振った佐川氏も浮かばれないでしょうよ。

 キャリアを棒に振ったとは一概にいえないでしょうね。ノーパンしゃぶしゃぶで有名な大蔵接待スキャンダルのときも、大勢の次官、局長クラスが引責辞任しましたが、彼らは後に民間企業の役員や特殊法人の役職をあてがってもらって、なに不自由ない豊かな暮らしを楽しんでいました。

 第1次安倍政権の頃から官僚にとって、安倍といえば「公務員改革をやった憎い敵」です。その文脈で言えば、単なる部署内のミスをあたかも政治問題のように誘導できて佐川氏も満足でしょうし、むしろOBたちからは「手柄」と思われているかもしれません。(2018/05/25 12:40)

大方の予想通り、米朝会談は中止となりました。 (2018/05/24 23:32)

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