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「中国陣営入り」寸前で踏みとどまった韓国

THAAD配備巡り米中代理戦争

2016年7月21日(木)

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韓国へのTHAAD配備が正式決定。唐突な発表が意味することとは?(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

 米国による地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の配備を韓国が正式に認めた。予想よりも早い動きだった。

政権内でせめぎ合う

7月8日、在韓米軍へのTHAAD配備が正式に決まりました。

鈴置:韓国国防部と在韓米軍が共同で記者会見し「2017年末までに配備する」と発表しました。極めて唐突感のある発表でした。

 米韓両国は3月、THAAD配備に関する協議を始め、6月28日の段階で韓民求(ハン・ミング)国防相は「年末までに決定する」と国会で述べていました。7月5日になっても「時期、場所ともに未定」と答弁していたのです。

 というのにその3日後に「配備決定」が発表されたのです。7月13日には配備する場所も、慶尚北道・星州(ソンジュ)の山上の韓国軍対空ミサイル基地内と発表されました。

 前回説明した通り、配備拒否派が世論を盛り上げて朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を動かそうとした。慌てた賛成派が巻き返し、大統領の裁可を取り付け急きょ発表に持ち込んだ――のです。

 前者は中国との関係を、後者は米国との同盟を重視する人々です。韓国を舞台に米中の代理戦争が勃発したのです。

 表「THAAD配備決定直前の動き」を見れば、7月1日から8日まで、朴槿恵政権内の拒否派と配備派がせめぎ合ったことがよく分かります。

「THAAD配備決定」前後の動き(2016年)
6月28日 韓民求国防相、国会で「配備は年内に決定」
6月29日 習近平主席、訪中した黄教案首相に配備反対を伝える
7月1日
中央日報の金永煕大記者「放棄」を訴える記事を掲載
趙甲済ドットコムの金泌材記者「放棄論」を厳しく批判
7月4日 朝鮮日報のユ・ヨンウォン軍事専門記者「配備発表を前倒し」
7月5日
東亜日報「漆谷に配備」と報道、社説で「中国の顔色見るな」
韓民求国防相、国会で「時期、地域とも未定」
7月7日 韓国政府、NSCを開催し配備を決定
7月8日
国防部と在韓米軍「2017年末に配備」と午前に正式発表
尹炳世外相、配備の正式発表と同時刻に百貨店で買い物
中国外交部、米韓の発表30分後に「強力な不満」と声明
中国国防部「国の安全と地域の均衡のため必要な措置を考慮」
ロシア外務省「地域の緊張を高める」と米国を批判
韓国証券市場で中国関連株が急落、防衛関連株は上げる
共に民主党「密室の決定」と批判、国民の党は「反対」
7月9日
Global Times社説、外交・安保・経済で「5つの対韓制裁」主張
王毅外相「配備のどんな弁明も説得力がない」
北朝鮮、SLBMを水中から1発発射
7月11日
北朝鮮軍「配備場所が決まれば物理的に対応」と警告
尹外相、国会で「中ロには対北朝鮮用と重ねて説明済み」
7月12日 仲裁裁判所「南シナ海の中国の主権を認めず」と判決
7月13日 国防部「星州に配備」と正式発表。直前に一度は「発表中止」
7月15日 星州訪問の黄首相ら、反対派3000人に6時間包囲され動けず

米国から見捨てられるところだった

もし、大統領が「配備拒否」に傾いていたら、どうなったのですか。

鈴置:米韓同盟が大きく傷ついたでしょう。米国は同盟を直ちに破棄するわけではない。が、これを機に在韓米軍の大幅な撤収に動いた可能性が大きい。

 韓国を守るために在韓米軍がいるのです。それを防御するためのTHAADを持ち込ませないと韓国が言うのなら「では、出ていきます」と米国が言い出しても不思議はありません。

 「配備」の正式な発表を受け、中央日報は解説記事の見出しを「苦悩の末に……朴槿恵政権、韓米同盟を選んだ」(7月9日、韓国語版)としました。日本語版もほぼ同じです。

 「配備拒否か賛成かは、米国との同盟を拒否するか続けるかの選択だった」との前提で書いたのです。これが多くの韓国人の実感でしょう。

 ある親米保守の韓国の識者に感想を聞いたら「実に危なかった。米国から見捨てられるところだった。中国圏に引き込まれるのを際どいところで踏みとどまった」と胸をなでおろしていました。

コメント29件コメント/レビュー

>「THAADでの決断を見てほしい。韓国は『離米従中』から反転、海洋勢力側に戻った」と言ってくる韓国人が多い。でも、それを安易に信じるべきではありません。彼らだって本心ではそう思っていないのですから。

ここは重要です。この連載の常連読者なら、たやすく騙されないと思いますが、未だに騙される日本人が多いのも事実です。1年前、世界遺産の登録でも、裏切られ、煮え湯を飲まされたことも忘れてしまいます。もはや一件一件を覚えておくのも難しいほど、日本人は裏切られ続けているわけですが、個別の案件は忘れるとしても、信用できない隣国があることだけは、明確に意識しておかないといけません。(2016/08/02 12:59)

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「「中国陣営入り」寸前で踏みとどまった韓国」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

日本経済新聞社編集委員

1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~2003年と06~08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>「THAADでの決断を見てほしい。韓国は『離米従中』から反転、海洋勢力側に戻った」と言ってくる韓国人が多い。でも、それを安易に信じるべきではありません。彼らだって本心ではそう思っていないのですから。

ここは重要です。この連載の常連読者なら、たやすく騙されないと思いますが、未だに騙される日本人が多いのも事実です。1年前、世界遺産の登録でも、裏切られ、煮え湯を飲まされたことも忘れてしまいます。もはや一件一件を覚えておくのも難しいほど、日本人は裏切られ続けているわけですが、個別の案件は忘れるとしても、信用できない隣国があることだけは、明確に意識しておかないといけません。(2016/08/02 12:59)

「中国共産党の対外威嚇用メディア」と言われる環球時報の「5つの対韓制裁」は興味深かった。

2番目の「(THAAD)配備に賛成した政治家への制裁を実施することもできる。彼らの中国入国と、彼らのファミリービジネスの中国展開の禁止である。」はなるほどと思った。
韓国でも政治家のファミリービジネスはある話だとは思うが、北朝鮮レベルの扱いで、見下す意識が強いことが透けて見える。日本が制裁の相手なら、政治家のファミリービジネスまで触れるだろうか。

最後の「中国はロシアと共に反撃行動に出ることも検討可能である。」は気になった。仮に中国から何らかの威嚇を受ける事態となっても、環球時報に「ロシアとの共闘」などと書かせてはならないだろう。中ロ二正面対応はあり得ない事態であり、日本が一番警戒することを、中国に堂々と主張させてはならない。
「中国対策」は「対ロシア外交」であることを理解しなければならない。9月のウラジオストク東方経済フォーラムで、安倍総理はプーチン大統領と(今回で通算14回目となる)首脳会談を行う予定だ。日本が提案している(領土問題を含む)新アプローチの進展、プーチン大統領の年内の来日実現に期待が高まる。(2016/07/22 10:34)

>【韓国人とアメリカ人を数万人殺した歴史】を見れば韓国が中国に配慮する義理は全くないと言えます

日本に対しては「無かった被害」に関しても被害者コスプレを装う韓国人がなぜ中国に対しては同様の行動を取らないのか、その疑問を読み解いているのがこのコラムだと思うのですが。
当事者は往々にして自己分析が難しいようですね。(2016/07/22 09:55)

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三品 和広 神戸大学教授