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「金正恩すげ替え論」を語り始めた米国

中国は「その手」に乗るのか

2017年8月10日(木)

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ポンペオCIA長官は7月20日、「核と金正恩は切り離さなければならない」と語った(写真:AP/アフロ 2017年4月撮影)

前回から読む)

 米国で浮上する北朝鮮の体制変更論。それは米韓同盟消滅の伏線でもある。

CIA長官が言い出した

前回は「米国で金正恩すげ替え論が公然と語られ始めた」というところで終わりました。

鈴置:初めに「すげ替え」を語ったのはポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官でした。7月20日、コロラド州でのシンポジウムの席でした。

 CNNの「CIA chief signals desire for regime change in North Korea」が伝えています。発言を引用します。

  • It would be a great thing to denuclearize the peninsula, to get those weapons off of that, but the thing that is most dangerous about it is the character who holds the control over them today,
  • So from the administration's perspective, the most important thing we can do is separate those two. Right? Separate capacity and someone who might well have intent and break those two apart.
  • As for the regime, I am hopeful we will find a way to separate that regime from this system,

 ポンペオ長官はまず、北朝鮮の核の脅威を核兵器そのものと、それを行使しかねない金正恩(キム・ジョンウン)委員長に2分しました。

 そのうえで、最大の危険要因である後者を前者から切り離そう――金正恩体制を転換しようと言ったのです。要は「金正恩の首をすげ替えよう」と主張したわけで、政府高官としては相当に思い切った発言です。

 ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官の主張とは真っ向から対立します。国務長官は「金正恩体制の維持を保証するから核を捨てよ」と北朝鮮に呼び掛けてきました(「中国にも凄んで見せたトランプ」参照)。

斬首作戦は困難

なぜ、CIAの長官は国務長官と180度異なる意見を言い出したのでしょうか。

鈴置:中国などの反対で、北朝鮮に対する経済的な圧迫がうまくいかない。そんな中、7月4日と28日、ついに北朝鮮は米本土まで届くICBM(大陸間弾道弾)の試射に立て続けに成功した。

 ポンペオ長官はしびれを切らし軍事的な圧迫に加え、首をすげ替えるぞと金正恩委員長を威嚇するに至ったと思われます。

「首のすげ替え」なんて、簡単にできるのですか? テレビのワイドショーではしばしば「斬首作戦」が語られますが。

鈴置:簡単ではありません。「斬首作戦」とは秘密部隊が金正恩を急襲して暗殺する方法です。しかし、これは本人の居所が分からないと不可能です。もちろん、北朝鮮側も「大将」がどこにいるか悟られないよう徹底的に情報を統制しています。

 一方、米国の専門家が「金正恩のすげ替え」を語る際、北朝鮮の不満分子がクーデターを起こして金正恩体制を転覆する方法を念頭に置くことが多い。しかし、これも容易とは思えません。簡単にできるのなら、もう実行しているかもしれません。

 もちろん「クーデターを起こさせるぞ」と脅せば「誰が自分を裏切るのだろうか」と金正恩委員長が疑心暗鬼に陥り、体制が動揺するでしょう。

 でも「動揺」に期待するわけにはいきません。時間が経つほどに北の核武装の可能性が高まります。そんな状況下で、不確実なシナリオだけに賭けることは危険です。

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「「金正恩すげ替え論」を語り始めた米国」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

日本経済新聞社編集委員

1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~2003年と06~08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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