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「南シナ海」が揺らす米韓同盟

木村幹教授と韓国の「右往左往」を読む(2)

2015年10月30日(金)

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3塁側に座る韓国

木村:野球の試合に例えれば「おまえ、3塁側――敵側に座るつもりか」と米国は怒った形です。

鈴置: 10月19日、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は国会答弁で「オバマ大統領の会見では『南シナ海』の『南』の字も出なかった」「(オバマ大統領から踏み絵を迫られたというのは)一部メディアの誤解だ」と述べました。

 「南シナ海への米駆逐艦進入」に先立ち、米国の踏み絵に対しては徹底的にとぼける作戦に出ることを韓国政府は決めていたのです。韓国世論も、この「米国側には立たない」姿勢を大筋で支持すると思われます。

木村:そうでしょうね。韓国には中国とは準・同盟国になった雰囲気がありますから。9月3日の天安門の軍事パレードの中継を、YTNという韓国のニュース専用チャンネルで見ていて驚きました。

 中国のミサイル部隊が天安門広場を行進すると、司会者と解説者が「これはグアムまで届きます」「米国の空母を攻撃するミサイルです」などと、他人事のように語り合ったのです。

 天安門の上空を中国製の空中給油機などが飛ぶと「なかなか性能がいいものです。我が国も導入を検討したらいい」といった会話にさえなりました。韓国人はもう「中国に攻撃される自分」の姿さえ想像しにくくなっているのです。

二股外交は限界だ

鈴置:ただ、一部メディアからは「二股外交は限界に達した。我々はいったい、どうすればいいのか!」との悲鳴が上がっています。

 保守系紙ながら朴槿恵政権に厳しい東亜日報は10月21日、社説「『南シナ海は誤って解釈』と尹炳世長官、メディアは馬鹿というのか」を掲載しました。結論部分は以下です。

  • 韓国は中国の顔色を見てTPP(環太平洋経済連携協定)への参加の機会を逃した。それに続き、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題でも「戦略的曖昧性」を駆使する。だから米国で「韓国の安保ただ乗り論」が出てくるのだ。
  • 尹長官は真実を覆い隠し、朴大統領に対しても「(二股外交により米中双方から大事にされているとの)外交祝福論」の大風呂敷を広げたのかもしれない。
  • 戦略的利害が異なる米中間で実際に衝突が起きた場合、韓国は絶体絶命の選択を迫られるかもしれない。外交部が洗練された国家戦略を練るどころか大統領を欺き、メディアを非難する国が危機に陥らないか懸念する。

 韓国は米国から中国側にどんどん傾いています。中国と米国の要求が異なる時には、ほとんど中国に従います(「米中星取表」参照)。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年10月29日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権
の行使容認
2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の
MDへの参加
中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への
THAAD配備
青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習
の中断
中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの
正式参加(注1)
正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの
反米宣言支持
2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの
加盟 (注2)
米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の
南シナ海埋め立て
米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝
70周年記念式典
米国の反対にも関わらず韓国は参加
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。
(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。
(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 それに伴い、人々の意識もどんどん中国寄りになっている。世論調査でも明らかです(「米中どちらが重要か」参照)。ただ、軍事同盟だけはいまだに米国と結んでいる。実に奇妙な状況です。

グラフ●米中どちらが重要か

米韓同盟は長いロープ

韓国は米韓同盟を打ち切るつもりでしょうか?

木村:韓国は米韓同盟をやめるつもりはありません。北朝鮮への備えに米韓同盟は依然、大事だからです。中国とはいくら親密になっても同盟関係はないので、いざという時に守ってくれない。だから米国との同盟関係は手放したくない。

 前回、「ルビコン河に飛び込んだ韓国は急流に流され、ついに中国側に打ち上げられた」と申し上げました。この例えに付け加えると、中国側の岸に横たわりながら韓国は、まだ米国側の岸から伸びている長いロープの端をしっかり握っているのです。

ロープとは米韓同盟のことですね。

木村:その通りです。ロープを手繰ることにより、米国側に戻る可能性はたぶんもうない。でも、放してしまうのは不安過ぎる。だからロープを時々引っ張っては、まだ米国が引っ張り返してくれるのを確かめている。

 朴槿恵大統領が訪米した際、韓国政府は「米国と近しいことを示す写真」を異様に欲しがった。「米韓同盟は健在だ」とのオバマ大統領の談話を得ようと必死になった。国民に対し「まだロープはつながっている。安心しろ」と示す必要があったのです。

コメント49件コメント/レビュー

それにしても中国は南シナ海で一歩も引きませんね。
まぁ軍事施設だと日本からも文句が言いやすくていいですけど。
あそこに民間空港作られて中国の入管が置かれて観光客が付近の環礁に訪れるなんてことになったら実効支配完成ですし。(2015/11/29 22:23)

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「「南シナ海」が揺らす米韓同盟」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

日本経済新聞社編集委員

1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~2003年と06~08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

それにしても中国は南シナ海で一歩も引きませんね。
まぁ軍事施設だと日本からも文句が言いやすくていいですけど。
あそこに民間空港作られて中国の入管が置かれて観光客が付近の環礁に訪れるなんてことになったら実効支配完成ですし。(2015/11/29 22:23)

中国の脅迫はすでに始まっているように見えます。
先日たて続きに起きた邦人のスパイ容疑による逮捕などはその現れでしょう。
これは尖閣諸島沖の衝突事件の際に中国当局がとった対抗措置と同じ手口です。(2015/11/04 16:50)

 中国と韓国の理不尽で卑劣な対日攻撃はますます激しくなりそうですね。日本は中国と韓国が日本を敵視している事実を理解しなければなりません。敵対に対してはきちんと対抗する必要があります。今まで通り冷静に対処すればいいのですが、決して相手の主張に流されたり道理無く譲ったりしてはいけません。また相手と同レベルの卑しさにこちらが堕ちてもいけません。
 そのためには中韓の攻撃に対する現実的な対処方法についての知の蓄積が不可欠だと考えるのですが、日本はその点で大きく遅れていると思います。左翼や平和団体はそもそも現実に向き合っていませんからただの空想以上の価値がありませんし、右翼は現実は見ていてもその対策に関しては感情論に陥りがちです。言論界での議論は深まっておらず、また知恵が一般に広まってもいません。敵対者を敵対者として扱い、理想と言う名の現実逃避や感情論に囚われず冷静にかつ現実的かつ非情に対処するための政策研究と議論を深めねばなりません。
 本当に難しい時代ですね。(2015/11/04 14:10)

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