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「核武装中立」を覚悟する韓国

それは、中国にとっても悪くない

2015年12月24日(木)

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 韓国の核武装論者は米国をどう説得するつもりだろうか。

党大会前後に核実験?

韓国で声高に語られる核武装論。次の展開は?

鈴置:核武装論者はまず「核選択権」を宣言すべきだと主張しています。具体的には北朝鮮が核兵器を実戦配備した瞬間に、韓国も「我が国も核武装する権利を持つ」と世界に向け宣言する手法です。

 4回目――次の核実験で北朝鮮は核兵器を完成し、実戦配備するだろうと見る専門家が多い。そして過去の実験の間隔から考え、次の実験がいつ行われても不思議はない状況です(「北朝鮮の核実験」参照)。

●北朝鮮の核実験
回数実施日規模
1回目2006年10月9日M4.2
2回目2009年5月25日M4.7
3回目2013年2月12日M5.1
(注)数字は実験によって起きた地震の規模。米地質研究所の発表による

 北朝鮮は2016年5月に36年ぶりとなる朝鮮労働党の党大会を開きます。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の権力確立を誇示するために、党大会の前後に次の核実験を実施するとの観測もあります。もし核武装論者の主張が受け入れられるなら、韓国は近く「核選択権」を宣言する可能性が大きいのです。

 「核選択権」は在野の保守運動指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏と、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が2015年5月に相次ぎ記事化しました。

 2人の主張が極めて似ていることと、掲載がほぼ同時だったことから韓国の保守派の中の「核武装サークル」の存在をうかがわせます(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

米国向けに宣言

「核選択権」が宣言されたとして、いつ発動されるのですか?

鈴置:核武装論者は「米国の核の傘が信頼できなくなった時」と規定しています。例えば「北朝鮮が韓国に侵攻・挑発したにも関わらず、北が核兵器を使うのではないかと恐れて米国が必要な反撃をしない場合」です。

 2010年の延坪島砲撃など、北朝鮮はしばしば軍事力を使って韓国を挑発してきました。在韓米軍の存在が挑発のエスカレートを抑えていましたが、北が核兵器を持つとその抑えが消滅すると韓国は恐れているのです。

「核選択権」は米国に向けて宣言する側面もあるのですね。

鈴置:その通りです。一義的には北朝鮮に対し「お前が持つなら俺だって持つぞ」と言うことで、北の挑発や南進を防ぐ狙いです。

 しかし同時に「私に核を持たせたくないなら、同盟の義務を完全に果たしてね」と、米国に念を押す目的もあります。

国民を団結させる「選択権」

「核選択権」を宣言すれば、米国は同盟の義務を果たしてくれるものでしょうか?

鈴置:韓国の核武装論者もそこは不安に思っているようです。仮に、米国が北の挑発にきちんと対応してくれない時は、自前で核兵器を開発する覚悟かと思います。

 その時こそ「核選択権」宣言が効いてくるのです。「義務を果たしてくれないと核武装する」と予め警告してあるとして、米国に文句は言わせないつもりでしょう。

 「核選択権」は国民への説得効果も持ちます。朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代、韓国は米国によって核開発を阻止されました。韓国人の間には「核を持とうとしても、また米国から取り上げられるだけだ」といった、日本とは異なる核コンプレックスがあります。

 「核選択権」宣言は「大丈夫だ。今度はきちんと道筋を踏んでいる。もう、米国に邪魔されない」と国民を勇気づけ、核武装に向け団結を図る目的も大いにあるのです。

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「中国の尻馬」にしがみつく韓国

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。

10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。

そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。

静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。

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「「核武装中立」を覚悟する韓国」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

日本経済新聞社編集委員

1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~2003年と06~08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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