
(前回から読む)
米朝関係は「ハル・ノート」の段階に至った。
初回は無条件で
「米国が北朝鮮と対話に乗り出した」と思っていました。
鈴置:そう勘違いしている人がけっこういます。ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官のアトランティック・カウンシル(Atlantic Council)での演説がきっかけです。
前回にも引用しましたが、世界中のメディアがこの演説を誤読して「米国が対話路線に転換か」と報じました。それが完全な誤りだったのです。
この演説をきちんと読んだ安全保障専門家は「路線変更などしていない」と受け取りました。対話路線どころか、最後通牒と見なした専門家もいました。
ティラーソン国務長官は「初めの会談は前提条件なしに会おう」(we’re ready to have the first meeting without precondition. )と語ったに過ぎません。
繰り返しますと、前提条件なしに会うと言っているのは「初めの会談」(the first meeting)だけなのです。というのに、多くのメディアがそこを無視して「北朝鮮が核放棄に動かない限り対話しないと言っていた米国が、突然に方針を変えた」と報じたのです。
重箱の隅をつつく
発言の翌12月13日の国務省の報道官会見が象徴的でした。ナウアート(Heather Nauert)報道官は「政策は変えていない」と繰り返しました。実際、そうだからです。
しかし記者は「長官は『条件なしに会う(without precondition)』と言ったではないか」と、この部分だけを取り上げて――重箱の隅をつついて、執拗に報道官を追及したのです。
米国は「核をカネで買う」案を北朝鮮に非公式に提示している模様です(「2018年『北の核』は軍事攻撃か体制崩壊で決着」参照)。
それを正式に伝えるのも、あるいはその答えを聞くのも、電話やメールというわけにはいかない。当然「前提条件なしに北朝鮮のしかるべき人と会った席で」という段取りになるわけです。
もちろん、米国の従来の方針である「北朝鮮の核の完全廃棄」は堅持したままです。ティラーソン長官は演説で「完全かつ検証可能な非核化が目標だ」とちゃんと述べています。原文は以下です。
- Our policy with respect to the DPRK is really quite clear, and that is the complete and verifiable denuclearization of the Korean Peninsula.
同長官は武力で脅すことも忘れませんでした。「対話が上手くいかなければ、マチス国防長官が上手くやることになる」とも語っています。
- I’m going to be confident that we’re going to be successful, but I’m also confident Secretary Mattis will be successful if it ends up being his turn.



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Yammer










ティラーソン発言がハルノートだという説明はなるほどと深く思うと同時に、眼からウロコ
でした。
手は尽くしたぞ、悪いのは北のロケットマンだと国際世論に思わせるイクスキューズを行って
おいて、後は北に先に手を出させたいでしょうね。
ハルノートの時はABCD包囲網が機能して日本がドカ貧逃れに博打を打たざるを得ない状況
に持っていけましたが、今回の場合はロシア、中国が思い通りに動いてくれないという弱みが
あるように思います。
それにしても、トランプ・安倍憎しのバイアスのかかった日本のマスコミの読みの何と皮相な
ことか。今後も鈴置さんの鋭い分析に期待します。(2017/12/28 10:47)