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錯視から脳の新たな働きを解明

東京大学 認知神経科学・実験心理学 四本裕子(2)

2017年3月4日(土)

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目で見ているものが「実際」とは違って見えてしまうことを指す「錯視」。この錯視を含め、見たり聞いたり考えたりしているときの脳の活動を測定して、「時間の知覚」「多感覚統合」「脳の性差」など、人間の内なる活動のメカニズムを探る四本裕子先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 東京大学大学院総合文化研究科は、京王井の頭線駒場東大前駅の駒場キャンパス内にある。四本裕子准教授が主宰するのは、認知神経科学・実験心理学を研究領域とするラボだ。

刺激的なほころび

 錯視コンテストへの応募を学生に義務付けている理由の1つは、研究者として必要なスキル(被験者に見せたいものを自在にコンピュータで描き、提示する技術)を身につけることだが、実は、新しい錯視を知ることで、新たな視覚のメカニズムを知ることにもつながるかもしれないという大いなる目論見があると聞いた。

 新しい錯視の発見をめぐるあれこれを、在室中だった大学院生たちも交えて、議論した。「三歩進んで二歩さがる錯視」だとか、「光学迷彩イカ錯視」だとか、比較的最近の自信作を見せてもらい、大いに盛り上がった。

「三歩進んで二歩さがる錯視」
真ん中の人が前に進んでは後ろに戻るみたいに見える。(制作:岡島未来)
「光学迷彩イカ錯視」
イカの目に注目して追いかけると、イカの中だけ縞模様が流れて見える。(制作:田中涼介)

 話題の中で、特に強く印象に残っているのは、最近、錯視を見つけるにあたって、コンピュータが大活躍する理由についての考察だ。視覚は、もともと自然界で生活するために進化の中で調整されてきたはずだが、コンピュータの画面では自然界にはあり得ないような色の組み合わせとか、コントラストとか、変化スピードとかがあって、しばしば視覚のほころびが顔を出す。錯視というのは、その時だけ、何か特別なメカニズムが働いているというよりも、我々が世界を見る時の処理の仕方がたまたまほころんで、「こう見えるはずが、そう見えない」場合なので、ある意味、我々に見えているものは、全部、錯視なのかもしれない……等々。

 あくまで雑談である。しかし、刺激的だ。錯視が、その時だけに発動する特別なメカニズムで起きるのではなく、我々がふだん使っている処理の仕方のほころびが、たまたま意識できたものなのだとしたら、錯視を見つけることは、我々の視覚の特徴の本質に通じる何かを知ることでもある。

 では、四本さんの研究室で、新しい錯視の発見をきっかけに、新たな視覚のメカニズムが分かったケースはあるのだろうか。

左から「三歩進んで二歩さがる錯視」を作った岡島未来さん、前回紹介した「たまゆら錯視」「スイングバイ錯視」と「光学迷彩イカ錯視」を制作した田中涼介さん、そして四本裕子先生。2人の学生はともに修士課程の2年生。

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「錯視から脳の新たな働きを解明」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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