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「正常色覚」が本当に有利なのか

東京大学 色覚の進化 河村正二(6)

2016年3月26日(土)

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わたしたちの視覚には「色」がある。だから、色があるのは当たり前と思うかもしれないけれど、色覚を持たない動物も多い。なぜわたしたちには色覚があり、どのように進化してきたのか。魚類から霊長類まで、広く深く色覚を追究している河村正二先生の研究室に行ってみた!

(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 河村さんたちの探求は、実験室でのオプシン遺伝子の研究から、新世界ザルの行動観察をするフィールドまで、すっきりとつながったものになった。

 これは、ある意味、進化生物学者の夢の達成だ。どんどんミクロに見て、遺伝子レベルで解明できたことが、実際に生き物が日々の行動の中でどのように影響しているのか、その適応的な意味とはなになのか、直接、調べることができるテーマは、未だにそうたくさんある話ではない。

色を数値化

東京大学大学院教授の河村正二さん

 そして、河村さんたちのフィールドワークは、これまでの常識をひっくり返す発見をもたらした。

「3色型の有利性がどれくらいのものなのか、本当にあるのかということも含めて調べましょうということで、何をしたかといいますと、まず、果実や葉っぱの反射率を測定して、色を数値化する作業をしました。同時に降り注ぐ太陽の光の波長測定をすれば、サルのオプシンの吸収波長はわかっているので、そのサルにとってその色がどんなふうに数値化できるかといえるわけです。2004年から2005年にかけて、博士課程の学生だった平松千尋さん(現・九州大学助教)が、25頭の群れを8カ月見続けて得たデータです。こういった研究を練り上げるのは、平松さんとアマンダ・メリンさんという当時のカルガリー大学の学生さん(現アシスタント・プロフェッサー)が相談して決めました。それで、2人の共同研究でどんどん面白いことがわかってきたんです」

サルのオプシンがどの波長を見やすいかがわかっているので、果実や葉っぱが反射する光の波長を測定すれば、サルにとっての見え方がわかる。(画像提供:河村正二)(Hiramatsu, C., Melin, A.D., Aureli, F., Schaffner, C.M., Vorobyev, M., Matsumoto, Y., & Kawamura, S. (2008). Importance of achromatic contrast in short-range fruit foraging of primates. PLoS ONE, 3 (10), e3356のFigure 2を改変)

 例えば、クモザルが主に食べる果実を採集してきて、熟したもの未熟なものの反射特性を見る。果実といっても、熟すとはっきりと色が変わるものもあれば、あまり色が変わらないものもある。さらに様々な木の葉も測定する。そして、それらが、3色型のクモザルを想定した色度分布のグラフでは、葉と果実がきっちり区別して見えることが分かった。一方、赤・緑の区別がつかない2色型では、葉と果実の区別がまざってしまい区別がつかないこともわかった。ここまでは、以前、紹介した2000年の論文と同様の結果で、ある意味、予想通りだ。

3色型のクモザルでは葉と果実がはっきりと区別されて見えることが明らかになった。(画像提供:河村正二)(Hiramatsu, C., Melin, A.D., Aureli, F., Schaffner, C.M., Vorobyev, M., Matsumoto, Y., & Kawamura, S. (2008). Importance of achromatic contrast in short-range fruit foraging of primates. PLoS ONE, 3 (10), e3356のFigure 4を改変)

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「「正常色覚」が本当に有利なのか」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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