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依存症は厳罰主義では解決しない

国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症 松本俊彦(1)

2017年5月13日(土)

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覚せい剤をはじめ、違法な薬物の事件報道が時おり世間を騒がせる一方で、薬物依存症は治療が必要な病気でもある。それはギャンブル依存症などでも変わらない。では、依存症はどんな病気で、どんな人がなりやすく、どうやって治すのだろうか。日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニアである松本俊彦先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 薬物依存、とりわけ、覚せい剤の乱用は、現在の日本社会におけるひとつの大きな問題だ。

 厚生労働省によれば、平成になってからの四半世紀、覚せい剤取締法違反で検挙された人数は時に2万人、近年、減少傾向にあるとはいえ毎年1万人以上を数える。これは、違法薬物の中で圧倒的な1位で、2位の大麻にくらべて常に数倍にのぼる(いずれも輸出入や製造・栽培についての検挙も含まれているので、単純に使用したことで検挙された人の数ではないことには留意)。

犯罪者であり、患者

 社会的な関心も大きい。

 例えば、芸能人が、覚せい剤を使って逮捕されたとする。

 ワイドショーはもちろん、ニュース番組ですら、時に政治や国際問題よりも多くの時間をさいて伝える。スポーツ紙や週刊誌は、さらに強い関心を寄せるかもしれない。 

「転落への道」「心の闇」などといった紋切り型の言葉を使い、「信頼を裏切った」「ファンに申し訳が立たない」と断罪することも多い。

「いち早い更生を」と再起を促す訳知り顔のコメンテイターの発言を、たぶん、ぼくはこの数年間に何度も見たり聞いたりした。再犯、再再犯になると、「あきれた」「いい加減にしろ」「ふざけてる」と、突き放した表現が出てくるのもよくある話だ。

 そんな時に、ふと疑問に思うことがあった。

薬物依存症について取材するため、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所を訪れた。

 この人達は、薬物依存症という病気を患っており、そもそもの前提として治療が必要なのではないか。もし治療を受けても治らないのだとしたら、それはますます深刻な病気であって、治らないことを非難されるのはちょっとおかしいんじゃないだろうか……。

 患者であり、同時に犯罪者でもある。それが、違法な薬物への依存の問題をややこしいものにしている。

 犯罪の側面に注目すれば、何度も同じ過ちを繰り返すのは批判に値するし、あきれられ見放されてしまうのも分かる。

 しかし、患者としてはどうなのだろう。

 東京都小平市にある国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所を訪れ、松本俊彦・薬物依存研究部長とお会いした際、最初に話題になったのはまさにその点だった。

コメント5件コメント/レビュー

大事な記事だと思いました。

下のコメントを含め、このような問題を「科学的な考え方がなかなか普及しない」と解釈することが多くあります。それそのものは間違っていませんが、本質を見誤っているとも思います。

いつまで経っても、一般の人が理解しないのは、「責任の追求」と「問題の解決」を混同しているからだと思います。本件の場合で言えば、依存症になったのは誰のせいか? という問を立てるなら、本人のせいである、という答えには一定の説得力があります。しかし、責任のありかを決めたら問題が解決される訳ではない。依存症は、本人も苦しむし、周りの人も苦しむし、周りに迷惑でもある。そこで、どうやったら解決できるか? と問うべきなのです。

責任の追求と問題の解決は、別に排他的ではないので、両方取り組めばよい。なのに、一般の人は、責任の追求だけが目的であるかのような言動に陥りがちです。(企業の不祥事から児童の貧困まで、あちこちで、同じことが起きていると思います。)(2017/05/15 14:28)

「研究室に行ってみた」のバックナンバー

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「依存症は厳罰主義では解決しない」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

大事な記事だと思いました。

下のコメントを含め、このような問題を「科学的な考え方がなかなか普及しない」と解釈することが多くあります。それそのものは間違っていませんが、本質を見誤っているとも思います。

いつまで経っても、一般の人が理解しないのは、「責任の追求」と「問題の解決」を混同しているからだと思います。本件の場合で言えば、依存症になったのは誰のせいか? という問を立てるなら、本人のせいである、という答えには一定の説得力があります。しかし、責任のありかを決めたら問題が解決される訳ではない。依存症は、本人も苦しむし、周りの人も苦しむし、周りに迷惑でもある。そこで、どうやったら解決できるか? と問うべきなのです。

責任の追求と問題の解決は、別に排他的ではないので、両方取り組めばよい。なのに、一般の人は、責任の追求だけが目的であるかのような言動に陥りがちです。(企業の不祥事から児童の貧困まで、あちこちで、同じことが起きていると思います。)(2017/05/15 14:28)

薬物/タバコ/酒へのハードルを上げる、というのも入口対策として有効でしょうね。

そのためにはまず、気持ちよいものだ、と思わせないことが肝心かも。
つまり、若いうちに薬物/タバコ/酒への激烈な不快体験を体にさせるということです。

私事ですが、タバコも酒も薬もやりません。なぜならば、
・強烈な二日酔い体験(2日寝込むこともあった)を何度も繰り返した。
・体調不良時に初めてタバコを吸ってみて、不味かったうえに気持ち悪くなった。
・向精神薬(病気治療用)が切れた時の離脱症状で七転八倒した。
このような、強い不快体験があったせいです。

人間も動物ですから、動物が不快な経験で調教されるがごとく、自ら不快な体験を脳の原始的領域に刻みつけることで、安易に手を出すことを減らせるだろうと思います。

例えば、酒を飲むと気持ち悪くなる薬を作り、学生飲み会の前に飲ませる。
タバコが猛烈に不味くなる飴を開発する。
薬の離脱症状だけを体験できる薬を作る。

等々。

薬物だけではなく、喫煙や飲酒ですら近年は社会的に排除されていく流れであり、その社会から排除されないためには、これらと距離を置くための方策を考えねばなりません。
おっさん共には手遅れかもしれませんが、若者には、これらが選択肢に上がらないようハードルを上げておいて欲しいですね。

※蛇足ですが、実はカフェイン依存だけはやめられていません。コレも離脱症状があるのですが数日かかるうえに、カフェインを通常の飲食から排除も難しいので諦めています。(2017/05/15 12:34)

3年も無駄に服役させたらどれだけ税金がかかるか。恐らく1人当たり億円単位でしょう。しかも、それで効果があればいいけど、効果はほぼないと言ってもよいかと思います。


日本が様々な分野で遅れているのは情報の取得が遅れているからです。薬物に対する情報がほぼゼロの社会に向かって「厳罰主義では解決しない」といっても響かないでしょう。


英語のできない社会においては、様々な問題に対して新しい情報を社会に流すのは国立大学の文系学者の役割の1つかとおもいます。調査研究ばかりで社会への適用が欠けている文系研究者の怠慢が薬物問題における税金の無駄遣いにつながっているということだと思います。(2017/05/13 18:00)

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