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なぜ薬物使用疑惑をスクープにしてはいけないか

国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症 松本俊彦(6)

2017年6月17日(土)

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覚せい剤をはじめ、違法な薬物の事件報道が時おり世間を騒がせる一方で、薬物依存症は治療が必要な病気でもある。それはギャンブル依存症などでも変わらない。では、依存症はどんな病気で、どんな人がなりやすく、どうやって治すのだろうか。日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニアである松本俊彦先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 最後に重要なことを一つ。

 インタビューの冒頭で触れたマスメディアの報道の件だ。

 芸能人などが逮捕され、過剰な報道がなされる時、松本さんのもとで治療中の患者さんでも、再使用してしまう人が増える。その都度、せっかく積み上げてきた回復への道が、何年も前の状態に戻ってしまいかねない。場合によって、ふたたび暗い穴ぼこに落ち込んで、彷徨わなければならない人も出てくる。

 それを避けるために、松本さんは、薬物報道のガイドラインなるもののたたき台を作り、今年(2017年)1月に公表したばかりだ。

「注射器と白い粉」がスイッチに

 報道する側はどんなことに気を使う必要があるのだろうか。

「薬物報道ガイドライン」を公表した国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦さん。

「すごくわかりやすいことを2つお伝えしたいと思います。1つは、イメージカットで注射器とか白い粉を出しますよね。あれ、やめてほしいんです。あれを見ると、やめようと思って頑張ってる覚せい剤依存症の人たち、みんな欲求のスイッチが入るんですよ。だから、著名人が捕まる報道でメディアが騒ぐときに、私の外来の患者さんたち、ばたばたと再使用しちゃってるんですよ。もう本当に、やめてくれよってくらいに毎回、起きます」

 注射器と白い粉の資料映像は超定番で、薬物報道では必ずと言っていいほど目にする。ぼくは20世紀の最後の方に8年間ほどテレビ局に勤務していたが、その頃、すでに確立しており、「覚せい剤? 資料映像もってこい!」的にすぐに使えるものとして準備されていた。

 それが、治療中の患者の再使用スイッチを押してしまう! 言われないと気づかないことだ。なお、この「白い粉と注射器」という演出は、日本独特の覚せい剤乱用とその取り締まりからなるカルチャーが創り出したものらしい。松本さんは、他の国でこの手の資料映像を見たことがないという。

コメント7件コメント/レビュー

記事を読みながら自殺報道の問題を連想していたら、「WHO 自殺予防 メディア関係者のための手引き」を参考にしているとのこと。やはり根は同じだったのですね。マスコミは、自分たちが被害者を増やしているという自覚を持たないといけないと思っています。自分たちの下手な報道が薬物依存者の更生を妨げる。自殺者を増やすという自覚です。これをもってもらえばかなり良くなると期待できます。
△まあ、自分たちが儲かれば他人はどうなってもよいと考えているマスコミ関係者がどのくらいいるかですね。理想を言えばそういう報道をしたマスコミを良心的なマスコミが批判報道するようになるといいのですが、仲間意識が強いですからね。某出版社のトップが麻薬をやっていたという事件の時に結構報道されたのですが、それはかなり例外だということでした。彼は同業者に嫌われていたからこんなに報道されたのだという話を出版関係者に聞いたことがあります。嫌われていなければあまり報道されなかったということです。そんな身内意識をもっているようでは公正な報道など期待できないですね。(2017/06/19 21:41)

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「なぜ薬物使用疑惑をスクープにしてはいけないか」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

記事を読みながら自殺報道の問題を連想していたら、「WHO 自殺予防 メディア関係者のための手引き」を参考にしているとのこと。やはり根は同じだったのですね。マスコミは、自分たちが被害者を増やしているという自覚を持たないといけないと思っています。自分たちの下手な報道が薬物依存者の更生を妨げる。自殺者を増やすという自覚です。これをもってもらえばかなり良くなると期待できます。
△まあ、自分たちが儲かれば他人はどうなってもよいと考えているマスコミ関係者がどのくらいいるかですね。理想を言えばそういう報道をしたマスコミを良心的なマスコミが批判報道するようになるといいのですが、仲間意識が強いですからね。某出版社のトップが麻薬をやっていたという事件の時に結構報道されたのですが、それはかなり例外だということでした。彼は同業者に嫌われていたからこんなに報道されたのだという話を出版関係者に聞いたことがあります。嫌われていなければあまり報道されなかったということです。そんな身内意識をもっているようでは公正な報道など期待できないですね。(2017/06/19 21:41)

もちろん記事の通りなのでしょう。
しかし、目を引いてなんぼのマスコミは、別に問題を解決したいと思って放送してるわけじゃないですからね。
薬物以外のことだって同じでしょう。マスコミが騒がず放置してれば問題にならなかったなんてザラにあるのでは?
むしろ「話題性のある有名人は薬物に手を出すな」というほうがマシかもしれませんね。(2017/06/19 19:43)

「犯罪」の側面に焦点をあてて、水に落ちた犬を叩くのか、「病気」の側面に焦点をあてて、冷静に専門的な情報を共有することに努めるのか。同じようなことは”窃盗常習犯”にもいえると思います(よく夕方のニュースでやってるやつ)。(2017/06/19 10:27)

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