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脳の発達の「グランドセオリー」を求めて

東京大学 発達脳科学 赤ちゃんの脳研究者 多賀厳太郎(6)

2015年8月29日(土)

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首がすわってお座りをして、ハイハイを覚え、立ち上がって歩き、言葉を発する――生後1年間のうちに驚異的な成長を遂げる赤ちゃんの脳ではいったい何が起きているのだろうか。その発達の解明で最先端をゆく多賀厳太郎さんの研究室に行ってみた!

(文=川端裕人、写真=藤谷清美)

 赤ちゃんの脳研究の第一人者である東京大学大学院教育学研究科の多賀厳太郎教授は、なぜこの魅力的なテーマにたどり着いたのか。

 様々な驚きに満ちた赤ちゃんの脳の世界は、まだまだ世界的に探究が始まったばかりのようで、研究の沃野が広がっている。特に脳で起きていることを血流などから推定するやり方は、90年代にfMRI、さらに光トポグラフィが発展するまで、まっとうな方法がなかった。まさに脳という大海にこぎ出た大博物学時代、と形容するに相応しいと感じる。

最初は二足歩行

 多賀さんに研究の由来を問うと、意外な答えが返ってきた。

「実は、最初は二足歩行について研究していたんですよ」と。

 二足歩行?

 なにかロボットの研究を想起する。多賀さんの研究は脳にまつわるものだから、人工知能や制御工学などを通じてロボット研究と通底する部分があるのは当然にしても、二足歩行の研究から「赤ちゃんの脳」とはどんな道筋なのか。

「実は、僕、学部は薬学部でした。ちょうど80年代の後半で、その時に、当時としては先鋭的だった生命システムの見方を導入していたパイオニアである清水博先生に出会いました。自己組織化とか、そういう言葉が初めて生命システムに適用されてた頃です。あ、これこそ自分が知りたいことだって思って、研究室に入ったんです。二足歩行というのは、その時の研究です」

 薬学部で二足歩行の研究! というのも驚きだが、後の研究テーマである「赤ちゃんの脳」とのつながりはどこなのだろう。

 自発運動や自己組織化。そのあたりが、理解の鍵になるようだ。

「人間が歩いたりする機構は、脳がまず自発的なリズムをつくった上で、体とか環境とかと相互作用するプロセスがあります。それをコンピュータ・シミュレーションを使って、脳のリズムをつくる神経ネットワークと、二足歩行をするある意味ロボットのモデルみたいなものとつなげたんです。すると、脳と体と環境からいろいろ力を受けて、ひとりでに二足歩行できていく、つまり自己組織化されると発見しました」

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「研究室に行ってみた」のバックナンバー

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「脳の発達の「グランドセオリー」を求めて」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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