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アマゾンマナティーに会いに、アマゾンへ

京都大学野生動物研究センター アマゾンマナティー 菊池夢美(1)

2016年1月9日(土)

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アマゾン川を象徴する希少な動物、アマゾンマナティー。IUCNに「危急種」と指定され、ブラジルでは保護の対象になっているものの、その生態は謎に包まれている。「こんなに魅力的な動物は他にいない」とアマゾンマナティーに惚れ込み、2007年からアマゾンに通い続けて研究と保全活動を行う菊池夢美さんの研究フィールドに行ってみた!

(文・写真=川端裕人)

 2015年10月、南緯3度。ブラジル・アマゾンの玄関口マナウスから、車で2時間ほど走ったところにある地方都市マナカプル。その中心街からもかなり離れた、アマゾン川(ソリモンエス川)沿いの湖畔に、ぼくはいる。

 ゆうに摂氏35度を超える炎天下、日焼け止めを塗りたくって、じっと湖の水面を見ている。一応、偏光サングラスをかけているが、それでもまぶしい。湖にはちょっとした入り江みたいな部分があって、その中に、彼らが回遊してくるのをただひたすら待っている。

炎天下、湖面をじっと見つめる。

 回遊してくる、というのは、ピラルクだとかピラニアだとかアマゾン川の魚のことではない。

 アマゾンマナティーだ。

 アマゾン川水域にしかいない希少な水生哺乳類で、IUCNのレッドデータリストでは、「危急種(Vulnerable)」。ブラジル国内でも、全面的に保護の対象になっている。

目の前の幻

 コロンビア、ペルー、エクアドルの上流域にもいて、生息域はとても広い。その一方で、分布はまだらで、とびとびになっているらしい。全貌が把握しにくいため、どのような文献を見ても「生息頭数は不明だが、減少はあきらか」と書いてある。21世紀になってからの個体数推計すらない。1977年に「アマゾン全域で少なくとも1万頭」と見積もられたのが、いまだに唯一具体的な「数」として言及されるほどだ。

 そのようなミステリアスな生き物のうち、少なくとも何頭かが、ぼくの目の前の湖にいるというのだが……ぼくにはさっぱりわからない! 呼吸のために水面に出てくるのを見つけようとしても、ぼくの目は、これに関して、完全にフシアナだ。隣にいる国立アマゾン研究所の調査リーダー、ディオゴ・ソウザが、ほらあそこに出た、と教えてくれるのだが、見た時にはもう水面下に没している。教えてもらってすら目視できない、幻の動物のような気がしてきた。

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「アマゾンマナティーに会いに、アマゾンへ」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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