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「ひねり王子」が見る五輪会場の天井に物議

東京五輪に求めたい真の「持続可能性」

  • 藤田 香=日経エコロジー編集&日経BP環境経営フォーラム 生物多様性プロデューサー

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2016年7月29日(金)

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東京五輪のために東京都江東区有明に新しい体操競技場が建設されることになった。大きな木の梁が天井を支える斬新なデザインだ。ところが、この建物に使う木材に対して、「違法木材の混入を回避できない」とNGOから指摘の声が上がった。東京五輪組織委員会が発表した「持続可能性に配慮した木材の調達基準」に抜け穴があるという。リオ五輪が終われば東京五輪に世界の目は向く。日本のお家芸である体操競技に水を差すことにならなければよいのだが…。

 リオ五輪が一週間後に迫った。日本の金メダルが期待される種目の1つに、体操競技の男子団体がある。ロンドン五輪個人総合金メダリストの内村航平選手をはじめ精鋭がそろう日本チームに期待が高まる。その中でも最年少として脚光を浴びているのが、「ひねり王子」こと19歳の白井健三選手だ。自身の名前「シライ」を冠した新技を4つも生み出したつわもので、ゆかで4回ひねりの後にぴたりと着地を決める様子は見事としか言いようがない。素人目には目が回りそうな高速回転でも、内村選手や白井選手はちゃんと天井やゆかの位置を確認して、自分がいま何回転目なのか分かっているという。素晴らしい平衡感覚と身体能力である。

 4年後の東京五輪では白井選手は23歳。日本のエースとしてチームの中心にいることだろう。ところが、彼が華麗な演技の途中で目にする天井を巡って、いまちょっとした議論が沸き起こっている。東京五輪の体操競技場は東京都江東区有明に新たに建設されることになっており、その設計・建設の入札が今夏すぎにいよいよ始まる。基本設計では、梁に木材をダイナミックに使うデザインとなっている。ところが、この木材の調達基準ともいえる「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を東京五輪組織委員会が6月13日に発表したところ、環境NGO(非政府組織)から「この基準では違法伐採された木材が使われる可能性が残る」と懸念の声が上がった。

東京都有明に建設される東京五輪の体操競技場のイメージ図。建物に使用する木材の調達基準が五輪組織委員会から発表されると、「本当に持続可能性を担保できるのか」という疑問の声が上がった。日本のお家芸である体操の選手たちが見上げる天井には、世界に誇れる持続可能な木材の活用が望まれる。
提供:Tokyo 2020、2016年3月時点のイメージ図

環境・人権問題で批判されてきた過去の五輪

 なぜ問題視されたのか。それを語る前に、そもそも五輪の調達基準とは何かを説明しよう。五輪の施設やイベントには様々な原材料が使われる。例えば、建築物や家具には木材が使われる。チケットやパンフレットには紙が、選手村で提供する食事には野菜や肉や魚が使われる。こうした様々な原材料に求める基準を示したのが、「五輪の調達基準」である。しかも、環境に配慮して持続可能であることが重要な要件となっている。

 最近の五輪が環境や持続可能性を重視するようになった背景には、過去の五輪が原材料の調達にあたって環境や人権上の問題で世界のNGOから批判を浴びてきた歴史がある。2004年のアテネ五輪では、スポーツウエアメーカーが提供した製品のアジアの委託工場で従業員が劣悪な労働環境下で働かされていることが非難された。2008年の北京五輪では、使用された木材が違法伐採木材であることが追及された。五輪やワールドカップは環境・人権上の問題でNGOがネガティブ・キャンページを展開する格好のイベントとなってきた。

 この流れを変えたのが、2012年のロンドン五輪だった。開催の5年前には環境や人権に配慮した「持続可能な調達基準」を策定した。大会で使用する木材は森林認証材かリサイクル材だけにし、選手村などで提供する魚は漁業認証の魚にするという厳しい基準を設けることで、持続可能性に本気で取り組む事業者と契約を結ぶことに成功した。ロンドン五輪は「持続可能性」を初めて打ち出した五輪と称され、持続可能性の考え方を五輪の「レガシー(遺産)」として残したのである。

 同じく先進国で開催される東京五輪にも世界の注目が集まっている。東京五輪もまた、開催の理念に持続可能性を掲げている。間もなく発表される「アクション&レガシープラン」では、東京五輪が残すレガシーの5本柱の1つに「持続可能性」を掲げ、それを実現するためのアクションとして、再生可能エネルギーや省エネ技術の導入、水素供給システムの整備、生態系に配慮した植栽などと並んで、「持続可能な調達基準の策定・運用」を明記している。

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