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「フィデューシャリー・デューティー」の衝撃

政府が本腰、金融機関のあり方を根幹から揺さぶる「新概念」

2016年6月10日(金)

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「フィデューシャリー・デューティー」(受託者責任)が、日本の資産運用会社に徹底されれば、グループ会社の商品を扱うことも難しくなるかもしれない

資産運用の受託者が、委託者に対して負う責任

 「フィデューシャリー・デューティー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。一部の金融界の人を除けば耳慣れないこの概念が、日本の金融機関のあり方を根幹から揺さぶろうとしている。

 フィデューシャリー・デューティーとは「受託者責任」と訳される概念で、資産運用を受託した者が、もともとの資産保有者、つまり資産運用を委託した者に対して負う責任を言う。運用会社など金融機関は、資産を預けた人の利益を最大化する事に務めるのが義務で、利益に反するような行動は取ってはならない、ということだ。

 安倍晋三内閣は6月2日、成長戦略の「日本再興戦略2016」を閣議決定した。第2次安倍内閣が発足して以降、4回目となる成長戦略の見直し版だ。IoT(インターネット・オブ・シングス)やビッグデータ、人工知能の活用による新たな成長市場の創出と、人口減少による人手不足を克服するための生産性向上、新たな産業構造を支える人材強化の3つを課題ととらえ、様々な施策を盛り込んでいる。

 実は、そんな中に「フィデューシャリー・デューティー」という言葉が出て来るのだ。「活力ある金融・資本市場の実現を通じた成長資金の円滑な供給」という項目の具体策として、「フィデューシャリー・デューティーの徹底、長期安定的投資を支えるツールの整備、市場の公正性・透明性・安定性の確保といった論点について、金融審議会で検討する」とされたのである。しかも、「本年度中に一定の結論を得ることを目指す」と明記されている。

日本の金融機関は利益相反の行動を取っている

 そのうえで、「具体的な施策」として、以下のように書かれている。

 「金融商品の販売・開発に携わる金融機関に対しては、顧客(家計)の利益を第一に考えた行動がとられるよう、また、家計や年金等の機関投資家の資産運用・管理を受託する金融機関に対しては、利益相反の適切な管理や運用高度化等を通じ真に顧客・受益者の利益にかなう業務運営がなされるよう、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図ることとし、これにより、国民の安定的な資産形成への貢献を促す」

 何だ、当たり前の事ではないか、と思われるかもしれない。金融機関が顧客の利益を第一に考えるのは当然で、何を今さらといった印象を受けるだろう。だが、政府がわざわざこんな事を言うのは、実際のところ、日本の金融機関は顧客の利益を第一とは言えない利益相反の行動を取っている、ということに他ならない。

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「「フィデューシャリー・デューティー」の衝撃」の著者

磯山 友幸

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

ジャーナリスト。1962年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞で証券部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め2011年3月末に独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師