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番外編:シリア難民を標的にした悪徳請負業者の行状

2015年9月16日(水)

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大量の難民を乗せたゴムボート。ギリシャの海岸まであと100メートルというところで空気が抜けた(写真:ロイター/アフロ)

 「海を越えるためのボート乗船代として1人3000ドル(約36万円)も請負業者に支払ったんです。(トルコからギリシャに行くために)エーゲ海を渡るにはしっかりしたゴムボートが必要でしたから。そこからドイツまで、さらに1人4000ドル(約48万円)も請求されました」

 ユーチューブにアップされた映像の中で、中年のシリア人男性が早口でまくしたてた。中東シリアではいま、内戦によって多くの国民が国外に追われ、難民となっている。

 「戦争が始まる前まで、普通に生活していたんです。一軒家に住み、車を所有し、家族5人で不自由なく暮らしていました。けれどもすべて売り払って国を出ざるを得なかったのです」

 難民といっても、すべての人が経済的に貧窮しているわけではない。男性は一軒家も車も所有していたが、政府軍とイスラム国(IS)を含む反政府勢力との戦闘が激しくなり、母国シリアを脱出せざるを得なくなった。

 こうした、資産を現金化して国外に出た人たちにいま、悪徳の越境請負業者が詐欺まがいの手法で近づき、社会問題化している。悪徳業者は特にトルコで数十組織もあると言われ、同じシリア人が運営していることも多い。母国の人間である安心感からか、信じて不当な金額を請求されるケースが頻発している。

 すでに越境請負業というビジネスが出来上がっている。「移民ファイル」という欧州のジャーナリスト組織の推定では、年間1500億円市場になっているという。請負業者は一般的に、正規価格が2万円もしない多目的型ゴムボート1艘に約1000ドル(約12万円)も請求する。

 小さなボートは危険性が高く、転覆事故も起きている。強化ゴム製の大きなボートへの乗船は、冒頭の男性が話すように1人3000ドルが相場だ。しかも身動きがとれないほど詰め込まれての料金である。

 良心的な業者に出会って、シリアからドイツまで1人2500ユーロ(約34万円)で行った人もいる。だが通常はシリアからレバノンに行き、そこからトルコ、ギリシャ、さらにいくつかの欧州諸国を陸路で移動する。その行程は計り知れない苦難に満ちている。

シリア=ドイツ間の空路は約180万円

 悪徳業者はカネさえ手に入ればよく、難民という社会的弱者の立場など考慮しない。たとえばハンガリーのブダペストからオーストリア・ウィーンまでの電車代として400ユーロ(約5万5000円)も請求する。普通に購入すれば50ユーロほどの切符である。難民たちには言葉に不自由する者も多い。業者が話す言葉の意味も分からないまま、不当に釣り上げられた請求額を支払ってしまうようだ。

 8月末、ブダペストからウィーンまでの陸路で悲劇が起きた。両都市を結ぶ高速道路にトラックが放置され、中から71の遺体が発見されたのだ。男性60人、女性8人、子ども3人、全員が窒息死だった。

 オーストリア警察によると、大型トラックは冷凍食品を運搬する車両で、ドアを閉めると密閉度が高い。71人が乗れば、中の酸素はせいぜい1時間しか持たない。途中で、社内の異変に気づいた犯人たちは車を放置して逃走した。だが、警察がブルガリア人3人とアフガニスタン人1人をすぐに逮捕した。計画的な殺人ではないが、無責任な越境請負業者による過失致死罪だった。

 一方、富裕層の難民もいる。内戦で混乱するシリア政府はパスポートを発給しないため、難民たちは偽パスポートと偽ビザを請負業者から入手する。業者はこうした難民に、ドイツ・フランクフルトまでの航空券を含めて1人約1万5000ドル(約180万円)も請求する。ビジネスクラスではない。通常では考えられない金額を要求し、悪徳業者たちは暴利を貪っている。

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「番外編:シリア難民を標的にした悪徳請負業者の行状」の著者

堀田 佳男

堀田 佳男(ほった・よしお)

ジャーナリスト

1957年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、アメリカン大学大学院国際関係課程修了。米情報調査会社勤務後、90年にジャーナリストとして独立。政治、経済、社会問題で取材活動をつづけ、滞米25年後に帰国。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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