• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

過去1年で3000万の米国人が年金を取り崩した

2015年9月30日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「衝撃的な数字」と呼んで差し支えないだろう――

 米金融機関バンクレート社が9月下旬に公表した報告書によると、米国で過去1年、年金の積み立てを取り崩した人が約3000万に上ったというのだ。

 同報告書には、さらに驚くべき内容が記されていた。回答者のなんと93%が、退職後、年金だけで生活することは「すでにファンタジーの世界になった」と回答した。

 年金の取り崩しに走る姿と、年金生活をファンタジーと呼ぶ姿は、米市民の経済的な余裕のなさを示している。だが、少し考えると両者は矛盾しているようにみえる。

 というのも、年金だけで生活ができにくい状況であれば、年金の積み立て額を今まで以上に増やすとか、様々な方策で将来に備えるといった積極的な動きがもっと出てきても不思議ではない。だが実際には、多くの市民が将来をよけい不安定にする年金取り崩しに走っているのだ。

 生活を積み立てる資金に困るほど、いまの米国人は経済的に困窮しているのだろうか。

 2008年のリーマンショック後、米経済は少しずつ回復してきているが、同報告書では「米金融機関への信頼を失った」と回答した人の割合が77%に達している。さらに貯蓄するのを止めた人が41%もいる。悲観的な数字が並ぶので、本当なのかと疑ってしまうほどだ。

 報告書をまとめたバンクレート社は金融情報を収集・評価する企業で、ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズなど大手メディア100社以上に金融情報を提供している。1971年にフロリダ州で設立された。

子どもの学費や結婚資金が賄えない

 年金を取り崩した3000万人は、日本のタンス貯金のように自衛策としてキャッシュを手元に引き寄せたということなのか。

 バンクレート社の主席フィナンシャル・アナリストであるグレッグ・マックブライド氏は、実情はもっとひっ迫しているという。「自分の年金に手をつけることが、かなり危険な行為であることはほとんどの人が理解しています。それでもなお、年金を取り崩すのは、子どもの結婚式や大学の学費などに充てるまとまった金額の貯蓄がないからなのです」。

 ここには2つの大きな経済問題が潜んでいる。
 1つは、米国人の多くが結婚式の費用や学費など、まとまった金額を貯蓄できていないということだ。多くの親が子どもの結婚式や学費の面倒をみるのは日本と同じである。だが余剰金に乏しい現実がある。

 給料は日々の生活費に消えてしまい、貯蓄に多くを回せない実生活が垣間見える。銀行の口座残高は少なく、数百万円単位の資金が必要になった時には年金に手をつけざるを得ない。

 バンクレート社の調査によれば、回答者の18%は貯蓄額がゼロ。半数近くの人が将来に備えた蓄えをしていないという。

 2つめの問題は前出のマックブライド氏が説明している。
 「生活費で300ドル(約3万6000円)を工面したい時に年金を取り崩す人はいません。年金に手をつける場合、単位は数千ドルから数万ドルの単位になるのが普通です。危険なのは、年金を一度取り崩すと残高を回復させることが難しいことです。退職後に受け取る年金の受給額も減ってしまいます」

「アメリカのイマを読む」のバックナンバー

一覧

「過去1年で3000万の米国人が年金を取り崩した」の著者

堀田 佳男

堀田 佳男(ほった・よしお)

ジャーナリスト

1957年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、アメリカン大学大学院国際関係課程修了。米情報調査会社勤務後、90年にジャーナリストとして独立。政治、経済、社会問題で取材活動をつづけ、滞米25年後に帰国。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授