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ニチレイが静かに6次化事業から撤退した

農業における「約束」という難題

2016年3月4日(金)

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稼働を一時停止する直前のベジポート。農産物はほとんどない(千葉県旭市)

 ニチレイが、千葉県で手がけていた6次産業化事業から撤退した。野菜を低温貯蔵し、加工する設備をそなえた大規模施設を旭市で運営していたが、2月いっぱいで稼働を停止した。「日本農業の再生への貢献」という理想を掲げたプロジェクトは、ひっそりと幕を下ろした。

「相場の変動」対策、合理的にみえたが…

 6次産業は、1次産業である農業と2次、3次産業を組み合わせることで、農業の収益性を高めることを指す。今回の事業では、ニチレイグループの中核企業であるニチレイフーズと農業法人のテンアップファーム(千葉県富里市)が組み、2007年に「ベジポート」という事業組合を設立、2009年から施設を稼働させていた。

 投資額は約10億円。ニチレイが4億5000万円、テンアップファームが5000万円を出したほか、約4億円の補助金も活用するなど、政府のバックアップも受けたプロジェクトだった。だが稼働から7年間、一度も利益を出すことができず、ニチレイは事業を続けることをあきらめた。

 計画そのものは、じつに合理的にみえた。もともとテンアップファームは自社生産だけでなく、周辺の農家からニンジンやトマト、ホウレンソウなどの野菜を仕入れ、販売していた。悩みは相場の変動。「豊作貧乏」という言葉がある通り、野菜が余ると値が下がるのは農家に共通の頭痛のタネで、出荷しても利益が出ない分は畑に捨てたりしていた。貯蔵施設で出荷を平準化すれば、こうした問題を軽減できると考えた。

 じつは「相場の変動」にあらがおうとしたベジポートこそがこの問題に悩まされ、事業を根底から揺さぶられることになるのだが、そこのことは後述する。

 話をもとに戻そう。ベジポートをつくる前も、テンアップファームはまったく無策だったわけではない。例えば、余ったトマトを廃棄せず、工場に委託してジュースにしたりしていた。だが、「捨てないですんだ」というていどの対応策にすぎず、利益は出ていなかった。そこで、ベジポートではジュースをつくる機械を買い入れ、自ら加工も手がけることにした。典型的な6次産業化の事業と言っていいだろう。

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「ニチレイが静かに6次化事業から撤退した」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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