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北海道の小麦農家、たった1人で開く世界への扉

各国の農業を学ぶ「ナフィールド」交流会に初参加

2016年4月15日(金)

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 環太平洋経済連携協定(TPP)に日本が参加するとき、農林族や農協は「農業が壊滅する」と猛反発した。もし本当に関税がなくなれば、経営環境は間違いなく悪化するから、反対すること自体は仕方がないとも言える。だが、政治や団体の役割はそれだけではないはずだ。日本がこれから向き合う「世界の農業」の実情を知り、生産者に伝えることも大切な仕事ではないだろうか。

 今回紹介するのは、農業者として単身、世界への窓を開こうと挑戦している前田茂雄さんだ。北海道・十勝の東部地域で、父親の芳雄さんとともに約110ヘクタールの農場を経営している。おもな作物は小麦やトウモロコシだ。

日本人が交流会に出席するのは初めて

 「ナフィールドに行ってこようと思っている」。筆者が前田さんからそんな連絡を受けたのが、今年1月はじめ。ナフィールドは農業者や漁業者を対象にした国際的な奨学金制度で、米国の大手農業機械メーカーや外食企業、欧州の農業関連の金融機関などがスポンサーになり、世界各国の農場を6週間の日程で視察する。

 もともと英国の自動車メーカーの経営者が資金を出し、世界の農業者の交流の場として約60年前に誕生した。その後、グローバル企業がスポンサーとして参加することで内容が充実していった。視察対象は各国の農場だけでなく、食品流通や加工の現場にもおよぶ。食文化や消費動向について学ぶ機会も設けられているという。

 奨学金の目的は、各国の未来の農業界のリーダーを育成することにある。例えば、ナフィールドの運営メンバーの一人は、オーストラリアのトマト生産でおよそ8割のシェアをにぎる大規模経営の生産者だ。彼もかつてナフィールドの「旅」に参加した経歴を持つ。

 今年の奨学生はブラジル、アフリカ、インド、中国、日本をおもな視察先とする5チームに分かれ、合計で約80人がすでに出発している。メーンの視察国に加え、それぞれ7カ国以上を回り、見聞を広める予定になっている。

 前田さんが参加したのは、各チームの出発に先立ち、奨学生が1カ所に集まり、どんなメンバーが旅に出るのかを確かめ合うための交流会だ。今年はアイルランドの北東部にあるキャバンで3月上旬に開かれた。前田さんは奨学生ではないので、参加資格は「ゲスト」。日本人が出席するのは初めてという。

ナフィールドの会合で各国の農業関係者と談笑する前田茂雄さん(アイルランドのキャバン、Nuffield csc提供)

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「北海道の小麦農家、たった1人で開く世界への扉」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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