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ベンチャー八百屋が「埋もれた匠」を掘り当てる

シャイで寡黙だが腕はいい農家を、生かす仕組みを

2016年9月2日(金)

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 農業の現場と言っても、「現場」にはいろいろある。田んぼや畑や栽培ハウスでの農作業はもちろん、企業的な経営が求められるようになったいま、販路の開拓や加工場も現場の1つといえる。今回取り上げるのは出荷の現場。買い手からみれば、集荷になる。

都市農業の応援団

 取材対象は、東京都国立市や国分寺市などにある青果物店「しゅんかしゅんか」の集荷の様子だ。全国から農産物が集まるスーパーとは違い、地元の農家の野菜を中心に販売している。東京都内という店舗の立地上、都市農業の応援団という側面もある。

 農家が農協などを通して市場に出荷するふつうの流通と異なり、「しゅんかしゅんか」は仕入担当が日々、必要な野菜を仕入れている。農家を一軒一軒訪ねるこのやり方は、一見非効率にみえる。

 同店を展開するベンチャー企業、エマリコくにたち(国立市)の代表、菱沼勇介さんによると、集荷の意味は2つある。1つは、駅前という立地による制約だ。人の往来が多い小さな青果物店に、仕入れ先の農家がみんな軽トラで乗りつけて、納品するのは事実上不可能。交通を妨げて、クレームが出る恐れもある。

 だがこれは、集荷をする消極的な要因。もっと大きいのは、「農家とのコミュニケーション」だ。生産者やその家族と仕入担当が直接接することで、生産者の情報を消費者に伝え、消費者のニーズを生産者に伝えることが可能になる。この双方向の交流を通し、店の品ぞろえと畑の風景が変わってくる。

 「集荷に同行してみたい」。菱沼さんにそう相談すると、入社ほやほやの山川武士さんを紹介してくれた。多摩センター三越(東京都多摩市)の地下1階に最近、出店した「しゅんかしゅんか」と、京王線高幡不動駅(東京都日野市)の近くのスーパーへの納品を担当している、25歳の若い仕入担当だ。

 待ち合わせは、高幡不動駅の改札で午前10時半。「わりとのんびりしたスタートだな」と思っていたら、筆者の完全な勘違いだった。

エマリコくにたちの山川武士さん㊧。青木克訓さん、母の幸子さんの親子の農家を集荷で訪ねた(多摩市)

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「ベンチャー八百屋が「埋もれた匠」を掘り当てる」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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