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我々は札束でほおをたたかせない!

補助金経営への誘惑(下)

2015年10月9日(金)

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 「農家のことをなめてるとしか思えない。悔しい」。心ある生産者から嘆きの声が筆者のもとにとどいている。家畜のエサにする飼料米に出す補助金のことだ。農家の収入の9割を補助金が占めることになるこの制度の問題を、前回この連載で取り上げた(10月2日「農家のほおを札束でたたくな!」)。

補助金に迷いなく背を向ける

 主食のコメの値段はここ数年下がり続けており、収入減に悩む農家が補助金ほしさに飼料米に手を出す気持ちはわかる。問題は、そんな制度をつくった農政の側にある。だがそうしたなかでも、この補助金に背を向ける人もいる。「組合員には飼料米は勧めていません」。秋田ふるさと農業協同組合(秋田県横手市)の小田嶋契組合長はそう話す。

「責任をもって売るのが農協の役割」と話す秋田ふるさと農協の小田嶋契組合長(秋田県横手市)

 各地を見渡せば、むしろ農協が旗をふり、飼料米の作付けを増やしているケースが少なくない。なぜ小田嶋氏は流れに乗らず、組合員たちに飼料米をつくらせようとしないのだろう。わけを聞くと、答えは「あれに手を出すと、経営のなかに補助金が大きく入り込んでしまう。そんなの経営のていをなさないじゃないですか」。正論だろう。

 もちろん、どうしても飼料米をつくりたいという農家を止めることはできない。その結果、政府備蓄や加工米に回る分も合わせると、主食のコメの今年の生産量は去年より2000トンほど減る見通しだ。それでも「とくに大きく減ったわけではない。許容できる範囲内」という。主食のコメの生産量の4万トンと比べると、わずかな量だからだ。

 補助金の誘惑にあらがう背景には、販売戦略上の理由もある。「コメの消費が減るなかで、売り先の確保に懸命に努めてきました。もし飼料米を増やして主食米の生産を減らしたりしたら、すぐにほかに奪われてしまう。そんな販売網を狭くするようなことはしません」。じつにシンプル。やっていることに迷いがないから、回りくどいいいわけが必要なくなるのだろう。

 こういう発想の人だから、2018年に迫った主食のコメの生産調整(減反)廃止に対する考え方もふつうとは違う。政府が減反廃止の方針を固めたのが2013年秋。その直後の11月、東京にある大手米卸のヤマタネの本社を訪ねた小田嶋氏は、山﨑元裕社長にこんなことを話した。「考えてみれば、約40年前、先輩たちは減反に反対していた。そのときの悲願が達成されるということだ」。山﨑氏は「いままでできなかったことに挑戦しよう」と応じた。

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「我々は札束でほおをたたかせない!」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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三品 和広 神戸大学教授