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破綻トマト事業を再生したガス会社「連鎖戦略」

「栽培は事業の一部」という視点こそ必要だ

2016年10月21日(金)

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買収後、「廃虚」から再生したエア・ウォーターのトマト農園(北海道千歳市、エア・ウォーター提供)

 今回もまた企業の農業参入について考えたい。紹介するのは、産業ガス大手のエア・ウォーターだ。2009年に北海道千歳市のトマト農園を買収し、農業に参入した。この農園が2016年3月期についに黒字化した。ちなみに、冒頭でエア・ウォーターのことを「産業ガス大手」と表記したが、必ずしもそれでは同社を言い尽くすことはできない。そのことが、今回の取材を通してわかった。

3度目の正直

 エア・ウォーターが買い取ったのは、農業界ではよく知られている因縁の施設だ。もともと運営していたのはオムロン。オランダから輸入した7ヘクタールの巨大な施設は、1999年に稼働したとき、日本の農業を変える画期的な事業ともてはやされた。だが、栽培を軌道に乗せることができず、およそ3年で撤退。その後、宮崎県の造林会社が引きついだが、2008年に母体の事業停止に伴い、破綻した。

 エア・ウォーターが買い取ったとき、施設は「廃虚」のように荒れはてていた。同社は「3度目の正直」の挑戦を乗り越え、どうやって赤字状態から脱したのだろうか。

 要因の1つは、徹底的なコスト削減だ。通年収穫が売りの施設だったが、オランダと違い、寒暖差の大きい千歳市では冬の暖房費がかさむことがネックになっていた。エア・ウォーターは思い切って通年収穫をやめ、12月から翌1月までは比較的低温ですむ育苗期間とし、経費を削減した。

 これだけだと施設の本来のポテンシャルに目をつぶる消極的な対応にみえるかもしれないが、もっと大きいのは育てる品種と販路を多様化したことだ。以前はカゴメに出荷するスーパー向けのトマトが中心だった。これに対し、2014年からファストフードや外食チェーンに売る大玉のトマトもつくり始めた。糖度はそれほど高くないが、スライスしやすいのが特徴だ。

 自分たちで販路を開拓し、売れるものをつくろうという発想は、戦略上、当然のことに映るかもしれない。赤字続きの経営を受け、「このままではまずい」と考えたうえの決断だった。だが、そこは農業らしく、最初は苦労した。つくり方を理屈ではわかっていても、成育にはどうしてもバラツキが出る。売り先に「こうなってしまいました」と伝え、「ちょっと待ってよ」と注文がつくこともずいぶんあったという。

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「破綻トマト事業を再生したガス会社「連鎖戦略」」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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