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理解力のある上司なんていらない

データを重視するとつまらなくなるわけ(都築響一さん 第3回)

2016年5月20日(金)

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『ポパイ』には編集会議はなかった

川島:都築さん、もともとはマガジンハウスの「ポパイ」の編集者だったんですよね。

都築:そう。1976年から10年くらい、社員じゃなくて大学生時代にアルバイトから入って、そのまま大学卒業してからもずーっと編集者をやっていました。

川島:ということは、まさに創刊からですね。その頃の雑誌作りってどんな風だったんですか?

都築:他の雑誌のことはわからないけど、「ポパイ」の編集部は凄く楽しかったですね。他のみんなが読んでいる雑誌とは違うものを作りたいという意識がみんな強かったから。それで、編集部で決めたことがいくつかあったんです。

 まず、若い女の子のグラビアは出さないと。それからクルマのことはやらない。当時の大半の男性誌は、若いもん向けからおじさん向けまで、男の関心事と言えば、「女とクルマとセックス」って考えているおっさんたちの手で作られていたからです。じゃ、そっちはやめておこう、と。

都築響一
1956年、東京生まれ。76年から86年まで「ポパイ」、「ブルータス」で現代美術や建築、デザインなどの記事を担当。89年から92年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行した。自らカメラを手に、狭いながらも独創的な東京人の暮らしを撮影した『TOKYO STYLE』や、日本全国の奇妙な名所を訪ね歩く『珍日本紀行』の総集編『ROADSIDE JAPAN』で、既存メディアが見たことのない視点から現代社会を切り取る。97年に第23回・木村伊兵衛賞を受賞。97年から2001年にかけて、アマチュアの優れたデザインを集めた写真集『ストリート・デザイン・ファイル』全20巻を刊行。その後も現在に至るまで、秘宝館やスナック、独居老人など、無名の超人たちに光を当て、世界中のロードサイドを巡る取材を続行中。(写真:大槻純一)

川島:今までにない雑誌を作るってことに対して、社内の上司、つまりおっさんたちは反対しなかったのですか?

都築:今思うと、当時の編集長は40歳くらい。おじさんです。新しいことを提案しても、普通は「わからないからやめとけ」ってなるじゃないですか。ところがその編集長、たいしたもんで、自分がわからないことも、編集の部下たちの思うがままにやらせてくれたんです。「編集の皆がそんなに面白がっているんだったら、俺わかんないけど、20ページやるから作ってみろ」みたいな感じで。

川島:すごいですね。いまだったら、編集会議を延々やってつぶされちゃいそうな。

都築:普通だったら、わかるように説明しろという話になるでしょう? でも、説明って結局、データが必要で、今の若者たちの何パーセントが興味を持っているとかになってくる。

 でも、データが集められるテーマって、要するに既に誰かがやっている過去の話なんです。その時点でもう遅いわけです。僕らが作る「ポパイ」って雑誌は、誰もやっていないことをやるんだから、データ化できるような分野にテーマがあるわけはない。

川島:言われてみればその通りですけど、「現場にいない上の人」はたいがい「データで論拠を示せ」と言いがちです。

都築:そもそも新しいことって「既に面白いってわかっている」からやるわけじゃないですよね。まだ誰もアプローチしてないからこそ新しいんだから。とりあえず「面白そう」だからやってみるんです。

 誰かが取り上げたものは、それなりに内容がわかっている。けれども、誰もやっていないものは、内容がわからない。自分でドキドキしながらやってみる。そこがまず「面白い」わけじゃないですか。で、わからないなりに作ってみてはじめて、「ほら」って人を驚かせることができる。そういうことって作る前に説明しても意味がない。説明できないし。だから、新しいことをやる現場に「理解力のある上司」なんていらない。

川島:えっ、理解力、なくていいんですか?

都築:だって理解できなくて当然だもん。データで説明できないのが新しいことだから。そもそも当時の「ポパイ」には、編集会議ってなかったんです。

川島:編集会議がない! じゃあ特集なんかも会議なしで?

都築:うん。編集長に「今度こういう企画やりたいんですけど」「いいんじゃない」「じゃ、やります」でおしまい。

川島:すごい話だ。でも、特集の中身次第で、雑誌って売れたり売れなかったりってあるじゃないですか。都築さんが担当した特集の号が売れなくって、編集長から叱られること、なかったんですか?

都築:当時は、雑誌の売れ行きの数字って1週間くらいで出てきたんです。それが毎週、営業から編集長に届けられるんですが、その数字を編集長は絶対に僕たちに見せなかった。完売しても褒められなかったけど、売れなくても怒られなかったんです。

川島:なんてかっこいい……。

都築:編集長に怒られるのは、売れなかった時じゃなくって、企画を出した時に「お前、この企画、ほんとに面白いと思って出してるのか」と聞かれて、つい「えーと、まだ誰もやってない企画なので、読者が面白いと思うか、売れるかどうか、ちょっとわかりません」なんて気弱な発言をしちゃった時。

 「おい、読者の顔色なんてうかがうんじゃない。ほんとに面白いと思ったものだけ、とことん行け。売れなくて頭下げるのは、こっちの仕事だから、お前が面白いって心底思わないんだったらやるな」って怒られた。その編集長から教わったのは「読者層を想定するな、マーケットリサーチをするな」ということ。自分の知らない誰かのためでなく、自分のリアルを追求しろと。

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「理解力のある上司なんていらない」の著者

川島 蓉子

川島 蓉子(かわしま・ようこ)

ifs未来研究所所長

ファッションという視点から、さまざまな分野の企業のブランド作りなどのプロジェクトにかかわる。日経MJ、ブレーン、読売新聞などで連載を持つ。2013年から現職。多摩美術大学非常勤講師。Gマーク審査委員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師