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iPhone工場招致に大金をかける価値があるか

2017年3月1日(水)

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(写真:ロイター/アフロ)

 かつて私が自動車メーカーで働いていたとき、調達部門に属していた。新車の開発と同時に、サプライヤーの価格を調査する。多くの日本メーカーでもそのように、日本の調達部門は世界各地の生産地における調達先の決定を手がける。

 単純な相見積もりだけではない。輸入時のコストもシミュレーションする。また、一部の構成部品だけ輸入したらどうなるか、なども試算する。手段を変え、最も安価な方法を模索するのだ。私の自動車メーカーでの経験とはいったものの、これはどの業界でもやっている。

 そこで、当たり前のことに気づいた。製品1について、国Aと国Bで見積書を入手するとする。国Aのサプライヤーが安価だとする。そうすると、類似製品2とか類似製品3とかでも、同じ結果になる。突如、類似製品3だけ国Bが安いといったことは起きない。

 これはもちろん極論である。

 例えば、特定の形状を生産する機械だけコストが高いとか、あるいは、どうしても受注したかったのでマージンを削ってきたとか。そういう理由で逆転することはある。しかし、それらは例外的なことで、あまり本質ではない。

 そうしているうち、相見積もりを取るまでもなく、結果が予測できるようになる。いったん弱くなった国は、そのあともずっと弱くなる。いったん強くなった国は、永劫ではないが、その後もずっと強い。そして弱くなった国で、それらの企業は倒産していき、そもそも検討先にも入らなくなっていく。

 私は経営学者でもなく、コンサルタントでもなく、一人の実務家として、漠然とではあるが「産業の栄枯盛衰とは、不可逆なものなのか」と感想を抱くにいたった。

iPhoneにかける情熱

 先日、ニューヨーク・タイムズが興味深いレポートを公開した。一読の価値があるだろう。

 タイトルは「いかにして中国はアップルのパートナーとして“iPhone-City”を創るために巨額を投じてきたか(How China Built ‘iPhoneCity’ With Billions in Perks for Apple’s Partner)」というものだ。アップルのiPhoneは、「デザインはカルフォルニア、アッセンブリーは中国(Designed by Apple in California, Assembled in China)」で行われていることが知られている。アッセンブリー企業の筆頭はシャープ買収でも脚光を浴びた鴻海(ホンハイ)精密工業だ。中国・鄭州市では1日50万台のiPhoneを生産できるというが、それは一日で達したものではなく、行政との連携や、税制、助成金、などさまざまな努力の結果だった。

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「iPhone工場招致に大金をかける価値があるか」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員