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震災で露呈したクライシスマネジメントの重要性

ゼロリスク信仰からの脱却が必須

2016年4月27日(水)

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 熊本を襲った震災が、いまだに影響を及ぼしている。アイシン九州は開閉時のドアの動きを調整する「ドアチェック」を生産しており、同社が被災したことからトヨタ自動車の生産をストップさせた。トヨタだけにとどまらず、日野自動車の生産をストップさせるにもいたった。しかもグループ外である三菱自動車も影響外ではなかった。同社の水島製作所では同じくアイシンの影響でラインがストップした。

 そのほか、ダイハツ工業は京都のラインなどが止まっている。この熊本の震災は、あらためてサプライチェーンが複雑化していることを浮き彫りにした。

 遠いところでは、九州の被害によって、米ゼネラル・モーターズ(GM)も生産を中断せざるを得ないと発表し、それによって株価が下がった。GMでは、ガソリン価格が下がったために、SUV(多目的スポーツ車)やトラックに代表される大型車の販売が比較的好調だった。これに対し、GMが止めるラインは、セダンを生産しているものとみられる。しかし、その工場の数はスプリングヒルをはじめ4カ所にものぼる。生産中止は2週間を予定しており、長い。通期の業績には影響を与えないのではないか、と希望的観測が述べられたものの、打開策は必要だろう。

サプライチェーンの進化と課題

 とはいえ今回、熊本震災のあと、ただちに各社がその影響を把握したのは、やはり一次取引先のサプライチェーンマップが充実していたからだろう。GMは、日本に持つのが二次・三次サプライヤーが主流であったため、やや影響を把握するのが遅かったのかもしれない。ただ各社とも、震災のあとに自社の生産に対する影響がどれほどか、情報をつかむスピードは上がっている。

 リスク管理の言葉で、「クライシスマネジメント」がある。これは、サプライチェーンでも使われる。震災発生後の対応を指す言葉だ。つまり、リスクをすべて0(ゼロ)にすることはできないものの、発生後に素早くバックアップすることは可能だという思想にもとづいている。そして、クライシスコミュニケーションとは、震災等が発生した際に、企業間で情報を積極的に開示していくことだ。

 実際に、アイシンやトヨタのみならず、今回の熊本地震においては、企業間の情報伝達が素早く行われた。各社とも海外調達先に代替生産を依頼したり、あるいは同一サプライヤー内の違う工場で生産したりしている。この動きが早かったのは事実だ。

 アイシンがトヨタのラインをストップさせたことについて、「サプライチェーンは進化していないのではないか」と声が挙がったものの、たった数日で復旧のめどをつけた事実に私は驚愕する。工場はモルタルが剥がれ落ち、設備が横転し、クレーンが落下し、金型の移動もできない状態だったのだ。

 著者はサプライチェーンと調達・購買業務にこれまで従業してきた。正直に申せば、かつては取引先企業をとにかく素早く生産復帰させて、自社の生産をつなぐことしか考えていなかった時代もあった。しかし、今は各社とも、自社のみならず取引先企業の人命優先をかかげている。単純にかつてと比較できない側面がある。

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「震災で露呈したクライシスマネジメントの重要性」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官