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万引きしそうな顔をAIで認識するのはダメか

2017年7月26日(水)

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(写真:ロイター/アフロ)

 子育てをしていると、人間の成長をあらためて感じる。産まれたばかりのころは、そもそも<じぶん>という認識すらない。哲学者の永井均先生の言葉でいえば「私」といってもいいし、自我の中心といってもいいかもしれない。それが、そのうち、モノを見る<じぶん>、モノを触る<じぶん>、何か泣き声を発する<じぶん>というものに気づきはじめる。

 そして、大人たちの顔を見ながら、怒ったり、泣いたり、喜んだりする、顔の筋肉の動かし方などを学びはじめる。どういうときに笑うべきか、と。意味はわからない。でも、こういうときには笑うんだ、と体得し、そして、嬉しいときに笑うという意味を後づけで覚えはじめる。

 言葉も結局は後づけで、青くて丸い愛嬌あるキャラクターを見ると「ドラえもん」というようになり、肌色のまんまるは「アンパンマン」という。「ちょうだい」といえばなぜか大人たちがモノを渡してくれ、その重なりのなかで「頂戴(ちょうだい)」の意味を知ることになる。

 なぜだかわからないが、「そういうものである」と経験を重ねることで成長していく。

調達品の価格査定における機械学習の応用

 本業でこのところ機械学習を試行している。私の分野では、たとえば、製造業における調達品の価格査定に機械学習を取り入れている。これまで、価格査定は原価計算によった。

 金属加工品を査定するとしよう。原材料はいくらか、削りの加工賃はいくらか、労務費はいくらか、金型や治工具、そして物流費や粗利益はどれほどか……。それらを計算して、推論していた。

 しかし、いまでは簡単なプログラミングで価格を査定できる。専門的な内容なので細部は省略するものの、言語Pythonなどを使えば、いくつもの回帰分析アルゴリズムを使って機械学習が可能だ。これまでの調達品のリストを読み込ませる。ある金属加工品は、こういう仕様でいくらだった。他の金属加工品は、こういう仕様でいくらだった……。そして学習させたのちに、未知の金属加工品価格を予想させる。すると、かなりの精度で価格を予知できる。

 ただ困ったのは、精度や所要時間ではなく、違った点にあった。問題は「なぜその価格だと推論したのか」がわからないのだ。いや、もちろん、アルゴリズムを読み解けば理解できなくはない。学術的な論文も多く出ている。それでも、現場の調達担当者は研究者ではない。上司から「なぜこの価格で決定したのだ」と訊かれ、「AIがこういっています」では説明にならないかもしれない。あるいは学術論文を引き合いに「こういうアルゴリズムで計算したら、この価格と思われます」という説明でも、上司からすると煙に巻かれた気がするかもしれない。

 これは機械学習の問題ではなく、使う側の問題だ。笑うのはたやすいが、意外に根が深い。子どもの成長とちがって「そういうものである」とは納得してくれないらしい。

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「万引きしそうな顔をAIで認識するのはダメか」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官