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新国立競技場のずさんな見積もりから何を学ぶか

2016年9月14日(水)

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新国立競技場の外観イメージ(日本スポーツ振興センター提供)

 今、東京は「ずさん」の嵐が吹き荒れている。豊洲市場の盛り土工事や、2020年東京オリンピックのメインスタジアムである新国立競技場の建築費が、「ずさん」の真っ只中にある。「ずさん」とは「手抜き」を意味する。

 後者の新国立競技場の問題は、「ずさん」な見積もりが引き起こしたともいえる。企業の事業活動において、ビジネスパーソンはあらゆる場面で見積もりを取得する機会があるだろう。調達・購買業務に携わっているのであればなおさらだ。では、「ずさん」と称される見積もりから自社を、そして自分自身を守る手段はあるのだろうか。新国立競技場の問題から、何を学べば良いのかを考えてみる。

根拠がなくても妥当性のある数字は必要

 新国立競技場の建設費用の総額は、まさに大きく上下している。2014年4月に発表された「2020年 オリンピック・パラリンピック競技大会 招致活動報告書」では、開催都市立候補に必要な申請ファイルの中に「オリンピックスタジアムの概要」として、申請ファイル作成時と注記がありながら建築費用は1000億円と記載されている(2012年2月)。まず、この1000億円の根拠だが、申請ファイル作成時には、新しいスタジアムの計画は白紙状態。金額算定の根拠が全くない状態だった。

 国内で同規模のスタジアムといえば、2002年日韓共催サッカーワールドカップで決勝戦が行われた日産スタジアム(横浜国際総合競技場)があり、その建築費用は603億円といわれている。この時点の1000億円は、見積積算の根拠がないから「だいたいこれくらいあれば、立派なスタジアムができるだろう」程度と類推する。

 結論として、この1000億円に確固とした根拠はない。この時点は、オリンピックを開催するかどうかもわからない段階であり、ずさんと指摘するにはあまりにも早計だ。当時からさかのぼって20年前に、同じ首都圏で建設された日産スタジアムの建設費用を参考に、1.5倍ぐらいであれば収まるだろうと判断したのは容易に想像できる。

 オリンピック招致委員会のメンバーには、スタジアムに代表される建築物の専門家も含まれていたはずだ。しかし、まだ詳細どころか概略計画もない中で、建築に要する費用の見積もりを行うのは不可能だ。この段階で「申請ファイル作成時」との注記をもって1000億円と推計した数値を算出したのは極めて妥当だ。そして将来予見されるさまざまな変動要因への対処方法を、算出した金額とともに明示すれば良いのである。

デザインと予算のミスコミュニケーション

 東京への招致が決定する約10カ月前の2012年11月、新国立競技場基本構想のコンクールで、英国の設計会社の作品が最優秀賞に選出された。今となっては幻となった流線形のデザインである。翌2013年度予算案に、改築準備費として約21億円が計上され、総工費約1300億円と発表された。当初の1000億円対比では30%アップ。デザインが決定して初めて示された建築費であり、新国立競技場建築費用は、実質的に初めて算出された金額だ。

 そして同時に混乱が始まる。実は1300億円は、国立競技場の運営主体である日本スポーツ振興センターの予算だったと判明する。約9カ月の後の10月になって、実は建築には3000億円が必要であることがわかった。それも、この事実がデザイン採用後に判明したと発表されたのだ。計画自体は規模を縮小した新デザインで公表され、想定される建築費も1625億円まで減額された。しかし、規模を縮小した案でもゼネコンが見積もりをした結果、3000億円を超える数値が提示され、問題はどんどん大きくなった。

コメント4件コメント/レビュー

今回1000億だと言ったのは発注者で発注側の要望に沿って業者が積算したら3000億になった訳でそこは分けて考えていただきたいなと。
最初から手抜きだなんだと言われてたら業者の立つ瀬がないですよ。(2016/09/14 17:30)

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「新国立競技場のずさんな見積もりから何を学ぶか」の著者

牧野 直哉

牧野 直哉(まきの・なおや)

未来調達研究所取締役

2012年、未来調達研究所取締役就任。現役バイヤーの立場から情報発信を行い、企業の調達・購買部門における取引先管理・サプライヤーマネジメントの専門家。調達・購買の現場に根ざした理論構築を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

今回1000億だと言ったのは発注者で発注側の要望に沿って業者が積算したら3000億になった訳でそこは分けて考えていただきたいなと。
最初から手抜きだなんだと言われてたら業者の立つ瀬がないですよ。(2016/09/14 17:30)

オリンピック開催に伴う各種施設の建設は、全て同じような経緯で決定され、そして予算を大幅消化した経費で対応される。その超過分は一体誰が負うのか?超過した責任は誰が負うのか?
無責任極まりない関係者が、予算を無視した決定をした結果であり、それら関係者全員が責任を撮って超過分の経費を税金以外のお金で埋めるべきである。それを、関係者は全員が逃げまわっているのが実情。全てが、政治の無責任で膨れ上がっている国の超赤字、年金不足などと密接に連携している。ここで取り上げるべき事は、誰に責任があり、超過分の費用をどうまかなうのかを追求していくことである。(2016/09/14 15:01)

これは典型的な詐欺ですよね、自分の家を建てる当初の見積もりが1千万だったからOKしたのに、家を壊し始めたら資材の高騰や人件費がかかるからとかで3千万かかると言われたら納得しないですよねふつう。こういった業者の場合、建て終わった後の請求は6千万位になりそうですね。しかも手抜き工事で。(2016/09/14 10:08)

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