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年収3万の農民に未婚の母、中国貧民の向かう先

2017年11月22日(水)

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(写真=山田 泰司)

 コンサルタントをしていると、つねにn数が話題になる。調査報告書をまとめる。世界の現状、潮流。そして打つべき施策。その論理に説得性と納得性をもたせるのは、つねに母数だ。「サンプル数は何人か」「それは一部の事象にすぎないのではないか」――。そういった質問と無縁だったことはない。だから多数の傾向から、なんとか現状を抉り出す結論を導く。

 しかし、コンサルタント自身がわかっているのだ。世の中がそれほど単純ではないと。そして、わかっているのだ。複雑な世界において、それを統一して記述できるほどの明確さは存在しないと。それをわかりつつコンサルタントは、さらに自身の論理性やデータを増すことでしか業務にあたることはできない。

 それなのに世界は、ずっとその論理世界からいたずらっぽく網の目を抜けて、ひとびとが想像できるていどの意味をはるかに超えていく。データを大量に集めた報告書よりも、たった一つの、n=1の個体のほうが、はるかに何かを訴える場合がよくある。

 たいしたエピソードではない。

 以前、ベトナムで日本へ招聘する実習生の面接を手伝った際の話だ。

 ベトナムの若者8人のなかから、2人を選抜しようとしていた。彼らは数カ月の日本語教育を経て、自己紹介を語り、そして日本での夢を語る。たどたどしい日本語で、語る内容はそれほど高度ではない。日本で技能を身につけ、そして帰国してやりたいことを述べる。

 ほとんどの受験者は型通りの受け答えをする。「必死で頑張る」「親も応援してくれている」「真面目なのが取り柄です」。テンプレートに飽きた私は、「帰国したら、自動車関連企業を興したい」と語る一人に、「じゃあ、預金の使いみちは」と聞いた。すると彼は「アマダのベンディングマシンを買う」といい、隣にあったパソコンでそれを調べて私たちに見せた。その後、「3年働いたお金でこれを買います」。そして、いくらで買えるはずだ、と述べた。

 もちろん彼をベトナムの若者代表として描くことはできない。ただ、ベトナムを彼のような若者が支えていき、そして、試行錯誤のなかから自動車のサプライチェーンに介在する企業群が生まれる、と予想することができた。

 「ベトナムは自動車輸入関税が高く自国産業が守られてきた。しかし、AEC(アセアン経済共同体)への加盟によって関税が引き下げられる。そうすると、ベトナムの自動車産業は斜陽していくだろう」――といったような、マクロな観点から語られる経済解説とは真逆の、しかし、はるかに実感を伴った理解を私には与えてくれる。

コメント14件コメント/レビュー

私は中国人の妻を持ち、10年以上中国(上海・北京)に住んでコンサルティングをしていますが、自分では中国人の事を理解しているとは思っていません。中国人の友人も多い方だとは思いますが、殆どが高学歴で、英語や日本語などの外国語も喋れるホワイトカラー層との接触に限られているからです(殆どの日本人駐在員も同じ様な状況だと思います)。いわゆる農民工の人と話をした事もなく、人口の半分を占める農民を理解しない限り、中国人が分かっているとは言えないと常々思っていたからです。もちろん『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』でも“n”は多くありませんが、筆者の農民工に対する興味と人間関係の中で、非常にリアルに農民工の生活を垣間見る事ができました。是非次作は逆に富二代と言われる様な、中国のとてつもない金持ちの世界もリアルに描いて欲しいです。(2017/11/29 21:42)

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「年収3万の農民に未婚の母、中国貧民の向かう先」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

私は中国人の妻を持ち、10年以上中国(上海・北京)に住んでコンサルティングをしていますが、自分では中国人の事を理解しているとは思っていません。中国人の友人も多い方だとは思いますが、殆どが高学歴で、英語や日本語などの外国語も喋れるホワイトカラー層との接触に限られているからです(殆どの日本人駐在員も同じ様な状況だと思います)。いわゆる農民工の人と話をした事もなく、人口の半分を占める農民を理解しない限り、中国人が分かっているとは言えないと常々思っていたからです。もちろん『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』でも“n”は多くありませんが、筆者の農民工に対する興味と人間関係の中で、非常にリアルに農民工の生活を垣間見る事ができました。是非次作は逆に富二代と言われる様な、中国のとてつもない金持ちの世界もリアルに描いて欲しいです。(2017/11/29 21:42)

共通の庶民の心の温かさに関しては、この記事の読者に少なからず中国駐在経験者がいるので、今更という気もするが、小生も一つのエピソードを。上海の猛暑の夏日、日本人としては珍しく電動自転車を乗り回していた私だが、スーパーの駐車場でU字型駐車鍵前の鍵が折れてしまった事がある。炎天下、JAFなど無い街中で途方に暮れていた時、近くの五金屋(荒物屋兼鍵屋)の主人が、黙って金鋸を差し出してくれた。汗だくになって、ようやく鍵前を切断し、店に折れてしまった金鋸を返し、代金を払おうとすると、ただ手を振り、笑って「困ったときはお互い様だ。金など要らない。」と言った顔を忘れる事が出来ない。中国からの訪日観光客のリピーターとなる理由の一つが、日本人の心根の温かさに触れたからというものだそうだが、彼等の持つ心底の温かさとの共通点を見つけたからではないかと、私は思っている。(2017/11/24 14:25)

資本論は思想書ですか。エンゲルスの著作が思想書なのではないですか。
いずれにしても、魯迅の小説の世界が再び中国の農村で繰り返され、彼らの反乱を恐れて中国政府は取り締まりに力を入れる一方で、政策的な対応を真剣に検討しているという。
資本家を追い出した労働者の代表が結局、資本家の地位を占め安住しているのは、ほかの社会主義国と同じで、早晩、崩壊するのだろうと思う。それを期待する。(2017/11/22 14:13)

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