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東横線の乗客は上海にいる怖い顔の自分そっくり

日本と中国が最近似てきたなと思う件。その2

2017年3月30日(木)

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ブロックを積み上げられ封鎖されたラーメン屋。モチモチとした麺が絶品のトマト玉子麺がおいしかったのだが

 3月半ばのこと。1カ月ぶりに上海の自宅に戻ると、家の前にあった韓国料理屋が2階建ての建物ごと消えていたので驚いた。食レポサイトでも評価の高い繁盛店だったのでなおさらだ。アパートの守衛さんに聞くと、喫茶店の経営許可で韓国料理屋をしていたのが発覚>閉店>取り壊し、という運びになったとのこと。

 上海では今年に入って違法商店の取り締まりを強化していて、この店の他にも、昨日食べに来たラーメン屋が今日来てみたら入り口にブロックを積み上げて封鎖されていたということにも遭遇した。そのラーメン屋にも、違法を理由に営業停止したのだとする当局の通知が貼られてあった。

 いずれも店側に落ち度があったようなので、おそらく閉鎖は正当な処分なのだろう。ただ、我が家の窓から、わずか1カ月で更地になってしまった韓国料理屋の跡地を眺めながら、日常生活の中で中国の強権的な側面が顔を覗かせることが最近また少し増えているようだと私は感じている。

 それにしても、お役所の要請に応じて解体業者がおびただしい数の作業員を連れてすぐさま駆けつけ、瞬く間に取り壊してしまうのには恐れ入る。震災の復興や東京五輪の需要で空前の人手不足にあるという日本の建設業界に中国の彼らを送り込んだらさぞ重宝されるだろうと茶化したくなる。

 ただ一方で、誰でも叩けば多少のホコリが出る程度の理由で店を閉鎖し取り壊してしまったり、町の美化だと号令をかけて突然、町中の商店の看板の付け替えなどを始めたりする様を見ていると、当局が、強権の仮面の下に苦悩する顔を隠しているのも分かる。作業員らがすぐに集まれるのはなぜか。それは、彼らに仕事が無いからだ。つまり、無い仕事を当局が無理矢理作っている側面が大いにある、ということだ。それほどまでに、中国経済の実態は綱渡りなのかもしれない。だからといって、店を壊される側はたまったものではないが。

独自の判断で睨みと舌打ちの嵐

 さて、1カ月上海を留守にしている間何をしていたのかというと、日本で毎朝8時10分台に東横線に乗り、日本での仕事場に借りている横浜のコワーキングスペースまで通勤する生活を送っていた。帰国時に数日、通勤ラッシュの電車に乗り合わせることはこれまでもあったが、1カ月というまとまった期間、首都圏の通勤電車を利用するのは埼玉の自宅から東京の大学に通っていた大学生の時以来で、かれこれ30年ぶりといったところだ。

 当時利用していたのとは違う路線なので単純に比較はできないが、混み具合は当時の8割程度といったところで、30年前よりはずいぶん緩和されたという印象を持った。それでも、車内で立ちながら新聞や雑誌を開いて読むのは無理、曜日によってはスマホをチラ見するのも難しいという程度に混んではいた。とはいえ、体が斜めに傾いたままつり革にもつかまれずに身動きできず固まっているしかなかった当時よりはやはり十分にマシになった。

 それなのに、わずか20分足らずの通勤電車で私は毎朝グッタリと疲れてしまった。電車に揺られている間、片時も気を抜くことが許されないと感じさせられたからである。

 30年ぶりに通勤電車を利用するに当たり、私は周到に心配りをしたつもりである。リュックは間違っても背中に担がず、周囲の邪魔にならぬよう手で持つ。立った場所が入り口付近であれば、ドアが開いたら速やかにいったんホームに降りる。そして、万が一にも痴漢の疑いをかけられぬよう、荷物を持つ手の甲が女性の体に触れぬよう細心の注意を払う。目的地の駅に降りてからも、エスカレーターの右側に流れ着いてしまったならば、立ち止まって左側に移動するなどという愚かなことはゆめゆめせず、流れに乗って右側を速やかに歩いて登る。

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「東横線の乗客は上海にいる怖い顔の自分そっくり」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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