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新幹線開通で農村に届いた鄧小平のフランスパン

上海ディズニーと格差(2) それでも中国の若者は都会にしがみつく

2016年4月28日(木)

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新幹線開通に伴い、駅からほど近い場所にあった何もなかった農地に突如として摩天楼が出現した。中国の農村ではいま、同じような現象が各地で起こっている(安徽省蕪湖)

 安徽省の田園地帯にあるシュン(24歳)の故郷にまだ新幹線が通っておらず、上海に来るには長距離バスに乗るしかなかったころ、シュンが食べていた食パンは、上海で買ったものであろうが彼の田舎で買ったものであろうが等しくロウソクの味がしたものだ。

 バターの真ん中に爪楊枝で穴を開け底にティッシュで作ったこよりを通して火を付けると、ロウソクとして使えるので災害時に便利だという話は聞いたことがある。一方で、バターの代わりにロウソクを使ってパンをこしらえるなんて話は聞いたことはないが、思い当たるところならある。おおかた、出所の怪しいマーガリンを使ってパンを焼いていたというところなのだろう。

ドブ油で作ったマーガリン

 出所が怪しいとは、下水に流した廃油をすくい集めて精製した再生油、中国語で「地溝油」、日本では「ドブ油」「下水油」と呼ばれるニセ油のことである。メディアの調査で、このドブ油を調理に使っている飲食店が想像以上にあることが伝えられ大きな社会問題になったのは2010年のことだが、それ以前にも存在はささやかれていた。

 そして、このドブ油から作ったラードやマーガリンも多いとのことだ。2010年当時、中国では「10回外食したら1回はドブ油に当たる」とまことしやかに言われていたぐらいなので、ロウソクの味のするパンに出所の怪しいマーガリンが練り込まれていたものだってあったのだろうと考えるのも、あながち突飛なことではない。

 私がロウソクの味を知っているのは、幼年時代のある日、舐めてみたことがあるからだ。

 クリスマスが近づいたその日の昼下がり、母が押し入れの奥から小ぶりのクリスマスツリーや、スパンコールでキラキラと輝くモールとともに、サンタクロースや筒の形をしたものを取りだしてきた。なかでも茶筒ほどの大きさをしたオレンジ色のそれは、オレンジ味のカルピスを冷やして固めたようで、なんともおいしそうに見えた。これは何? と尋ねると母は、「ロウソクよ。停電の時に使う白いロウソクがあるでしょう? あれと同じもの。クリスマスの夜にはそのロウソクを灯してサンタクロースを迎えるのよ。ロウソクをつけて明るくしておかないと、サンタさんはプレゼントを入れる靴下がどこにあるかが分からないでしょう?」と言う。

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「新幹線開通で農村に届いた鄧小平のフランスパン」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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