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北京の地下住民「ネズミ族」と止まらない格差

上海ディズニーと格差(4) 「持つ者」の心の葛藤と現実主義

2016年6月9日(木)

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 ジンジン(26)から去年の秋、「弟のハンション(23)が北京で地下室アパートの経営をするようになった」と聞かされた時には、へえ、あの出前の仕事も続かなかったハンションが、今やアパートのオーナーになったのか、成功したものだ、結婚も決まったし、出稼ぎ労働者として身を粉にして働いてきた両親もこれで一安心だろう、とまず思った。

 上海で働く両親と離れ、祖母と2人で暮らしていた安徽省の農村にある自宅で私が初めてハンションに会ったのは彼が中学2年生の時だった。その後、大学に進んで欲しいという両親の希望に反し、「勉強が嫌いだから」と高校にも進学せず両親のいる上海に出て来て飲食店の出前など短期間で職を転々とした彼だったが、専門学校ぐらいは出ていないとどうにもならないと周囲に説得され、田舎に戻って自動車修理の専門学校に進み、内陸の重慶で米国の自動車会社系列の自動車修理工場に修理工として就職した。

 堅い仕事に就いたと周囲が喜んだのもつかの間、長時間の重労働に耐えられずすぐに辞めてしまった。ちょうどそのころ、北京で駐車場の管理の仕事を請け負う会社を立ち上げた親戚が見かねて、北京に来いと声をかけてくれ、その仕事を手伝うようになったが、今度はいつまで続くのだろうかと両親は案じていた。

 このような経緯を知っていただけに、ハンションがアパートの経営をするようになったと聞いた時には、反射的に、ああ、北京での生活は順調なのだな、学歴もないのによく短期間で頭金を貯めて中古のアパートが買えたものだ、よく頑張っているなと、単純に彼の今の境遇を喜んだのだ。

 ただ、少し落ち着いてから、ジンジンの言葉を改めて反芻してみた。アパートはアパートでもハンションが経営するのは「地下室」だという。「地下室」という言葉が、私の口の中にザラリとした苦いものを残した。

 中古のアパートを購入しそれを貸しに出しているのだろうと勝手に思い込んでいたが、どうやらそうではないらしい。

 北京の地下室のアパートは、お金さえあれば買える、という類いのものではない。「権力」というにはいささか大げさだが、お金で買うことができない「権利」を持った人間との絡みを持たなければ、地下室のアパート経営にかかわることはできないのである。

地下室アパートの入り口と階段。暗い闇の先に部屋が並んでいる(北京市内)

100万人が地下に住む

 不動産の高騰に拍車がかり、「地上」に家を借りることができない地方出身の低所得者が、本来住居用でない地下の空間に設けられた狭い部屋に住み始めているということが最初にクローズアップされたのは、2008年の北京五輪前後のことだろうか。その後、地下居住者の数は増え続け、ピーク時には100万人にまで膨れ上がったと言われる。これら地下住民は、地下に巣を作って暮らすネズミのようだとして「鼠民」という呼ばれ方をする。

コメント8件コメント/レビュー

>「ある程度の条件が揃ったり権利が手に入ったりすると、問題を解決しようとしないでひたすら権利を行使する側に回ってしまうのが、中国の最大の問題だ」


これを中国特有の問題と笑って片付けられる人は、おそらく恵まれたご老人なのだろうと思う。
もちろん日本には過去の蓄積が残っており、そこから少なからず新しいものを作り出してはいるが、アメリカ中心の「西側ブロック経済」で儲けることができた冷戦時代や、中韓後進国の富を吸い上げることで儲けていた冷戦後期~冷戦後に対し、これからは儲けることができる人と出来ない人に二極化すると思う(と言うより、既に二極化し始めている)
過去最高益でも例年通りボーナス○ヶ月。最終赤字出しても例年通りボーナス○ヶ月。といった従来型経営の日本企業も少なくなってきており、「5年の”長期”目標」などという冗談みたいな事を言う企業も増えている。優秀な人材であればあるほど海外に活路を求めるのではないかな。
現に、自然科学系のノーベル賞受賞者の多くは、日本で研究を始め、打ち切られ、外国に渡って再開しているしね。
遠い昔の日本が、現在の中国で、行く末の日本かもしれないね。(2016/06/16 13:34)

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「北京の地下住民「ネズミ族」と止まらない格差」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>「ある程度の条件が揃ったり権利が手に入ったりすると、問題を解決しようとしないでひたすら権利を行使する側に回ってしまうのが、中国の最大の問題だ」


これを中国特有の問題と笑って片付けられる人は、おそらく恵まれたご老人なのだろうと思う。
もちろん日本には過去の蓄積が残っており、そこから少なからず新しいものを作り出してはいるが、アメリカ中心の「西側ブロック経済」で儲けることができた冷戦時代や、中韓後進国の富を吸い上げることで儲けていた冷戦後期~冷戦後に対し、これからは儲けることができる人と出来ない人に二極化すると思う(と言うより、既に二極化し始めている)
過去最高益でも例年通りボーナス○ヶ月。最終赤字出しても例年通りボーナス○ヶ月。といった従来型経営の日本企業も少なくなってきており、「5年の”長期”目標」などという冗談みたいな事を言う企業も増えている。優秀な人材であればあるほど海外に活路を求めるのではないかな。
現に、自然科学系のノーベル賞受賞者の多くは、日本で研究を始め、打ち切られ、外国に渡って再開しているしね。
遠い昔の日本が、現在の中国で、行く末の日本かもしれないね。(2016/06/16 13:34)

毎回、中国の社会問題が報じられて大変興味深い。以前から思っているのだが、「現代」中国独特の問題は中国人の社会そのものが生み出しているのであって、歴史や地理、ましてや「外国勢力」が原因ではない。歴史の逸話に恵まれている中世や古代の中国も、多かれ少なかれ今の中国と似たような国だったに違いないと思っている。(2016/06/14 08:00)

共産主義は貧富の差を撤廃するはず。なのに貧富の差や失業がある。共産主義は権力者の集金システムに成り果てた。ならば、壊してしまうのが理屈。権力者が壊されないように必死になっている。すると、かつての全体主義と同様の様相を呈する。時代に逆行した政治形態であることは明白と思うが。だから、国際的にも問題が生じている。(2016/06/09 14:50)

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