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エステ店を経営する上海のホームレス

多面的な中国の貧困、でも格差に負けない農民工

2015年6月18日(木)

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仕事場にしていた再開発地に立つ劉さん夫妻。劉さんの身に付けているものはすべて廃品回収の戦利品だ

 私の住む上海の人口は2014年末時点で2425万人。人口密度は郊外も含めた全体では1平方キロあたり3600人だが、都心部では最も多い虹口区で1平方キロあたり3万6000人、その他3万人を超える区が3つあるという。東京は最高の豊島区で2万1000人、23区平均では1万4000人だというから、上海の過密振りが分かるだろう。大型連休や年末年始になると上海市民も国内外へ旅行に出かける人が多いが、その分、中国の他の省市からの観光客が上海に押し寄せるので、1年中、人が途切れることがない。

 その上海で例年、少しだけ町が空く時期がある。毎年5月末~6月中旬、二十四節気でいうところの芒種のころ。安徽省、河南省など内陸の農村から上海に出稼ぎに来ている人たち、いわゆる「農民工」と呼ばれる人たちが、麦の刈り入れのために一時的に帰省するためだ。

 5月の最後の日曜日のこと。もう6月かとカレンダーを眺めていたら、6月6日が芒種とある。これはうっかりしていた。友人の劉さんの奥さんが麦の刈り入れで河南省の自宅に帰る前に、夫妻を食事に誘うと約束していたのに。立春、春分、大寒など日本の一般の生活の中でも馴染みのある節気はなんとなくいつごろになるか覚えているが、農業をしているわけではないから芒種などつい忘れてしまうのだ。

 慌てていつも劉さん夫妻が縄張りにしている再開発エリアに向かった。

 昨年10月、「上海に青空は戻り出稼ぎは去る」の回でも書いた劉さんは河南省の農家の三男坊で1974年生まれの今年41歳。18年前から上海で廃品回収をして生計を立てている。庶民の生活で日常的に出るペットボトルや古紙のほか、都市の再開発で取り壊された住宅から廃材や古家具、家電などを買い取ったり拾ったりして業者に売るのだ。

 ところが、P.M2.5による深刻な大気汚染の改善に向け上海当局が昨春以降、汚染をまき散らす工場を取り締まった結果、劉さんたち業者が回収したペットボトルや古紙を原材料にしていた小規模、零細工場が環境基準を満たせず、相次いで閉鎖に追い込まれた。上海の大気汚染は若干改善し、日によっては青空ものぞくようになったのだが、半面、工場向け需要の激減で、古紙やペットボトルの買い取り価格が暴落。劉さんらの収入も激減した。そこで劉さんは家電の回収に重点を置くようになったが、上海都心部の再開発が一服し、取り壊すべき旧エリアが残り少なくなる中、出物はどんどん少なくなり、劉さんの生活も徐々に苦しくなっているようだった。

 劉さんが縄張りにしている場所に行くと、劉さんが1人で、歩道に敷いたブルーシートの上にガラクタをぶちまけ、道行く人に売っていた。以前劉さんは回収したモノを業者に売るのが専門で、路上で自分で売ることはしていなかったはずだが。

コメント5件コメント/レビュー

先月まで中国に住んでいましたが、ある意味こういう生き方が許されるといった点では、日本よりストレスが少ない国だと思います。格差があそこまで大きいのと、国の情報管制はいかがかと思うことも多いですが、学べる事も多い国です。(2015/06/21 02:49)

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「エステ店を経営する上海のホームレス」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

先月まで中国に住んでいましたが、ある意味こういう生き方が許されるといった点では、日本よりストレスが少ない国だと思います。格差があそこまで大きいのと、国の情報管制はいかがかと思うことも多いですが、学べる事も多い国です。(2015/06/21 02:49)

うーん。スゴイ。たくましい。子供のためにそこまで出来る親としての凄味。何もない名入りに自分ができることを精一杯やって生きる凄さ。仕事や生活環境を軽やかに帰る柔軟さ。おみそれしました。ゆったり平和に暮らしてる自分が恥ずかしくなりますね。。(2015/06/18 15:37)

農民工の人生を、悲惨さを強調するでもなく、淡々と描く名エッセイ。われわれ日本人の中国観も、こういうレポートが増えてくれたなら、深く豊かなものになることができるのでしょうな。(2015/06/18 14:25)

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