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「そこをよろしく」が通じぬインドで当惑の鴻海

中国スタイルの成功体験が招く弊害

2016年6月30日(木)

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(写真:AP/アフロ)

 インド政府は2016年6月20日、外資の直接投資についての規制を緩和する新制度の導入を発表した。民間航空、畜産、国防、医薬品に対する投資規制など複数の項目が含まれているが、このニュースを伝えた内外のメディアが揃って取りあげたのは、単一ブランドによる小売りに対する規制の緩和についてで、今回の決定により、米アップルがインドに直営店「アップルストア」を開設できる見込みになったとの見方を示している。

アップルストア開設にメドも中古iPhone販売は暗礁

 これまでインド政府は、例えばアップルストアや家具のイケアなど単一ブランドが経営する直営店で販売する製品について、少なくとも部品の3割をインド国内で調達しなければならいとの規制を設けていた。これに対し、アップルはiPhoneなど製品製造の大半を中国で行っているため、仮にインドに直営店を開いたとしても売る製品がないということになってしまう。ただ、アップルにとって最大の製造拠点でもあり、かつ米国と並ぶ重要市場である中国が経済成長の減速で需要の鈍化が顕著になっているいま、2015年に前年比28.8%増の1億360万台のスマートフォン(スマホ)を出荷した実績があるにもかかわらず(IDC調べ)、携帯電話販売の61%をなお従来型機種、日本で言うところのガラケーが占めるなど(Gartner調べ)、スマホ市場がなおたくさんの伸びしろを残しているインド市場は、スルーできない重要なマーケットだ。

 そこで同社はインド政府とかねて交渉を進めてきたが、一進一退の状況が続いていると伝えられていた。今年5月、ティム・クック最高経営責任者(CEO)がインドを訪問してモディ首相と会談、アップルストアの開設を働きかけた直後にも、アップルだけに例外を認めるわけにはいかないとして、インド当局がこれを拒絶しアップルの計画が暗礁に乗り上げたとインドや欧米のメディアが報じていたが、インド政府は今回、部品30%地場調達のルールについて、基本的に3年、最先端製品を扱う場合には最長8年、適用を免除することを決めた。これでアップルは遠くない将来、アップルストアのインド1号店を開設することだろう。

 ただアップルストア開設とともにアップルが求めているもう1つのことについて、インド当局はなお、要求に応じていない。それは、インドにおける中古iPhoneの販売である。

 先にも触れたように、インドのスマホ市場は成長の高い潜在力を秘めており、調査会社Gartnerは今年も前年比29.5%増の1億3900万台の販売が見込めると指摘している。ただそのうち半数強を120米ドル(約1万2300円)以下の低価格品が占めるだろうとも予想している。これに対してiPhoneのインドにおける販売価格は現行モデルのiPhone 6sが6万2000ルピー(9万3900円)。今年4月に発売されたiPhone SEはアップルがインドと中国で売ることを意識して出した低価格モデルだが、それでも価格は3万9000ルピー(約5万9000円)とインドのボリュームゾーンからは離れている。そこでアップルでは、iPhone SEよりもさらに価格の安い中古品を売ることでシェアを拡大したいと考えている。

 しかし、インドや欧米のメディアによると、インド政府は「産業廃棄物予備軍を増やすだけだ」として、中古iPhoneの販売には難色を示しているという。就任以来、「メーク・イン・インディア」の方針を掲げ、製造業の強化を推進したいモディ首相率いるインド政府は、中古を販売するよりも工場を設けてインドで造って欲しいというのが本音だろう。

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「「そこをよろしく」が通じぬインドで当惑の鴻海」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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