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一人っ子廃止でもシングルマザーの苦悩変わらず

生まれたことをラジオで批判された友人の今

2015年11月12日(木)

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チョウさんとリンリンの住む廃虚

 中国で1979年に導入された一人っ子政策の廃止が決まった。これに先立ち2013年には夫婦どちらかが一人っ子の場合、第2子を認めるように制度が緩和されていたが、今回、どのような夫婦でも2人目をもうけることが認められることになった。

 政策が廃止された理由については、10月末に中国共産党中央がこれを公表した直後から日本でも様々なメディアが説明している。少子高齢化が急速に進む中、社会保障に対する不安があること、さらに若年労働力の不足の解消、この2点に集約されるといっていいだろう。「いまさら2人目を認めたところで、労働力不足の解消や年金の財源不足の解消に効果を上げるためには数十年かかる」、「経済的な理由のみで廃止を決めたものであって、戸籍のない子供や人工中絶を多数生み出すなど、一人っ子政策がもたらした人道面での負の側面に対する反省がなされたわけではない」等々、中国当局の決定を、遅きに失した、何をいまさら、根本的な解決にならないとの理由で、批判する声も多く聞かれる。

 ただ、一人っ子政策の影響で、子供を産んだことを公然と非難されたり、子供の戸籍を取得するために苦悩し奔走したりする若い友人たち、そしてその多くは内陸の農村出身の人たち――の姿を目の当たりにしてきた私は、政策に違反したとして「戸口」(戸籍)を与えられない子供たちが、確認されているだけで1200万人(2010年人口センサスのデータ)に上るというような悲劇が、政策の廃止で確実に減少するだろうという点については、無条件で歓迎するべきことだと思っている。

シングルマザーなのに子供を持てない矛盾

 一人っ子政策の影響を受けてきたのは、「夫婦」ばかりではない。

 中国において、一人っ子政策にせよ二人っ子政策にせよ、子供を持つことを認められているのは正式に結婚をした夫婦のみだ。シングルマザーが子供を持つことは、一人っ子政策の廃止後も、二人っ子政策、すなわち「計画生育」政策に違反することであり、子供の戸籍は認められないのである。

 戸籍がなければ学校にも通えない。病院にかかれないわけではないらしいが、医療費は100%自己負担になるとのこと。さらに最近は飛行機はもとより高速鉄道に乗るにも高速バスに乗るにも実名制だが、戸籍がなければ身分証も発行されないため乗り物にも乗れないから、移動すらできない。文字通り身動きが全く取れない人生になってしまうわけだ。

 中国の「婚姻法」は第25条で、非婚で生まれた子女、すなわち非嫡出子は、嫡出子と同等の権利を有し、いかなる危害や差別を受けないと規定している。しかし、「人口・計画生育法」ではその第18条で、1組の夫婦は1人の子供を生育でき、条件を満たす夫婦は2人目をもうけることができるとした上で、同法の41条では、18条に適合せず子供を生育した公民は、「社会扶養費」、平たく言えば「罰金」を納めなければならないとしている。

 つまり、これまでの一人っ子政策の下では、子供の戸籍が認められないのは2人目をもうけた夫婦も同じであり、罰金を支払えば子供に戸籍は与えられるが、支払いを拒否すれば、戸籍は認められなかったということになる。

 一方で、シングルマザーの場合、結婚をしないで子供をもうけたこと自体が計画生育の政策に違反するということで、1人目であっても罰金を支払わなければ子供の戸籍が認められないのである。

 私には、自らが一人っ子政策に違反した子供として生まれ、長じてシングルマザーとして子を産み、娘の戸籍取得に奔走した友人がいる。一人っ子政策が終焉を迎えた今、この政策の申し子とも言える彼女の話を書くことで、35年に及んだこの政策の時代を生きた中国人の人生に思いを馳せてみたい。

野犬が吠える廃虚の町に住む母と娘

 上海の都心部から地下鉄で北へ1時間あまり。駅前の好立地に半年前にオープンしたばかりのショッピングモールやその周囲で開発の進む分譲マンションを通り抜けると、威圧的な高いコンクリートの壁に囲われた一角に出る。壁を穿って空けられた人1人通るのがやっとの細い隙間から壁の中に入ると、そこにはもう1つの町が広がっている。かつてこの町のメーンストリートだったと思しき小さな通りに、いまやほとんど人影はない。沿道にある商店はどこも閉まっていて、代わりに赤いテントを張った屋台が1軒。大きな山になって積み上げられているがれきの向こうには、ほとんどの窓にガラスの入っていない団地の群れが、亡霊のように建ち並んでいる。人が住んでいる気配はほとんど感じられないし、何より、この廃虚を見ればだれでも、人が住めるところにはとても思えないだろう。

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「一人っ子廃止でもシングルマザーの苦悩変わらず」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師