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習近平の悩みは「置き去り許さん」と牙剥く弱者

政変に利用され始めた中国の農民たち(後編)

2017年11月14日(火)

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「無くてもいい仕事」で延命図る

「無くてもいい仕事」を生み出すために投入されたおびただしい数のシェアリング用自転車

 とはいえ、農民工の受け皿を作らないことには、社会不安が一気に増大してしまう。だから習政権はこれまで、無理矢理にでも仕事を作り出して農民工の働き口を確保し、経済を回そうとしてきた。PM2.5など深刻な大気汚染を引き起こすことが分かっていながら過剰生産に走ったことなどは、その典型的な例だ。最近では、上海等の大都市で爆発的に増殖している自転車シェアリングも、「無くても特に困らない仕事」を、経済を回すために無理矢理膨らませたというのが私の見方だ。

 自転車シェアリングは上海で2016年夏ごろから始まったサービスだ。中国自転車協会は、開始から半年あまりの2017年2月末時点で、全国30余の都市で自転車シェアリングを導入しており、台数は200万台にまで膨らみ、うち最大は上海で45万台、中国全土で参入企業は15~20社に上るとしていた。それが、2017年9月末時点には上海だけで178万台、参入企業は13社に達していたというのだから、いかに異様なペースで増殖したかが分かると思う。

 海外にも進出済みで、中国の自転車シェアリングの火付け役で最大手のMobike(摩拝単車)は2017年8月、日本にも上陸し札幌でサービスを始めた。報道を見ると、北海道では地球環境に優しいエコなサービスとして拡大を期待しているうようだ。

 地元中国でも登場した当時は、自転車の所在地検索や施錠解錠にスマホを使うことや、料金の支払いもスマホの電子マネーでできるという現代のテクノロジーを使った最新ビジネスを評価する声や、二酸化炭素排出量を減らすエコな移動手段の拡大がPM2.5の解決につながると期待する報道が多かった。ところが、自転車シェアリングで最近、中国国内で話題になることと言えば、参入する企業が殺到しすぎて自転車の数がだぶつき、多くが産業廃棄物に化しつつあるという実態や、駐車した自転車が歩道や車道を占拠して歩行者や自動車の通行を著しく阻害しているというマイナスの側面ばかりになっている。

 二酸化炭素排出量削減についても、効果ははなはだ疑問だ。というのも、自転車シェアリングはそもそもが「最後の1キロ」、すなわち地下鉄やバスを降りて職場や自宅に向かうまでの間の最後の移動手段をうたって登場した。実際、それまで徒歩で移動していた区間を自転車に乗れるようになって楽チンで便利、という使い方が、私の周囲では圧倒的に多い。そもそも交通機関を利用していなかった区間で自転車を利用しても二酸化炭素の削減にはならない。

 そしてついに2017年8月中旬には、上海市政府が供給過剰や交通の混雑を生み出していること等を理由に、シェアリング用自転車の投入禁止を通達するに至った。エコを期待されて登場したサービスが、だぶついて利用されない自転車の山という産業廃棄物の排出マシーンと化してしまったのだから、なんとも皮肉だが、儲かりそうだとなれば短期間に参入業者が殺到してたちまち供給過剰になって政府が規制に乗り出し、後には失敗した業者等の残した負債と産業廃棄物が屍のように累々と残るということを中国はこれまで延々と繰り返してきたし、これからも繰り返していくのだと思う。なぜなら、無理をしてでも、無駄と分かっていても、それでも仕事を作り出し動き続けていないと、一瞬でも動きを止めたが最後、中国という巨象が倒れてしまうだろうことを、だれよりも中国自身がよく知っているからだ。

コメント6件コメント/レビュー

 なるほどと思わせる、面白い視点です。一度お話しして見たくなりました。(2017/11/15 02:22)

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「習近平の悩みは「置き去り許さん」と牙剥く弱者」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 なるほどと思わせる、面白い視点です。一度お話しして見たくなりました。(2017/11/15 02:22)

シェアバイクの件ですが、決して雇用対策ではありません。中国の大都市での必要性からです。昨秋はメッタヤタラに駐輪されて排除されてましたが、北京では指定の置き場所が増えています。確かに管理要員の雇用はありますがまだまだ人数は少ない。
料理デリバリーのプラ容器はご指摘のようにゴミ問題になっています。早々にコートした紙容器(日本でも一部のカップ麺やMcDナルドのコーヒ容器などあり)を使うように規制されるのではないかと思います。(2017/11/14 17:14)

共産主義なのに失業や格差がある矛盾。どうせ矛盾するなら、共産主義政権を再び民衆革命で倒すという壮大な矛盾を期待したい。(2017/11/14 13:29)

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