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習近平の悩みは「置き去り許さん」と牙剥く弱者

政変に利用され始めた中国の農民たち(後編)

2017年11月14日(火)

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(前回の記事「習近平が震えた真夏の怪文書」から読む)

 「怪文書」とも言えそうな習近平国家主席が打ち出すという22項目の新政策を書いた文書が流れてきたころはちょうど、中国の幹部や長老が例年、避暑地の河北省北戴河に集まり2~3週間にわたって人事や重要議題の根回しや詰めの協議をする、いわゆる「北戴河会議」を開いていた時期と重なる。特に今年はこの先5年の最高幹部の人事を決める5年に1度の重要な全国大会を控えるという、政治的には極めてセンシティブな時期にあった。こうした中、22項目の新政策を掲げたあの文書は、習氏と権力闘争を繰り広げる政敵が流し、習氏一派が慌てて削除した、というところなのではないのか。

 ただ、習氏に失望した農民工や貧困層が蜂起するようなことになれば、習氏1人が権力闘争に敗れるだけでは済まず、中国自体が転覆してしまうほどの大混乱につながりかねない。習氏も政敵もそんなことは百も承知のはずで、農民が不安定な状態に陥ることを恐れているはずだ。

 習氏の政敵なのか、知人の言うとおり台湾独立を目指す勢力なのか、それとも習氏自身なのか。それは分からない。ただ、最悪の場合、大混乱に陥るリスクを認識しつつ、あえて農民や農民工を政争に利用するという大博打を打った勢力の姿が、おぼろげながら浮かび上がる。

そして、何も起こらなかった

 そうして私は、あの文書が「中国が徹底的に変わる」としていた8月18日を待ってみることにした。

 結論から言うと、何も起こらなかった。8月18日に中国共産党や中国政府が22項目の新政策を発表することもなかったし、類似する政策めいたものも出なかった。

 ただ、中国系の複数のネットメディアがトップ記事の位置に、「中国が打ち出した貧困解消案に習近平が貢献した」という記事を掲載した。習氏が海南省で仕事をしていた時代に考えた貧困解消の案が、25年を経た今でも色あせず貧困の解消に役立っているという内容だ。8月18日にあえて、習氏が昔から貧困の解消や弱者の救済に心を砕いてきたという記事をぶつけてきたのを見ると、習氏やその周囲はどうやら間違いなく、22項目の新政策の文書に神経をとがらせ、相当に意識していたということなのだろう。

 ところが、これと矛盾するかのように、習政権は今年に入り、都会から貧困層の農民工追い出しに拍車をかけており、私は近著『食いつめものブルース 3億人の中国農民工』でも、このあたりの事情を繰り返し書いている。表向きには違法建築の取り締まり、違法経営の取り締まりと、「違法の摘発」という体を取って、農民工が経営者や従業員としてかかわっている店を封鎖するというものだ。

 ただ、高度成長の時代が去り、「新常態」という低成長の時代に突入した今、人口の急速な高齢化と30年あまりにわたって続けてきた一人っ子政策のツケによるいびつな人口構成で、都会生まれの貧困層を支えるのが精一杯という社会の到来が間近に迫る中、農民工を支えるだけの余力がもはや都会には残っていないというのっぴきならない事情がそこにはある。

習近平体制を揺さぶる怒れる農民工たちのノンフィクション
3億人の中国農民工 食いつめものブルース
 「独身の日」と言われる11月11日。インターネットで大セールが行われた中国。中国インターネット通販最大手、アリババ集団だけの取引額が1600億元(2兆7000億円)を突破するなど、一見、消費が盛り上がっているかのように見える。しかし、中国13億人の中には、そのような繁栄には取り残され貧困にあえぐ人たちが大勢いる。彼ら農民工は中国の発展を支えた功労者でありながら、決して主役になることはない。
 それでも農民工は、これまで文句を言うことなく働いてきた。次に富をつかむのは自分の番だと信じて。しかし、いつまで経っても生活が楽になることはなく、次第に不満をため込むようになってきた。彼ら「食いつめもの」の不満が奔流となって牙を剥いたとき、それは盤石と思われる習近平体制を揺るがずものとも成りかねない。
 本書は、これまで誰も描くことのなかった農民工の姿を、本コラムの筆者・山田泰司氏が克明に描いた1冊だ。

コメント6件コメント/レビュー

 なるほどと思わせる、面白い視点です。一度お話しして見たくなりました。(2017/11/15 02:22)

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「習近平の悩みは「置き去り許さん」と牙剥く弱者」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 なるほどと思わせる、面白い視点です。一度お話しして見たくなりました。(2017/11/15 02:22)

シェアバイクの件ですが、決して雇用対策ではありません。中国の大都市での必要性からです。昨秋はメッタヤタラに駐輪されて排除されてましたが、北京では指定の置き場所が増えています。確かに管理要員の雇用はありますがまだまだ人数は少ない。
料理デリバリーのプラ容器はご指摘のようにゴミ問題になっています。早々にコートした紙容器(日本でも一部のカップ麺やMcDナルドのコーヒ容器などあり)を使うように規制されるのではないかと思います。(2017/11/14 17:14)

共産主義なのに失業や格差がある矛盾。どうせ矛盾するなら、共産主義政権を再び民衆革命で倒すという壮大な矛盾を期待したい。(2017/11/14 13:29)

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