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「日本三景」でも日本人が知らない?三ツ星絶景

2016年5月31日(火)

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日本人が知らない宮島「嚴島神社」

 宮島の来島者数は、世界遺産登録翌年の1997年には過去最高の311万人を記録しましたが、98年には268万人に落ち込み、以降減少、2001年には241万人になりました。回復に転じたのは2006年、世界遺産登録10周年イベント等で12月の来島者数が過去最高を記録。2007年は国内外から観光客が増加し、10年ぶりに300万人を回復しました。2012年にはNHKの大河ドラマ「平清盛」の放映もあり、初の400万人超えを達成しました。

空から見た宮島・嚴島神社。約6時間ごとに潮の干満によって景色を変える宮島。干潮時は鳥居まで歩いていくことができる。 画像提供:広島県

 宮島は「厳島」ともいいます。広島県南西部の瀬戸内海に浮かぶ、周囲約30kmの島は古くから自然崇拝の対象でした。地元有力者、佐伯鞍職(くらもと)により嚴島神社が創建されたのは593年。806年には唐から帰国した空海が霊地を探して宮島を訪れ、弥山を開山したと伝えられています。その後、平安時代末期、平清盛とその一族の守護神とされ、清盛の援助で竜宮城や極楽浄土を模したといわれる華麗な海上社殿が造営されました。

 江戸時代には全国を行脚した儒学者、林春斎により松島、天橋立とともに日本三景に数えられ、「安芸の宮島」は日本人なら誰もが一度は訪れてみたい景勝地となりました。日本三景観光連絡協議会のHPによれば、宮島のある「瀬戸内海の独特の多島美は海外での評価が高く、瀬戸内海の概念も明治時代に欧米人がThe Inland Seaと名付けた海域を翻訳する際に生まれた」とされています。

(写真左)山頂から見た「獅子岩展望台」と瀬戸内海、手前に大奈佐美島、奥に江田島。(右)展望台には島の案内板と専用の覗き穴が設置。大黒神島や能美島、遠くは四国連山まで見渡せる

 環境省によれば、瀬戸内海の島しょ数は727、うち142の島が広島県域にあります。英語でいうアーキペラゴ(Archipelago)、多島海(群島)にはハロン湾など、世界的な観光地も少なくありません。弥山山頂は遮るものがない360°の視界、瀬戸内海に浮かぶ島々、遠くは四国連山までを見渡す絶景を堪能できます。しかも弥山は単なる景勝地ではなく、嚴島神社と一体となったいわば一つの宇宙、スピリチュアルな世界観を持つ資源でもあります。

 宮島を訪れる外国人には、日本人とは異なる興味・関心が見られます。「廿日市市観光ギャップ調査報告書(平成24年)」によれば、2012年の宮島を訪れた日本人観光客の9割は日帰り客で、その滞在時間の平均値は3.3時間に過ぎません。これに対し外国人の平均値は4.1時間と日本人を上回っています。

 日本人と外国人で資源別訪問率を比較すると「嚴島神社」と「表参道商店街」にはいずれも8割前後の人が訪れており大差はありません。一方、干潮時にはその足元まで歩いて行ける「大鳥居」は日本人43.3%に対し、外国人は84.1%と倍近く。「五重塔」や「大願寺」「多宝塔」「大聖院」などでも2倍から5倍の差が見られます。

 宮島は1日2回、潮汐によりその姿を変えます。満潮時、潮位が250cm以上では嚴島神社の大鳥居は海に浮かんでいますが、干潮時100cm以下になると大鳥居の根元まで歩いていくことができます。宮島の景色はそうして一日4回、約6時間ごとに変容します。それを見るため宮島を訪れる外国人の干潮時の「大鳥居」訪問率は、「嚴島神社」への訪問率79.3%をも上回っています。

 日本人観光客の行動範囲は多くがフェリー桟橋から嚴島神社へと続く有之浦沿いの道や表参道商店街(清盛通り)、町家通りなどに限られます。嚴島神社のすぐそばにある国の重要文化財の訪問率は「千畳閣(豊国神社)」25.3%、「五重塔」でも32.7%で、「多宝塔」に至っては3.3%に過ぎません。嚴島神社から多宝塔に向かう道には国の重要文化財の仏像4体を収める「大願寺」や、白砂青松と古い町並みが相まった美しい散歩道があります。嚴島神社から徒歩5分、弥山登山コースに続く「大聖院」に連なる自然散策道「あせび歩道」や「もみじ歩道」にはビュースポットもありますが、大願寺の訪問率は外国人27.7%に対し、日本人はわずか11.4%。

 2012年の宮島の目的別総観光客数(市町内含む)を見ると、「神仏詣」は50.4%で、その他は「祭り行事」(14%)、「ハイキング・登山・キャンプ」(9.4%)、「海水浴・潮干狩り・釣り」(7.4%)、「自然探勝」(7.1%)と様々です。2011年にリニューアルした宮島水族館「宮島マリン」は2012年に67万人を集めました。宮島の発地別観光客数の比率は市内7.3%、県内14.2%、県外78.4%です。県内近郊では手近な余暇レジャーの場ということでしょうか。いずれにしろ、日帰り3.3時間の行動範囲は飲食などの時間を除くと非常に限られたものになります。

 宮島は夕景、夜のライトアップ、日の出など、時間によってもその姿を変えます。夕刻、太陽は対岸の山の端に落ち、大鳥居は夕陽の中、黒いシルエットとなって見えます。しかし日没後30分ほどすると嚴島神社や大鳥居などはライトアップされ、暮れゆく空と海の境界に一際幽玄な大鳥居の姿が浮かび上がります。夜明けには、白む空の下、次第にその形を表し、朝日を浴びる朱の大鳥居は格別な神々しさをたたえ、荘厳で冒しがたいものがあります。

 嚴島神社は通常、朝6時半に開門となります。昼間は人で埋まり、喧騒に包まれる社殿もその時間はほとんど人の姿がなく、澄んだ空気の中、自然と一体となった世界遺産の社殿に立てば心洗われ、穏やかな気持ちになります。嚴島神社の入場券は一日券となっており、その日に限り再入場も可能で、社殿や回廊からは時間ごとに姿を変える海や大鳥居、五重塔など、絵巻物さながらの絶景を楽しむことができます。しかし、それを目にする人はごく一部です。

(写真左)早朝、嚴島神社にほとんど人影はない。美麗な社殿と五重塔のツーショット。(右)日没30分後から夜11時まで、大鳥居や嚴島神社、五重塔などがライトアップされる

 宮島には日本三大船神事の「管絃祭」や大鳥居や嚴島神社を幻想的に浮かび上がらせる「宮島水中花火大会」など、四季を通じて伝統的な儀式や祭なども多く、一日ではとても味わい尽くせない、魅力と楽しみに溢れています。

 中でも「弥山」は必見の観光スポットです。しかし、日本人の訪問率は「宮島ロープウエー」9.9%、「弥山」7.8%。一方、外国人はロープウエー26%、弥山31.5%で、ロープウエーを利用せずに弥山山頂へ至る人がいることもわかります。弥山山頂への訪問率でみれば、日本人と外国人の間には実に4倍の差があります。

 実際の登山者数は環境省の「瀬戸内海国立公園宮島地区・弥山の登山者数」では2012年に21万1454人、2013年に19万3051人。2012年の宮島来島者数は404万人なので、その中でミシュラン三ツ星の絶景を目にする人はせいぜい5%程度にすぎません。

※登山者カウンターの計測値は複数の登山者による同時通過や平行通過はカウントされませんので、実際の登山者数とは異なります。

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「「日本三景」でも日本人が知らない?三ツ星絶景」の著者

水津 陽子

水津 陽子(すいづ・ようこ)

合同会社フォーティR&C代表

経営コンサルタント。合同会社フォーティR&C代表。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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