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コンパクトシティ幻想から10年、大分市が大変身

中心市街地を活性化するもの(1)大分市編

2016年8月19日(金)

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大分市の中心市街地活性化の歴史と転換点

 大分市は人口約47.8万人(2016年5月)、県人口の4割超を占める東九州の中核都市であり、県庁所在地として「県都の顔」を持ちます。戦後は重化学工業を中心に発展、近年はIT関連企業が進出するなど、人口も増え続けています。JR大分駅の1日当たりの乗降客数は2005年度の16,832人から2014年度は10,476人に減少しましたが、JR九州管内では博多、小倉、鹿児島中央に次ぐ第4位を維持。旅客営業成績(駅取扱収入)でも第5位にあります。

 一方、都市の認知度や魅力度においては、全国的に知られる別府や由布院のようなブランド力はなく、「大分の顔」としてはやや力不足が否めませんでした。

 中心市街地の衰退が始まったのは例にもれずモータリゼーションが進展した1970年代半ば(昭和50年代)、郊外に大規模なニュータウンが造成されると都心の空洞化が進みました。大分市で「(旧)基本計画」が策定されたのは「まちづくり三法」が制定された2000年。しかし2006年までの7年間、中心市街地の居住人口はわずかながら増加したのに反し、土日の歩行者通行量は約3割も減少、空き店舗率の上昇は止まらず、事業は成果を上げられませんでした。

 ちなみに「まちづくり三法」とは2000年に「大店法」が廃止され、それまで大規模小売店舗の出店にあたって地元中小小売業者との間で行われてきた商業調整を行わないこととし、新たに制定された「大店立地法」。空洞化が進行する中心市街地の活性化を図る「中心市街地活性化法」、まちづくりの観点から大規模店舗の立地規制等を可能にする「改正都市計画法」の3つの法律を指します。

 ただ大店法の廃止は郊外の大規模商業施設の出店拡大を助長、郊外への人口移動に拍車をかけ、中心市街地のさらなる空洞化、いわゆる「ドーナツ化現象」を招きました。これを受けて制度は見直しとなり、2006年に中心市街地活性化法の改正等がなされました。その趣旨は、わが国がおかれた人口減少・超高齢社会の到来を見据え、様々な機能をコンパクトに集積、歩いて暮らせるまちづくりを実現。これまでの商業振興中心ではなく、街なか居住の推進や図書館や病院等の都市機能を集積、中心市街地を生活空間として再生するというものでした。

 しかし、認定1号の富山市はライトレール等「公共交通の整備」で路面電車の乗車数、様々な再開発事業で「街なか居住」人口では目標を上回ったものの、「賑わい拠点」に面した商店街はシャッター街と化し、日曜日の歩行者通行量は目標の3万2000人に対し、北陸新幹線が開通した2015年においても2万3595人で、基準値である2011年の2万7407人をも下回りました。

 ウォーカブルタウンの確立をコンセプトに、観光による活性化を掲げた青森市も、2011年東北新幹線「新青森駅」開業の効果は通行量や小売業の商品販売額には反映されず。青森市が63.7%出資し2001年に開業したJR青森駅前ビル、複合商業施設「アウガ」は経営難で、運営する三セクは24億円の債務超過に陥っています。地上9階、地下1階建て、地下から4階が商業施設、4~8階に図書館など公共施設、駐車場を有するこの施設は、いわば改正中活法が目指す機能集積の先駆例ともいえますが来館者数は年々減少し、2014年は400万人。そのうち「買い物客」は84万人、「公共フロア」は74万人、6割が駐車場など「その他」の利用で、来館者がまちに出て回遊する効果も表れていません。

 どれだけ機能を集中しようと、ドア・ツー・ドアでまちに人が流れなければ、どこにあろうと同じことではないでしょうか。

大分市の基本計画(第一期)2008年7月から2013年3月まで

 大分市は2008年7月に基本計画(第一期)の認定を受けました。事業期間は2013年3月までの4年9カ月。大分市では計画策定に際し、(旧)基本計画を検証し中心市街地の課題を整理、事業の実施体制等を見直すとともに市民ニーズを調査しました。その結果、(旧)基本計画の事業実施後、中心市街地に行く機会が「減った」と「少し減った」と回答した市民は58.5%、「買いたいと思う店が少なく商店街の魅力が減った」と回答した人は42.5%に及びました。これを踏まえ、大分市は「中心市街地の活性化」とは「中心商業地の活性化」であると定義。

 新たな基本計画の骨子は(1)大分駅の北側に「商業」、南側に「情報文化」という性格の異なる都心を形成、(2)2つの都心をつなぎ、(3)南北を回遊し楽しめるまちの魅力づくりを目指すというものでした。具体的には同市の長年の懸案であった大分駅を高架とし、駅南側の土地区画整理事業を行い、これまで分断されてきた南北の市街地をつなぐ街路を整備。駅南側には新たに複合文化施設等を整備するというものでした。

 駅高架と駅南区画整理等を一体的に行う「大分駅周辺総合整備事業」は1996年に計画がスタートしており、大分県が担う「大分駅付近連続立体交差事業」は2013年度中、大分市が担う「大分駅南土地区画整理事業」は2016年度中の完成を予定。事業には総額1900億円が投じられ、100年に一度のハード事業と呼ばれました。基本計画はこうした大規模なインフラの整備をチャンスと捉え、商業地をエリアマネジメント、その質と魅力の向上を図るというものでした。

 しかし第一期はテナントミックス事業による122店の新規出店や旧サティ跡で建物のダウンサイジングによる空きビル再生事業、年間150 日のイベント開催で周辺の通行量が増加傾向を示すなどで一定の成果は認められたものの、全体としては活性化には至りませんでした。事業終了後の消費者実態調査で「中心部に行く頻度」を尋ねたところ「増加した」と回答した市民はわずか6.6%、これに対し「減少した」は42.6%。また商業事業者へのアンケートで「活性化の動きを感じているか」という問いに「あまり感じられない」又は「ほとんど感じられない」と回答した事業者は57.3%に上り、「活性化の動きが感じられる」の23.6%を大きく上回りました。

 2011年は中心市街地のまちづくりを考えるワークショップや意見交換会などが行われ、事業者だけでなく市民からも様々な意見が寄せられましたが、それをどうまちづくりへ反映するかにつては明確な展望は描けていませんでした。2012年3月には駅周辺の全面高架が完了、周辺の区画整理や駅の南北を結ぶ道路整備も進み、新駅ビルの工事や駅北口広場の整備も始まりましたが、(旧)基本計画で指摘された中心市街地での基本計画の浸透や地域一体となった取り組みには至らず、事業は第二期へ入っていきました。

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「コンパクトシティ幻想から10年、大分市が大変身」の著者

水津 陽子

水津 陽子(すいづ・ようこ)

合同会社フォーティR&C代表

経営コンサルタント。合同会社フォーティR&C代表。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長