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コンパクトシティ幻想から10年、大分市が大変身

中心市街地を活性化するもの(1)大分市編

2016年8月19日(金)

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駅高架、駅南地区の区画整理と一体なった開発でJR大分駅前は大きく変貌。2015年4月16日開業、JR大分駅ビルは施設総面積約3万1千平方メートル、店舗数224。JR九州運営のアミュプラザで博多、鹿児島に次ぐ九州3番目の規模。
*備考 大分県による「JR大分駅付近連続立体交差事業」は第28回全国街路事業コンクールで最優秀賞の国土交通大臣賞を受賞。

中活法改正から10年、コンパクトシティ政策を検証する

 2006年の「改正中心市街地活性化法(通称「改正中活法」)」制定から10年。国が進めてきた「コンパクトシティ政策」でこれまでに認定された「中心市街地活性化基本計画(以下、「基本計画」」は136都市・200計画にも上ります。しかし、その中で実際に成果を上げた事業はどれだけあるでしょうか。

 改正後の基本計画認定1号、2号となった富山市青森市は、ともにコンパクトシティの先駆けとして当時多くの注目を集めましたが、1期(5年2カ月)を終えていずれも結果が出ないまま、既に2期も1年を残すのみ。最新のフォローアップ報告でも中心市街地の通行量や小売業の商品販売額は下降の一途をたどったまま、目標の達成には至っていません。この10年、各地で巨費を投じ、「都市機能の集中」「公共交通の整備」「まちなか居住の促進」を推進してきたコンパクトシティ政策ですが、その先駆例さえ、いまだ理想とは程遠い現状です。

 この10年間、筆者は全国主要都市の中心市街地を数百カ所、実際に歩いて見てきました。その中で現に賑わいを維持、又は回復した例はごく僅かです。富山、青森をはじめ、数年にわたって追跡調査しているいくつかの都市では、様々な整備が行われたにもかかわらず、まちに人の姿はなく、むしろ衰退が進んだようにすら感じます。単に拡散した都市機能を中心部に集約するだけでは中心市街地は活性化しません。結果の出ない事業を続けても地域に未来はなく、この10年のコンパクトシティ政策を検証し、問題点を整理する必要があります。

 今回はまず九州から一例、実際に成果を上げた取り組みを例に検証してみます。2008年7月に基本計画の認定を受けた大分市は、4年9カ月に及ぶ第一期の事業評価で「活性化には至らなかった(計画策定時より悪化)」と結論づけました。そこから事業は第二期に入り、大きな転換点を迎えました。その転機とファクターとは果たして――。変貌したまちを歩き、事業の成否を分けたものを追いました。

2009年当時、九州の県庁所在地で最も疲弊していた大分市の中心市街地

(左)2009年10月、JR大分駅前(北側)、(右)2015年8月、同じ場所で撮影したもの。

 昨年6月、大分に出張した際、予期せぬものを目にしました。大分空港に到着しリムジンバスで大分市内に向かうと、JR大分駅前が大きく変貌していました。それはもう「ここはどこ?バス間違えた?」というくらいの劇的ビフォーアフター的な変化。以前はだだっ広いだけで閑散としていた駅前は洗練された空間に生まれ変わり、巨大な駅ビルが出現。そこを多くの人が往来していました。駅の北側に広がる中心市街地にも以前にはなかったにぎわいが見られ、まちの雰囲気がツートーンくらい明るくなった印象を受けました。

 大分市内に赴いたのは2009年から2010年にかけ、九州・沖縄8県の県庁所在地の中心市街地を一斉調査して以来。2012年にコンパクトシティ政策を検証するレポートを書き、しばらくこのテーマから離れていました。そこから6年、隔世の感がありました。大分市の中心市街地は当時歩いた中で最も疲弊し、かつ、まちとしての特徴や魅力に乏しいと感じた場所でした。

 左側の写真は2009年10月の大分駅北口の様子です。セントラルステーションであるJR大分駅には人の姿はまばらで、目の前を通る幹線道路、片側二車線の国道10号線で車はスピードを落とすことなく、駅などないように通過していました。同年3月、大分市の中心市街地では地上8階、地下1階建て、床面積1万2800平方メートルの大型スーパー「大分サティ」(売上約20億円)が閉店。駅前商店街には空き店舗が目立ち、すでにシャッター街と化した通りもありました。どこを歩いても歩行者の姿はほぼ皆無。まちは閑散としてアーケードに響くのはパチンコ店から放たれるけたたましい騒音のみ。これが人口47万人の中核市(人口20万人以上、政令市に次ぎ、特別な権限を与えられる都市)、県庁所在地の中心市街地かと愕然としたのを今でも覚えています。

 2015年4月、JR大分駅ビル「JRおおいたシティ」が開業、大分駅前の風景は一変しました。右側の写真は昨年撮影したものです。以前はなかった高層の建物が、地上21階、地下1階建ての新駅ビル「JRおおいたシティ」です。1~4階には床面積約 31,000平方メートルの商業施設「アミュプラザおおいた」、地上5~8階に立体駐車場、8階に屋上庭園を設置した大型複合商業施設、8~18階の高層階には190室を有するホテル、19~21階には地下700メートルから湧き出る天然温泉を使用する温浴施設が入ります。商業施設のテナント183店舗のうち119店舗が大分初出店で、ファッション関連の店舗数は九州でも有数のスケールを誇り、飲食店も県外の話題店や地元の人気店が集結。1階の駅コンコースには『大分らしさ』を感じさせるモニュメントや地域食材を使用したメニュー、全店に100円商品をそろえた居酒屋横丁等もあり、東九州に位置する大分、宮崎にはこれまでなかった巨艦店となっています。

 しかも注目すべきはこれが単なる駅前再開発に終わらず、駅から中心市街地へ人の流れを生み出していることでした。

表1 「大分市中心市街地活性化基本計画」の評価指標と目標達成度
出典:大分市中心市街地活性化基本計画フォローアップ報告

 ただ、大分市の基本計画が他と比べ特に優れた面があったかと問われれば、正直、懸念はあっても成果が上がるようには見えませんでした。実際、第一期では成果を出せず終わりました。上の表は大分市の基本計画の評価指標と目標達成度の推移です。第一期は「小売業年間商品販売額」、「歩行者通行量」、「まちなか滞留時間」の3つの指標いずれの目標も達成には至らず、計画策定前の基準値(2004年度)も下回りました。

 第一期は2009年の大分サティの閉店に加え、2011年に床面積1万5000平方メートル、若者にも人気があった大型商業施設「パルコ大分店」(売上約40億円)が閉店。当時大分市の調査で市民が中心市街地へ行く主目的は「百貨店など大型店での買い物」が約7割を占め、「商店街等の個店での買物」は約2割に留まっていました。相次ぐ大型店の閉店により大分市の中心市街地はかつてない苦境に追い込まれていました。

 そのどん底からどう転換したのか。大分市における中心市街地活性化の取り組みから、転換点と要因を探ってみましょう。

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「コンパクトシティ幻想から10年、大分市が大変身」の著者

水津 陽子

水津 陽子(すいづ・ようこ)

合同会社フォーティR&C代表

経営コンサルタント。合同会社フォーティR&C代表。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師