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250kmを超える広域連携で観光ブランドを確立

北海道ガーデン街道

2016年11月15日(火)

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客足が伸びない! 悩んだ末に思いついた連携、ヒントをくれたのは

2001年旭川市に開園した「上野ファーム」(左)。マザーガーデンなどコンセプトの異なる9つの庭を有す。(右)裏にある射的山からは上川平野が一望、6月中旬頃にはルピナスが咲く(右画像提供=北海道ガーデン街道)

 北海道ガーデン街道の話に入る前に、まずそのバックグラウンドとなる日本の花の観光の歴史に触れておきましょう。日本で花の観光といえば、古来より桜が日本全国津々浦々、春の観光のメインコンテンツとして集客力を発揮してきました。近年は芝桜やネモフィラなど、花の観光のコンテンツも多様化、全国各地に大型フラワーテーマパークが誕生し、地域間競争も激化しています。

 日本でこうした花の観光が注目されるきっかけとなったのが1976年、旧国鉄のカレンダーに採用された富良野のラベンダーです。その後1990年に大阪で「花の万博」が開催されると半年間の会期中、総入場者数は2000万人を超え、翌1991年には花のまちづくりを普及する目的で「全国花のまちづくりコンクール」がスタート、全国に花を用いた地域活性化の取り組みが広がっていきました。

 こうした中、新たな園芸雑誌が創刊、花の観光に新たな波をもたらします。1997年、人気園芸雑誌「BISES(ビズ)」(1992年創刊)でイングリッシュガーデンが紹介されると、日本でガーデニングブームが起きます。イングリッシュガーデンとは西洋式庭園の様式の一つで、ナチュラルガーデンとも称される自然の景観美を追求した英国式庭園のこと。ちなみに今、私たちが使っているガーデニングという言葉はBISESが使い始めたものです。ガーデニングはその年の流行語大賞にも選ばれ、BISESで紹介されたガーデナーはカリスマとして人気を集めるようになります。

 これを機に、日本の花の観光は単に花を見て回る「フラワーツーリズム」から、庭を通じて地域の自然や風土に触れる「ガーデンツーリズム」という新たなジャンルに分岐していきます。北海道でも2000年代、北海道ならではの大自然や風土に触れる北海道らしい庭園を追求するガーデンが次々開園、注目のガーデナーが誕生します。2001年に旭川市に開園した「上野ファーム」のガーデナー上野砂由紀さんは、2004年「BISESガーデン大賞(第3回)」グランプリ受賞を機に注目を集め、上野ファームは全国から6万人(5~10月)が訪れる人気ガーデンへと成長していきました。

 一方、十勝ではこの時期、思うように客足が伸びず、集客がガーデン共通の課題となっていました。中でも2008年に帯広市から約30km、清水町で開園した「十勝千年の森」を運営する農業生産法人「有限会社ランランファーム」の社長、林克彦さんは強い危機感を持っていました。

2008年清水町に開園した「十勝千年の森」。イギリスの園芸家ダン・ピアソンが設計した(左)アース・ガーデン(大地の庭)、(右)メドウ・ガーデン(野の花の庭)は英国のガーデンデザイナーズ協会「グランプリアワード2012」受賞(画像提供=北海道ガーデン街道)

 十勝千年の森はもともと1992年、十勝毎日新聞社が事業で大量に紙を使うことから環境貢献事業の一環としてカーボンオフセットに取り組み、400ヘクタールという広大な土地を取得して森づくりから始めたもの。2000年からは観光振興のためチーズ製造とガーデンづくりをスタート。しかし食だけでは限界があると考え、2004年にイギリスの園芸家ダン・ピアソンを招き、調査に2年、施工に1年をかけ、多様な動植物が生息する自然林の育成保全と在来樹種の植林により十勝本来の森を復元、2008年に「十勝千年の森」としてグランドオープンしたものです。

 4つのテーマガーデンのうち、ダン・ピアソンが設計した最も特徴的な「アース・ガーデン」と「メドウ・ガーデン」は、2012年には英国のガーデンデザイナーズ協会(SGD)で日本初となる最高位のグランドアワードを受賞。審査員から「出品された中で最も美しい庭、21世紀のガーデンデザイン最良の例」と絶賛を受けた、北海道のスケール感と自然美に満ちた魅力的なガーデンですが、開園から2年は訪れる人もまばらでした。

 そんな時、富良野市で2009年の春から一般公開された「風のガーデン」が開園半年で21万5000人という入園者数を叩き出し、大きな話題を呼びます。風のガーデンは2008年に放映された倉本聰さん脚本の同名のTVドラマのロケ地となった庭園で、新富良野プリンスホテルの敷地内に約2年をかけドラマの舞台として作られた庭園です。デザインは上野ファームの上野砂由紀さんが手掛け、庭園内にはドラマにも度々登場した「グリーンハウス」等がそのまま残されていました。放映終了後、一般公開されるとドラマやガーデニングのファンなど多くの観光客が押し寄せました。

 当時、十勝千年の森の有料入園者数は地元客を中心に年間約2万人ほど。ドラマの影響があるとはいえ、富良野のガーデンにその10倍を超える人が訪れたことは驚きでした。同じ頃、女性誌のガーデン特集の取材を受けた林さんは編集長からこの後、風のガーデンから上野ファームへ向かうという話を聞いて驚きます。帯広から富良野は120km、旭川は200kmも離れており、遠いですよと言うと、相手からは「観光や取材ならその程度は苦にならない」と言われ、認識を新たにします。

 そこから年間200万人が訪れる富良野、300万人を集める旭山動物園がある旭川を国道237号(旭川-富良野)と国道38号(富良野-帯広)で結ぶ「北海道ガーデン街道」の構想を思いつきます。ベースにあったのは2002年森林療法研究所のドイツ視察で見た南ドイツの古城を巡る350kmの観光ルート「ロマンチック街道」でした。古城という共通のテーマでつながれた街道観光ルート、それがガーデンという共通のテーマでつながれた新たな観光ルートの発想に至りました。

 林さんはすぐさま上野さんへ構想を提案します。実は林さんは2009年の春に東京のガーデニング専門誌を訪ねた際、編集長から上野さんとの連携を勧められていました。ただその時は具体的なアイデアが思い浮かばず、ホームページの相互リンクをしましょうくらいで終わっていました。突然の提案に対し、当初、上野さんは戸惑っているように見えたといいますが、驚くべきことに「北海道ガーデン街道協議会」はその年の10月に設立されます。

 実に構想から2カ月弱、ありえないスピードでした。地元十勝はもちろん、富良野、旭川の2大人気ガーデンを林さんはどう口説き落としたのでしょうか。

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「250kmを超える広域連携で観光ブランドを確立」の著者

水津 陽子

水津 陽子(すいづ・ようこ)

合同会社フォーティR&C代表

経営コンサルタント。合同会社フォーティR&C代表。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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