• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

三菱との電撃提携で「ゴーン・マジック」再演?

「底値買い」で「恩を売る」経営判断の凄み

2016年5月16日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

提携発表で握手する日産自動車のカルロス・ゴーン社長(左)と、三菱自動車工業の益子修会長(写真:ロイター/アフロ)

 カルロス・ゴーンという経営者の能力に、背筋が寒くなるほどの凄みを感じた。今回の三菱自動車との電撃提携についてだ。この発表があった5月12日の2~3日前でさえ、筆者の周囲では「三菱商事主導で再建が進むらしい」「いや、やはり三菱重工主導になったようだ」といった話が、まことしやかにささやかれていた。しかし、日産自動車が三菱を救済するという予想はまったく耳にすることがなかった。むしろ、沈みかかる船からいかに上手に逃げ出すか、というような観測がもっぱらだった。そこへ、今回の提携発表である。

 筆者自身、日産が救済の手を差し伸べるとはまったく予想していなかった。あったとしても、軽自動車の部門だけを切り離して部分的に買収する程度だろうと思っていた。今となっては不明を恥じるばかりである。筆者が、日産が三菱を救済しないと考えていた最大の理由は、日産にとってのメリットが見えなかったことだ。

 2004年に発覚した最初のリコール隠し以来、三菱自動車は後ろ向きの対策にばかり追われてきた。この結果、技術開発の沈滞は深刻だった。例えば、今回の不正の発端となった燃費技術で遅れているのは、軽自動車だけではない。他社からは、新開発のハイブリッドシステムや、ダウンサイジングエンジン、マツダの「SKYACTIV」のような新コンセプトの低燃費エンジンが相次いで投入される中で、三菱自動車はこうした新技術を盛り込んだエンジンを商品化できなかった。このため、排気量を2.0Lから1.8L~に縮小し、合わせて車体の基本構造を変えずにできるだけ軽くするなど、技術開発を伴わない対策にとどまっていた。

 同様のことは安全技術についてもいえる。自動ブレーキを始めとする先進安全装備の搭載で遅れがちだったうえ、現在話題になっている自動運転技術についても、目立った動きは見られない。さらに、強みとされる4輪駆動技術や電動化技術も、最近では必ずしも他社に対して優位とは言えなくなってきている。

 例えば電動化技術1つをとってみても、三菱の最新のプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」のパワートレーンの構成は、ホンダの「アコードハイブリッド」や「オデッセイハイブリッド」と非常に似通っているのだが、ホンダはモーターの効率を向上させたり、モーターを駆動する回路の小型化を進めたりといった改良を着実に進めているのに対して、三菱はこうした動きに追いつけていない。

 このコラムの第33回でもアウトランダーPHEVを取り上げたのだが、その走りは基本設計の古さをあまり感じさせず、乗り心地と操縦安定性のバランスのとれた気持ちの良いものだった。だから、三菱自動車の技術陣のクルマづくりの基本的な能力は、決して他社に劣るものではないと思うのだが、このコラムの第52回でも指摘したように、研究開発費の不足はいかんともしがたいものがある。

 一方で日産は電気自動車(EV)の「リーフ」を商品化しており、電動車両の技術でも業界では先頭グループに位置する。「三菱自動車に学ぶことはあるのだろうか?」というのが筆者の疑問だった。さらにいえば、少子高齢化が進む国内市場は、これから縮小していくのが確実である。三菱自動車を買収して、国内に余計な生産能力を抱え込むことはおろかな選択に思えた。

コメント9件コメント/レビュー

この解説記事を読まない限り、現状の流れを理解することは難しい。恐るべしゴーン、さすがに10億円プレイヤーですね。(2016/05/17 10:55)

「クルマのうんテク」のバックナンバー

一覧

「三菱との電撃提携で「ゴーン・マジック」再演?」の著者

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)

オートインサイト代表

1985年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、2004年に自動車技術の専門情報誌の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、オートインサイトを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

この解説記事を読まない限り、現状の流れを理解することは難しい。恐るべしゴーン、さすがに10億円プレイヤーですね。(2016/05/17 10:55)

記事の視点が国内に偏ってます。
日産も三菱も国内販売比率は10%程度(軽を除けば一桁)であり、日本市場でのシナジー効果等は期待していないと思います。記事の通り両社も国内では売る玉がありません。
短期的メリットはグローバルでの原材料、部品の調達効率化ではないでしょうか。日産はメルセデスとの協業も含めれば既に世界で1000万台を販売するグループです。ここに三菱の100万台が上乗せされるので、事実上世界一のグループになります。
長期的には販売単価の高い東南アジアや北米でのピックアップの協業(車台の共通など)が現実的でメリットがあります。
自動車業界は国内だけ見ても何も理解できません。視点を広げることが重要です。(2016/05/16 18:43)

私は正直、今回の不正報道が出たときから、日産の支援があるのではないかと思っていた。記事にも書かれている通り、ゴーン氏がルノーとの提携に乗り込んで日産リバイバルプランを実行したときと似た状況であるからだ。三菱自動車、その関連企業はこれで救われたと思うだろうが、リストラや整理の面ではこれからが恐怖かもしれない。株価を見ると支援を発表した日に三菱は上昇したが、日産はわずか1%しか安くなっていない。これが規模と信用の差なのかと思うし、今のところシナジー効果が多分に発揮されるという期待感がる気がするが、今後の中期計画によってはどうなるかわからない。日産も三菱も技術を売りにしてきた企業なので、まじめなエンジニアが多いのだが、その分廻りが見えなくなったり、経営陣の言いなりになってしまう傾向があるようにも見える。まずは不正の膿をしっかり出し切って再出発に期待したい。(2016/05/16 17:29)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授