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日産の「水素を使わない燃料電池車」は実用的?

進化するエンジンが最大のライバル

2016年6月21日(火)

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日産のバイオ燃料を使う燃料電池車「eバイオフューエルセル」はサトウキビから作ったエタノールを燃料に使うことでCO2フリーを実現する

 日産自動車が環境車の分野で反撃に出てきたな――。6月14日の同社の発表を聞いて、そう感じた。バイオ燃料を使う燃料電池車(FCV)を開発するという、一見地味な発表なのだが、なかなかどうして、日産の考え方が表れていて面白い。それは、トヨタ自動車、ホンダという競合メーカーに対して、独自の道を行くという意思表示のようにも見えた。

 日産のFCVのどこがユニークなのか。それを一言で表せば「水素を使わないFCV」ということに尽きる。筆者はこれまでこのコラムの第5回第15回第53回で、幾度となくFCVについて取り上げてきたが、一貫しているのは、FCVの普及に対して懐疑的であるということだ。

 その理由は既に書いてきていることの繰り返しになってしまうが、FCVという車両そのものよりも、燃料に水素を使うということがもたらす問題である。水素は天然に単体で大量に存在するものではないので、必ず他のエネルギーから作らなければならない。通常は天然ガスから作るのが最も低コストだが、製造時のエネルギー損失が大きいため、燃料製造時まで考慮したエネルギーの総合的な効率で、FCVはEV(電気自動車)に劣り、HEV(ハイブリッド車)と同程度にとどまる。最大の目的であるはずの環境性能で、FCVは必ずしも最良の解ではないのだ。

 太陽電池で発電した電力で水を電気分解することで、CO2の発生を伴わずに水素を作るという考え方もある。しかしそれだと設備にコストがかかりすぎ、天然ガスから作る水素と比べて、全くコストに競争力がないのが現状だ。そもそも、天然ガスから作る水素を使った場合でさえ、FCVの燃料代は、通常のハイブリッド車(HEV)のガソリン代と同程度にとどまる。しかもこの水素の値段は、コストベースではなくて、このくらいにしないとHEVと同等にならないよね、という水準から逆算して決めたもので、現状では採算が取れていない。

運搬も非効率的

 加えて、水素は気体燃料なので、運ぶにも、車両に積み込むにも非常に効率が悪い。水素ステーションに水素を運ぶ際にも、車両に積み込む際にも、非常に高圧で圧縮する必要があるのでそのためのエネルギーが必要で、水素を運搬するトラックや、水素ステーションの貯蔵設備のコストも高い。

 場所もとる。車両に搭載する際には、700気圧という高圧のタンクを使用して、なるべく容積を圧縮しているのだが、それでもガソリンタンクよりもずっと大きい。しかもタンクは円筒形状にする必要があるため、どうしてもかさばってしまう。従って、同じ車両サイズのクルマ同士で比較すれば、FCVはどうしてもエンジン車よりトランクルームを狭くせざるを得ない。つまり、クルマとしての魅力もエンジン車より低いわけだ。

 このように、FCVは環境に必ずしもいいわけではなく、燃料インフラの整備にはコストがかかり、ユーザーにとっては燃料補給が不便で、車両価格が高く、トランクルームは狭く、しかも維持費の面でもメリットのないクルマということになる。これでは、消費者がわざわざFCVを買う理由が1つもない。これが、筆者がFCVの普及に懐疑的な理由である。これに比べると電気自動車(EV)は、燃料費(電気代)がガソリンエンジン車の1/3以下で済む、わざわざガソリンスタンドに行かなくても家で充電できる、などのユーザーメリットがある。

コメント27件コメント/レビュー

 この記者は、言っていることは尤で、「状況」も丁寧に分析していのだが、残念ながら、それが全て「現在の状況」、あるいはせいぜい「ほんの数年先の状況」だ。
 燃料電池車は、市販されているものも含めて、おそらく全てが「将来の主流の一つになるかもしれない」ことを考えているはず。現在の状況において不利なのは、想定内だ。
 例えばの話であるが、核融合発電が急速に普及したり、地球温暖化が止まらず原発がたくさん建設されたりすると、深夜電力を使った水素が安く出回る可能性がある。その時「水素を使った燃料電池車なんて主流にならない」と研究を怠っていたらどうなるか、メーカーは良く知っているのだ。(2016/10/06 10:02)

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「日産の「水素を使わない燃料電池車」は実用的?」の著者

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)

オートインサイト代表

1985年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、2004年に自動車技術の専門情報誌の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、オートインサイトを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 この記者は、言っていることは尤で、「状況」も丁寧に分析していのだが、残念ながら、それが全て「現在の状況」、あるいはせいぜい「ほんの数年先の状況」だ。
 燃料電池車は、市販されているものも含めて、おそらく全てが「将来の主流の一つになるかもしれない」ことを考えているはず。現在の状況において不利なのは、想定内だ。
 例えばの話であるが、核融合発電が急速に普及したり、地球温暖化が止まらず原発がたくさん建設されたりすると、深夜電力を使った水素が安く出回る可能性がある。その時「水素を使った燃料電池車なんて主流にならない」と研究を怠っていたらどうなるか、メーカーは良く知っているのだ。(2016/10/06 10:02)

マツダは、ロータリーエンジンで水素を直接燃やす研究をしていると思うが、もうやめたのかな? 最近ほとんど記事が出ない。(2016/08/13 05:59)

バイオエタノールは、将来的にはジェット燃料の代替になるかな。
燃料電池で使う位なら、ガソリンと混ぜて石油使用量を減らす方向か、
エタノールを作るまでの手間を省いて火力発電としたほうがマシだろう。
燃料電池は車に積むの余現実的ではない。
水素は太陽光や風力などの余剰電力の負荷とし、
逆に足りない時に電力に変えるための電機の缶詰の一つとすれば良い。(2016/06/22 21:14)

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