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エンジンの革新目指す米企業の挑戦

既にトラック用エンジンで最大熱効率50%以上を達成

2016年7月5日(火)

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今回の話題は米アーケテス・パワー社の「対向ピストンエンジン」。1つのシリンダー内で2つのピストンが向かい合わせて動くのが特徴。50%を超える高い熱効率を実現する

 前回のこのコラムで、日産のバイオ燃料を使った燃料電池車について取り上げた。そしてそのとき、燃料電池車が普及するかどうかは、最終的にエンジンとの効率競争で決まると書いた。燃料電池車の総合効率(燃料の製造段階から車両での消費段階までを考慮した全体の効率)を考えると、おおざっぱに言って、燃料である水素の製造段階の効率が70%程度(最も低コストな天然ガスから製造する場合)、車両の効率が60%程度なので、0.7×0.6で約4割程度になる。一方で、軽油やガソリンなどの燃料の製造段階での効率は85%程度だから、車両での効率が50%程度あれば、燃料電池車とほぼ同等の総合効率が実現できる。

 現在、トヨタのハイブリッド車「プリウス」のガソリンエンジンの最高効率が約40%で、ガソリンエンジンでは世界トップレベルの値を実現している。一方のディーゼルエンジンでも42~43%程度が乗用車用では最高水準になる。この値がもし50%になれば、車両効率でも50%を実現する可能性が出てくる。ではエンジンで効率50%を実現できる可能性はあるのか?

 自動車用のエンジンで熱効率50%を実現するというのは、かなり高いハードルである。そもそも、熱機関では大規模なシステムのほうが効率を上げるのに有利だ。熱機関で最も効率が高いものの1つは、LNG(液化天然ガス)コンバインドサイクルを採用した火力発電所で、効率は約60%に達するが、これは、まず天然ガスを燃焼させてガスタービンを回し、その排熱で蒸気を作って蒸気タービンを回す2段階のプロセスでエネルギーを回収する複雑なシステムだ。とても自動車に搭載できる代物ではない。それに、東京電力全体の火力発電所の平均効率を見ると47%程度で、50%を下回る。もしエンジンで50%の熱効率を実現できれば、火力発電の平均を上回る効率を実現できることになる。

昔からあった構造

 実は、エンジンでも熱効率50%以上を実現している例はある。世の中にある、いわゆるレシプロエンジン(シリンダー内をピストンが上下することで駆動力を得るシステム)で最も効率が高いのは船舶用のディーゼルエンジンで、すでに50%以上の効率が実現されている。ではなぜ乗用車やトラックに使われているディーゼルエンジンで、船舶と同様の高い熱効率を実現できないか。

 その理由の1つは冷却損失差だ。面積は長さの2乗に比例し、体積は3乗に比例することから分かるように、エンジンの排気量が大きくなると、相対的に排気量に対するシリンダーや燃焼室の表面積は小さくなる。つまり、冷却される面が相対的に小さくなるわけで、そこから逃げる熱が減らせる。

 船舶用エンジンは、大きなものだと、高さ15m、長さ24mというビル並みの大きさで、排気量は2万Lと、乗用車用の1万倍に達する。小さいエンジンは、効率向上には不利なのだ。加えて、船舶用ディーゼルエンジンの場合、回転数が1分間に100回程度(100rpm)と、自動車用が数千rpmであるのに対して極端に低い。これにより摩擦損失が抑えられる。

コメント2件コメント/レビュー

内燃エンジンの効率を高める事は省エネにつながるが、サステナブルなエネルギーへの転換を進める事にはつながらないのではないか。水素であれば最終的には化石エネルギーに頼らない未来像が描けるが、ディーゼルの効率を高めてもそれは叶わないだろう。バイオ燃料や、CO2の燃料化と言う事が実現できればいいのだろうが、そうした技術の未来が見通せない以上、水素社会の構築を図る方が緊急の課題ではないか。あくまで時間かせぎならば価値が無いとも言えないが、その分のリソースを水素一本に投入する方が効率的と言えないだろうか。(2016/07/05 16:27)

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「エンジンの革新目指す米企業の挑戦」の著者

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)

オートインサイト代表

1985年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、2004年に自動車技術の専門情報誌の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、オートインサイトを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

内燃エンジンの効率を高める事は省エネにつながるが、サステナブルなエネルギーへの転換を進める事にはつながらないのではないか。水素であれば最終的には化石エネルギーに頼らない未来像が描けるが、ディーゼルの効率を高めてもそれは叶わないだろう。バイオ燃料や、CO2の燃料化と言う事が実現できればいいのだろうが、そうした技術の未来が見通せない以上、水素社会の構築を図る方が緊急の課題ではないか。あくまで時間かせぎならば価値が無いとも言えないが、その分のリソースを水素一本に投入する方が効率的と言えないだろうか。(2016/07/05 16:27)

ユンカースディーゼルの亡霊が現代によみがえったというわけだ・・
現役時代の彼らはなんと呼ばれていたのかご存知か?三高エンジンだって。背が高い、音高い、維持費高いだって。
現代の技術でどこまで巻き返せるか。(2016/07/05 08:52)

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