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テスラの死亡事故は「太陽のせい」か?

技術の限界を伝える難しさ

2016年7月19日(火)

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今回死亡事故を起こした米テスラ・モーターズの「モデルS」(写真:テスラ・モーターズ)

 殺人の罪を犯したムルソーが、裁判でその動機を聞かれ、「太陽が眩しかったから」とこたえる――。フランスのノーベル賞作家アルベール・カミュの代表作の一つである「異邦人」の有名な場面だ。殺人を太陽のせいにするこの小説は、「不条理」を表現した作品だと言われる。

 すでに旧聞に属するが、5月7日に、米テスラ・モーターズの「モデルS」が、運転支援システム「オートパイロット」の作動中に、高速道路を横切ろうとした大型トレーラーに衝突して運転者が死亡する事故を起こした。オートパイロットの作動中に運転者が死亡する事故を起こしたのは今回が初めてだ。その原因としてテスラは「トレーラーの白色の側面が、明るい空を背景としていたために(against brightly lit sky)」人間もオートパイロットもトレーラーを認識することができず、ブレーキを作動させなかったことを挙げている。

 オートパイロットは、「自動操縦」というその名とは裏腹に、自動運転システムではなく、ドライバーを支援するシステムと同社は位置づけている。安全確保の義務はドライバーにあり、システムが安全に動作しているかどうかを監視するのもドライバーの役目だ。しかも、事故車のドライバーが走行中にDVDを鑑賞していた疑惑も浮上しており、テスラに対する批判的な論調は目立たない。ただ、オートパイロットがトレーラーを認識できなかった理由を空の明るさのせいにするテスラの説明に関しては、筆者は「不条理」だと感じた。

高速道路なのにトレーラーが横断?

 そもそも今回の事故は不可解なことが多い。最初に感じた疑問は、今回事故を起こしたテスラ車は高速道路を走っていたはずなのに、なぜトレーラーが道を横切るのか? というものだった。そこで米国のメディアの報道を調べてみると、日本のニュースで高速道路と翻訳されていたのはHighwayという言葉だった。これは日本語でいう国道に近いニュアンスで、日本語で一般にいう信号や交差点のない高速道路はFreewayと呼ばれることが多い。国道であれば、交差点があっても驚くには当たらない。日本と同様に米国の道路でも左折車(米国は右側通行なので、左折車は対向車線をまたぐことになる)よりも直進車が優先されるので、直進してくるクルマとの安全な距離を見誤ったトレーラーにも一定の責任はあるはずだ。

事故の状況。トレーラーは左折しようとして高速道路を横断しているとき、反対車線から直進してきたテスラ車が側面に衝突した。(グーグルの写真を基に筆者が作製)

 ところで、筆者がなぜ「不条理」と感じたかといえば、テスラのオートパイロットは、カメラだけでなく、ミリ波レーダーも搭載しているからだ。確かに、太陽の光が強くて、それが白いトレーラーの側面に反射したら、人間もカメラも眩しくて、トレーラーを見つけにくいかもしれないとは思う。しかし、太陽の眩しさは、ミリ波レーダーには関係ない。ミリ波レーダーは、ミリ波と呼ばれる波長の短い電波を発射して、物体に当たって戻ってくるまでの時間を測定することで、物体の有無や、物体との距離を測定するセンサーだからだ。

コメント19件コメント/レビュー

運転運航管理の責任はドライバーが負っていると言う事をしっかり周知させなければいけない。
その周知義務はメーカー側にあるものと考えられる。運転中、システムと実際の運航とを同時に管理するのは難しいとの記述があるが、運転支援システム(オートパイロット)はマンーメイン(人間が主)のシステムなので、危険を感じればブレーキに少しでも触れば即座に解除されるはずで、ドライバーは最低限通常運転と同等の注意力を怠らなければ良いだけのはずで、システムと運航状況を常に
監視しながら・・・・と言うのは的が外れていると思います。(2016/08/31 14:44)

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「テスラの死亡事故は「太陽のせい」か?」の著者

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)

オートインサイト代表

1985年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、2004年に自動車技術の専門情報誌の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、オートインサイトを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

運転運航管理の責任はドライバーが負っていると言う事をしっかり周知させなければいけない。
その周知義務はメーカー側にあるものと考えられる。運転中、システムと実際の運航とを同時に管理するのは難しいとの記述があるが、運転支援システム(オートパイロット)はマンーメイン(人間が主)のシステムなので、危険を感じればブレーキに少しでも触れば即座に解除されるはずで、ドライバーは最低限通常運転と同等の注意力を怠らなければ良いだけのはずで、システムと運航状況を常に
監視しながら・・・・と言うのは的が外れていると思います。(2016/08/31 14:44)

「真横になったトレーラーの側面のような物体は、現在の運転支援システムにおいては、面積が大きすぎて検出の対象外」って、トレーラーは自車の前を左から右に通り過ぎようとしていたんですよね?ならばミリ波レーダーの視野に入った瞬間はトラクターの鼻だけしか捉えていないはず。大き過ぎるはずはないですよね。右に動いていることも分かるはず。なのに事故ってことは、捉えていた対象物を途中から「対象外」にしたような・・・。(2016/08/12 22:27)

自動運転が、広義の「人工知能」であるとして考えた時、運転時に発生した「危険なケース」の情報。日本のケーサツに言わせれば「ヒヤリ、ハット」とか「カモね運転」のネタ。あるいは今回のような「致命的な判断ミス」も、回収さえできればデータとして蓄積される。その情報は同じメーカーの人工知能に対し、オンラインでアップロードすることができるわけで、大げさに言うと「他人(他脳?)と同じミスは二度と繰り返さない。」ことが可能になる。現時点では、たとえばテスラとGoogleの「危険なケース情報」は、各々が別々に蓄積しているのだけれど、仮にこれを積極的に開示(あるいはバーター交換)できるとすれば、2社なら2倍。3社なら3倍の速度で、安全性は高まっていく。となると、機械の運転が人間による運転を「下回る」場所は、「過去の蓄積が薄い場所」に限られる。という時代は、もう、そこまで来ていると思う。ちなみに「蓄積少」と「危険少」がほぼイコールとするならば絶対的な危険まで、近い将来ほぼ全国が等しくなる。かも。(2016/07/27 14:19)

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