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払われない所得税、かみ合わない倫理、止められない国家

誰がグローバル企業を統制できるのか?

2015年7月29日(水)

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 多国籍企業は、国境を越えて活動します。そして、多国籍企業が多数の国々にその諸機能を分散させて事業を展開するようになり、国家と企業の単純な関係性が崩れつつあります。その結果として様々な問題が生じています。

 例えば、スターバックス、アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、ツイッターといった名だたる多国籍企業があります。こうした企業が、複雑怪奇な方法を駆使して法人税を大幅に節約していることを、皆さんはご存じですか?

 なぜかアップルの日本法人が合同会社の形態をとっており、なぜか我々は日本法人のアマゾンジャパン株式会社からではなく、米国法人のAmazon.com Int'l Sales, Inc.から本や電化製品を直接購入しています。こうした企業は脱法行為を働いているわけではありません。しかしだからこそ、グローバル経営を考える上で極めて深刻な課題なのです。

アマゾン、グーグル…多国籍企業の国際的な節税

 国家にとって最も深刻な課題は、国際的なネットワークを駆使した節税スキームに対してどのように対応するかという課題です。

 これは日本の税制調査会でもすでに議論に上がっており、昨年度から一昨年度にかけての議論の経緯は、内閣府のウェブページ(注1)で確認することができます。中でも2013年10月24日の資料(注2)は、オンラインで手に入る無料の資料であり、概要を掴むのに最適でしょう。

 例えば、英国のスターバックスが活用していた最終販売国での課税所得圧縮のための手法は、議会やメディアでの追求がされたこともあり、広く一般に知られることとなりました(注3)。これはスイスのコーヒー豆輸入を担う子会社と、オランダのコーヒー焙煎を担う子会社と知的財産を保有する子会社と、そして米国本社を組み合わせた国際的な節税手法です(注4)

 これが発覚した理由は、英国のスターバックスのトップが、誤って管理会計上の数字を参照して、「当社は利益を上げている」と一般に発表してしまったためです。しかし、財務会計上の数字では全く儲かっておらず、従って法人所得税を納めていなかったことが明るみに出て、この問題は大きくメディアで喧伝されてしまったのです。

 こうした国境を活用した節税手法は、なかなか消費者の目に触れることがありませんが、確実に浸透しつつあります。身近な例で言えば、アマゾン(Amazon.co.jp)は、日本にはかなりの金額の法人税を支払っていません。

 例えばアマゾンが個人に直接する販売する商品であれば「この商品は、Amazon.co.jp が販売、発送します。」と書かれています。しかし、販売しているのは実は日本法人ではなく、シアトルに本社があるAmazon.com Int'l Sales, Inc.であるため、法人税を納める必要がないのです。もちろんこれを問題とした国税庁が一時2009年に追徴課税を行いましたが、2010年、日米当局の合意により国税庁の請求は退けられています。

 これ以外にも、アップル、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、ツイッター、リンクトイン、ペイパルなどの多国籍のインターネット企業が、ダブル・アイリッシュ・ウィズ・ダッチ・サンドイッチという節税の手法を採用していました(注5)。無形資産の計上方法に依然として議論が存在するため、特に知的財産権を用いて事業をするハイテク関連企業であれば、この方法を用いることで大幅に計上する所得を減らすことができます。

コメント21件コメント/レビュー

素晴らしい記事をありがとうございます。この記事は必読だと思います。

解決策を考えるに、スティグリッツの言うような、お金の移動への課税等の対応というのが正解であると思います。(2015/08/04 11:35)

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「払われない所得税、かみ合わない倫理、止められない国家」の著者

琴坂 将広

琴坂 将広(ことさか・まさひろ)

立命館大学国際経営学科准教授

慶応義塾大学環境情報学部卒業。在学時、小売・ITの領域において3社を起業、4年間にわたり経営。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て英オックスフォード大学で博士号取得(経営研究)。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

素晴らしい記事をありがとうございます。この記事は必読だと思います。

解決策を考えるに、スティグリッツの言うような、お金の移動への課税等の対応というのが正解であると思います。(2015/08/04 11:35)

この問題は、G20の指示により、OECDで対応策が検討されてきましたが(BEPS行動計画)、先進国しか加盟しないOECDのこの行動計画には、途上国が被る租税回避の被害についての視点が弱いことが指摘されています。

最近のIMFの発表によると、多国籍企業による租税回避による国家財政上の被害割合は、途上国が先進国の3倍に上るとのこと。救命医療や初等教育の予算も枯渇する国にとっては死活的問題です。IMFは、OECDの枠を超えた取り組みが必要と提唱し始めました。

また、7月中旬にエチオピアで行われた「第3回国連開発資金会議」では、国際的な租税体制のあり方について、国連に新たな政府間機関を設置すべきと、途上国とNGOが強く求め、交渉が難航。最終的に、先進国が拒絶したため実現しませんでした。

しかし、このように途上国を排除した体制のままでは、結局税逃れに都合の良い抜け穴を残すことになりますし、逆にモンゴルが最近オランダとの租税協定を一方的に破棄したように、途上国の一国主義的な対応を促すことにもなりかねず、ビジネスにとっても長期的には良い環境ではないのではないでしょうか。(2015/08/01 12:09)

法人税の国際競争力はありますし、一頃は政府の税制調査会で法人税引き下げが議論になってたかと思います。グローバル企業が税制や法規制、カントリーリスクも踏まえて有利な国を選ぶのは、ごく自然なことではないでしょうか?促すべきは企業行動ではなく、税制や法規制を課したり産業政策を出す側の柔軟性ではないかと思います。(2015/07/31 23:27)

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