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ヤマハ、冬の時代から最高益を達成

楽器メーカーから音の伝道師へ

2016年7月26日(火)

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 ヤマハの業績も低迷期が続いた。98年度には半導体不況で上場以来初の営業赤字に転落。その後も、リーマンショック以降、2008、2009、2011の3年度が最終赤字に陥った。「この15年は業績の上下動も激しく、下手すると会社が潰れるのではないかという切迫感があった」と中田卓也社長は振り返る。

 中田氏が社長のバトンを渡されたのは、「冬の時代」をようやく抜け、黒字に転換した2013年6月だった。その後ヤマハは2016年3月期まで3期連続で増収増益を達成している。前期の売り上げは4354億円、営業利益は406億円。営業利益は2004年3月期に記録した最高益と同水準で、今期は14年ぶりに過去最高益を更新する見込みだ。

長い冬を乗り越えて増収増益
●ヤマハの歴史と最近の業績

「たこつぼ」化していた組織

売り上げの約7割が海外
●ヤマハの地域別売り上げ構成比

 中田社長の危機感はまだ根強い。楽器や音響は今後、飛躍的に市場が拡大するわけではないからだ。世界的に見ても、今後3年で楽器の市場規模は3%程度、音響事業も8%程度の伸びにとどまると見込まれている。

 業界トップといえど、「立ち止まってはいられない。変わり続けなければ、失速する」(中田社長)。中田社長は2013年の就任後、まず事業部制を廃止した。従業員が事業部単位の狭い領域でしか物事を考えていないことに危機感を抱いたためだ。

 当時のヤマハは、楽器や音響設備ごとに、開発、製造、営業部門などがあった。ピアノの中でも、アコースティックピアノ、電子ピアノなどと組織が細分化されていた。「たかだか4000億円程度の売り上げの会社で、事業部は10も必要ない。ヤマハ全体の多種多様な技術やノウハウから物事を考えてほしかった」(中田社長)。

 中田社長には勝算があった。それは自らに事業部統合の成功体験があったからだ。2000年、当時中田氏が所属していた電子楽器事業部は、業務用音響機器の事業部と統合した。電子楽器事業部の中だけでも4部門。さらに当時赤字だった業務用音響機器部門を一緒にするのは容易ではなかったが、「結果的に、開発、営業と全ての事案に対してヤマハ内のベストプラクティスで物事を進められた」(中田社長)。

 構造改革の成果は既に見え始めている。例えば、工場のラインをまとめて管理することで、需要期の異なる楽器の生産を分散することができるようになった。従来のヤマハでは第4四半期が毎年赤字だったが、2013年以降黒字が続く。年間を通じてラインの稼働率を引き上げたことが、3期連続の増収増益を達成した原動力となった。

 構造改革のもう一つの狙いとして、中田社長は「音技術のヤマハ」の再興を挙げる。楽器製作技術や音に関する技術をより先鋭化することで、競争力を高める狙いだ。

 楽器事業については、「フェラーリを目指す」と中田社長は言い切る。どういうことか。ヤマハは楽器全体の売り上げで見れば世界でトップ。ただ、名だたる世界的コンクール優勝者が奏でるピアノは米スタインウェイのピアノ。ギターについて言えば、米ギブソンに比べてブランド力が劣る。「総合優勝はできているが、部門別でトップになれていない」(中田社長)。

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「ヤマハ、冬の時代から最高益を達成」の著者

染原 睦美

染原 睦美(そめはら・むつみ)

日経ビジネス記者

日経パソコン、日経ウーマンオンラインを経て、2013年4月から日経ビジネス記者。IT担当などを経て、日用品・化粧品担当。趣味は洗濯、昼酒、ピクニック。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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