ABEJA、「売れない理由」をAIで解析、繁盛店に

客の属性や動きのデータを蓄積、深層学習により店舗改善

AI (人工知能)を活用した小売業向けの業務改善サービスで成長している。このほど製造業向けにも本格参入した。米エヌビディアからも出資を受けるなど、期待を集める。

日経ビジネス 2017年8月7日・14日号より転載

人の動き数値化
センサー付きカメラにより、通行 人や来店客の動きを数値化す る。年齢・性別の推定機能も

 脚立を借りたければ隣の日用雑貨品店に駆け込めばいい。夕飯に困ったら向かいの鮮魚店に立ち寄ればいい。東京都品川区にある商店街「なかのぶスキップロード」。昭和の古き良き雰囲気を残すこの場所に2016年、生花店「ハナノバ」が開業した。

 アーケードに溶け込む、一見、何の変哲もない「街のお花屋さん」。だがよく見ると、看板下と店内天井にカメラが取り付けられている。撮影した画像はクラウド上の店舗解析サービスに送信。AI(人工知能)が映り込んだ人影を「通行人」「来店客」として認識し、時間あたりの人数データとして集計する。

 消費者を呼び込むうえで欠かすことのできない、キャンペーンやプロモーションの数々。あるいは店舗レイアウトの変更、もしくは品ぞろえの見直し……。小売店の経営は、仮説を立て、実行し、検証した上で改善・実行するというサイクルの繰り返しだ。ただ検証に使える指標は従来、売上高の増減のみ。本来は検証されるべき「来店客数が増えた」「滞在時間が増えた」といった指標は、数値として可視化できていなかった。「店員の感覚ではなく、データに基づいた店舗運営の改善を進めたい」。ハナノバの山村祐介オーナーは語る。

「これは現代の産業革命になる」

 この店舗解析サービスを提供するのがABEJA(東京都港区)だ。人数のカウントだけではない。来店客の年齢や性別、さらには店舗のどこを歩いているかの分布図といったデータを蓄積。小売店が従来検証できていなかった情報を「見える化」し、店舗運営の改善に一役買っている。

 「日本企業が注目し始める前から、ディープラーニング(深層学習)技術の研究開発を続けてきた」

 ABEJAの岡田陽介社長は、自社の強みをそう説明する。ディープラーニングはAIの要素技術の一つで、人間の脳の働きをまねた情報処理の方法。有効活用するには「収集した画像データをいかに解析しやすい形式に変換するのか」「解析速度と精度を両立させるためにどんな計算式をあてはめるのか」など技術課題が数多くある。ディープラーニング技術の重要性にいち早く注目していたため、ABEJAは研究開発で大手にも先行。年齢・性別の推定の精度は、すでに9割を超えるという。

 岡田社長がディープラーニングと出合ったのは12年ごろ、米シリコンバレーでのことだった。どんな会社を訪れても、現地エンジニアはディープラーニングの話題で持ちきり。「これは現代の産業革命になる」。10歳でプログラミングを始めた岡田社長にとって、同技術の重要性に疑いの余地はなかった。起業経験があったこともあり、事業化を決心するのに時間はかからなかった。

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著者プロフィール

藤村 広平

藤村 広平

日経ビジネス記者

早稲田大学国際教養学部卒業、日本経済新聞社に入社。整理部勤務、総合商社インド拠点でのインターン研修などを経て、企業報道部で自動車業界を担当。2016年春から日経ビジネス編集部。

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