• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

<花道編:第4回> 花が「花」になる

2015年7月15日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回の記事から読む

『花に習う』(別冊太陽、平凡社)、photo by 蛯子真

「花」には、「花をたてる」「花をいれる」「花をいける」という三つの概念があります。

第3回では、三つ目の「花をいける」ことについて、川瀬さんに教えて頂きました。

花を生けることの本来の意味は、切り取った自然の草木花の生気を「生かす」こと。「たてる」も「いれる」も、広い意味では生けることであり、「いれる」と「いける」にも、明確な違いはありませんでした。それが「いける花」に一定の法式が生まれ、建築様式の変化にともない、江戸時代に、「流派いけばな」へ発展しました。今日、私たちが認識している、人為的で、造形的な「いけばな」はその流れにあるものです。

ただ、自然の摂理では、一様に適用出来る法則など無く、自然の花そのものに倣うことこそが大原則であり、花を生けることの本質も、人間が自然を敬い、深く一体化し、「花が人」で、「人が花」であるという関係性にあるものなのです。

木下真理子(書家)

「心眼」で草木花を見る

川瀬:海外に行くと、日本では考えられないような質問に出会います。「どうして日本の人は、きれいなのに、そんなふうに花を切ったりするんですか」と訊ねられます。木下さんなら、それにどう答えますか。

木下:・・・。それは、切るということに、どんな意味を見い出すことが出来るのか、ということですよね。

川瀬:日本人は、最初からそういうものだと、さして違和感もなくそう思っていますよね。ただ、彼らにしてみたら、きれいだったらきれいなまま置いておいたらいいんじゃないかと。

 でも、自然のままで置いておくということは、実は本当のものを見ていないとも言えるんですよ。例えば、花をぱーんと切るじゃないですか。椿でも何でも。そうするとそのままで見ている時とは全然違って、「いのちの重さ」を実感する。切るということを通じて、生きるということの本当の重みを与えられてしまうわけです。ここに、「奉る」という行為の本来の意味があります。

 自然にあっても花には違いないんですけど、人が生かすことで、花が「花」になります。それは我々が生まれたままの姿ではなく、様々な人生経験を通して、人間が「人間」になっていくことと同じです。

木下:根源的なことをお聞きしたいのですが、そもそも「花」の美しさって、どういったことなのでしょうか。

川瀬:花というのは、この世にあってこの世にない、神の気配を持つ、至高の美しさを持つものだけに、古来、「美」の象徴として崇められてきました。人間はその花に心を求めていくことで、花と人とが一つになった境地に至ったのです。

 『池坊専応口伝(いけのぼうせんのうくでん)』は、川端康成がノーベル文学賞の受賞記念講演『美しい日本の私』に引用したことでも知られる、室町時代の「いけばな伝書」を代表する花伝書ですが、その書き出しは次のような文章から始まります。

 「瓶(へい)に花をさす事いにしへよりあるとはきゝ待(はべ)れど。それはうつくしき花をのみ賞して。草木の風興(ふうきょう)をもわきまへず。只(ただ)さし生けたる計(ばかり)なり」。

 つまり、日本の「挿花」は、「草木の風興」=「こころの花」を生けることだと、宣言したのです。「こころの花」を見出したことで、人の数だけ「花」があることを発見したのです。そして、「心眼」で自然の草木花を見ることが「日本の美」の伝統となっていったことは大きいですね。

 きれいな花を生けても、必ずしも「美しい花」になるとは限らないですし、逆に、一見みすぼらしく見える末枯れた草木を生けて「美しい花」になることもあります。小林秀雄が、能の『当麻』という演目から導き出した言葉に、「美しい〈花〉がある、〈花〉の美しさという様なものはない」という言葉があります。やはり美しい花の本質に迫ろうとしたことが、この国の「花」なんです。

コメント0

「和道 日本文化 心のしきたり 美のこだわり」のバックナンバー

一覧

「<花道編:第4回> 花が「花」になる」の著者

木下 真理子

木下 真理子(きのした・まりこ)

書家/書道文化研究会 主宰

雅号は秀翠(しゅうすい)。中国及び日本古来の伝統芸術としての漢字、漢字仮名交じり書を探求。自身の創作活動の他に、映画、出版物、展覧会、広告等、様々な分野の題字を手掛ける。書道道研究会「翠風会」を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本全体として若い世代にもっと所得の分配をしていくべきだと思う。

川野 幸夫 ヤオコー 会長